茂木健一郎
@kenichiromogi

茂木健一郎メルマガ『樹下の微睡み』号外より

上杉隆さんのこと、日本のメディアのこと

上杉さんは経緯について事実を提示すべき

今、私は、アメリカへ学会に来ているのですが、やはり、アメリカでは、中国に対する感心が圧倒的に大きくなっております。日本に対する関心は非常に低くなっていると感じます。今日のアメリカの新聞でも、例えば、ソフトバンクによるアメリカの通信会社の買収が伝えられていましたが、「これが中国だったら深刻な問題だったかもしれないけど、日本だったら、まあいいか」といった発言が伝えられたりしています。日本のことを報じる上でも、常に中国との比較において語らないとニュースバリューを持たない。そういう雰囲気が伝わってきました。僕は、諸外国の日本に対する関心の低下は、上杉さんが以前から指摘されている「日本のメディアの閉鎖性」と関連があると思います。記者クラブというのは、その一端に過ぎないと思うんですね。例えば、日本の新聞は基本的にスタッフライター、社員の記者による記事しか載せません。しかし、私の理解によると、欧米の主要な新聞は、外部ライターから寄稿された記事を載せることも多々あります。そのような形で取材力の自由競争が行われるようなメディアにならないと、日本の新聞はなかなか進化できないと思います。上杉さんが、記者クラブの問題をはじめとして、日本のメディアの閉鎖性を指摘されていることについては、もっと傾聴すべきところがあると思うんですね。

さて、今、上杉さんが書かれた記事は読売新聞の記事とほとんど同じではないか、読売新聞を書き写した部分があるのではないか、という指摘があり、議論されています。こういうことについて、私は、事実関係を把握する立場にありません。けれども、友人として、上杉さんにもしそういう事実があり、疑われるようなことがあるならば、その経緯や過程について、事実を提示して理解を得るべきだと思います。

このような、記事の参照・引用については、やはりきちんとルールに則ったやり方をしないと、表現者としてまずいと思います。私自身は、文章を書くときには基本的に何も見ません。全部、自分の脳の中から出てきた文字列を置くようにしています。それは、僕自身がものを書く時の一つのスタイルであると同時に、引用や参照については非常に慎重でなければいけないという世間的なコモンセンスに従っているのです。上杉さんは、これについては、いろいろご批判を受けているわけですが、何が事実なのかについては明らかにしてくださればと思います。

1 2 3 4
茂木健一郎
脳科学者。1962年東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文藝評論、美術評論などにも取り組む。2006年1月~2010年3月、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』キャスター。『脳と仮想』(小林秀雄賞)、『今、ここからすべての場所へ』(桑原武夫学芸賞)、『脳とクオリア』、『生きて死ぬ私』など著書多数。

その他の記事

「2分の1成人式」の是非を考える(小寺信良)
「完全ワイヤレスヘッドホン」に注目せよ!(西田宗千佳)
スマートウォッチとしての完成度が上がったApple Watch(本田雅一)
プログラミング言語「Python」が面白い(家入一真)
ネットリテラシー教育最前線(小寺信良)
食えない中2はただの中2だ!(家入一真)
お盆の時期に旧暦の由来を見つめ直す(高城剛)
ソニーが新しい時代に向けて打つ戦略的な第一手(本田雅一)
なぜ若者に奴隷根性が植えつけられたか?(後編)(岩崎夏海)
“コタツ記事”を造語した本人が考える現代のコタツ記事(本田雅一)
なぜいま、世界史なのか? なぜ『最後の作品』が世界史なのか?(長沼敬憲)
大麻ビジネス最前線のカナダを訪れる(高城剛)
『スターウォーズ』は映画として不完全だからこそ成功した(岩崎夏海)
マイルドヤンキーが「多数派」になる世界(小寺信良)
「日本の動物園にできること」のための助走【第一回】(川端裕人)
茂木健一郎のメールマガジン
「樹下の微睡み」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回発行(第1,第3月曜日配信予定) 「英語塾」を原則毎日発行

ページのトップへ