政府の二枚舌に気づいた中国ネットユーザーたち
ふるまい:私はあまりウェイボーは見ていなかったんですよ。時折のぞいてみると、旗を持って騒いだり、毛沢東の肖像を担いだりしている人たちの写真や、「デモやってるぞー」という発言がわりとバンバン流れていました。これらは政府の検閲には引っかからなかったようです。
でも中国人のウェイボー職人さんによると、そこから先、破壊活動に走っている様子や、それを止めようとしている人たちの声は消されていたようですね。
そして「釣魚島は中国のものである。日本を攻撃せよ」という雰囲気がウェイボー全体で作られていった、と。そうした論調を諌(いさ)めるような発言は、書き込んだ次の瞬間にバスバス消されていく感じだったようです。
津田:一方のツイッターは、中国製サービスのウェイボーとは違って、当局も検閲が入れられないじゃないですか。ふるまいさんは、ツイッターで積極的に情報発信をしていましたよね。そちらの論調をご覧になっていて、いかがでした?
ふるまい:こちらはやはり当局の検閲が入らないせいか、中国人のツイッターユーザーさんがかなり自主的に発言をしているのが目立ちました。写真も流れていましたね。ユーザーが撮ったもの、ウェイボーでは消されてしまったもの——。
津田:「中国のツイッターユーザー」として有名なジャーナリストの安替(アンティ)さん(@mranti) [*12] は、この騒ぎについて、どんな発言をしていましたか?
ふるまい:毛沢東像が担ぎ出されたことに対し、「文化大革命かよ」みたいに言っていましたね。反日デモは淡々と見ているようです。
彼みたいにあまり騒ぎにコミットしない人たちは、事態を見ながらツイッターで「日本料理食いにいくぞー」なんて呼びかけているんですよ。デモが一番ひどい時は日本料理店がすべて閉まっていたから、「はやく開けてくれ〜!」と言ったりして。
しばらく休業していたセブンイレブンが開いた時は、「日常が帰ってきた、ばんざーい!」みたいなことをつぶやいていました。
彼らのように、自分たちの情報発信力を使って、「日本はこんなに身近なんだよ。俺たちの生活に密着してるんだよ」と伝えようとしている人はすごく多いです。
津田:ははは(笑)。それが彼ら流の情報発信でもある——。
ふるまい:そうですね。中国は新聞もテレビも、官製メディアなわけですよ。今回の尖閣問題のように、上が「これを載せろ」と言ったら拒絶できない場合が非常に多い。
その危険性を見破っている人たちは、紙媒体やテレビを真剣に見なくなって、ツイッター上で信頼できる仲間同士と表に裏に情報交換するようになってきています。
津田:中国当局の手が及ばない治外法権的な場所で、今まで出会えなかった人がお互いつながった。それによって、新しい動きが出てきているのかもしれませんね。
ふるまい:一つ面白い話があります。ある日本人の方が、ツイッターでこんなつぶやきをしたんですね。「尖閣諸島に『天安門事件』って書いた垂れ幕をいっぱい釣るしておけば、中国のニュースはモザイクで隠すしかなくなるから面白そう」って。[*13]
私、それを中国語に翻訳して流してみたんですよ。そうしたら、中国人のツイッターユーザーたちに大ウケ。「日本人はすごいこと考えるなあ!」ってバズってましたね。
「釣魚島は譲れない」と思っていても、こういうジョークで笑える中国人も、中にはいるんです。以前安替に聞いた話ですが、2010年には政府がデモを中止させた後、ネットでも「釣魚島」という言葉を使った書き込みを大量に削除していったんですね。その時に中国人ユーザーは「尖閣」という言葉でそれを置き換えて、自分の主張を伝えたとか。
中国政府の二枚舌にはすでに気づいていて、「なんでこんなことで日本と中国がケンカしないといけないの?」と思っている人だって、いっぱいいますよ。

その他の記事
![]() |
テープ起こしの悩みを解決できるか? カシオのアプリ「キーワード頭出し ボイスレコーダー」を試す(西田宗千佳) |
![]() |
ポスト・パンデミックのキューバはどこに向かうのか(高城剛) |
![]() |
日経ほかが書き始めた「デジタル庁アカン」話と身近に起きたこと(やまもといちろう) |
![]() |
ヒットの秘訣は「時代の変化」を読み解く力(岩崎夏海) |
![]() |
福永活也さんの「誹謗中傷示談金ビジネス」とプロバイダ責任制限法改正の絶妙(やまもといちろう) |
![]() |
会員制サロン・セキュリティ研究所が考える、日本の3つの弱点「外交」「安全保障」「危機管理」(小川和久) |
![]() |
スーツは「これから出会う相手」への贈り物 (岩崎夏海) |
![]() |
ウクライナ情勢と呼応する「キューバ危機」再来の不安(高城剛) |
![]() |
任天堂の役割は終わったのか スマホでゲーム人口拡大を受けて(やまもといちろう) |
![]() |
猛烈な不景気対策で私たちは生活をどう自衛するべきか(やまもといちろう) |
![]() |
「民進党代表選」期待と埋没が織りなす状況について(やまもといちろう) |
![]() |
この星に生きるすべての人が正解のない世界を彷徨う時代の到来(高城剛) |
![]() |
週刊金融日記 第282号<日本人主導のビットコイン・バブルは崩壊へのカウントダウンに入った、中国ICO規制でビットコインが乱高下他>(藤沢数希) |
![]() |
なぜ「正義」に歯止めがかからなくなったのか 「友達依存社会」が抱える課題(平川克美×小田嶋隆) |
![]() |
「野良猫」として生きるための哲学(ジョン・キム) |