安全基地が無ければ、人は競争できない
「市場の中で競争しろ」と言われても、世の中にはそれができない人もいるわけです。例えば、基本的な生活基盤がなければ、自由な創意工夫をする余地がありません。脳科学を研究している立場から言っても、「ここなら安全だ」という安全基地がなければ、脳はチャレンジできません。
日本の生活保護制度などはまさにその役割を果たしていますが、社会福祉のセキュリティーベースを用意しておくということは、その社会全体が積極的に挑戦をするために必要なことなのです。
その「安全基地」には、もちろん「誰でも教育を受けることができる」といったことも含まれます。経済的にどれほど恵まれていない家に生まれても、自分自身が努力すれば高い教育を受けることができる。そうした社会システムを作っておくことは、人々にとってチャレンジするために必要な条件なんです。
しかし、アメリカではそういう条件は満たされていません。皆さんよくご存知のように、日本でも少しずつ「格差が拡大してきた」と言われてきています。子供がどのような質の教育を受けられるかが、家庭の経済環境によって左右されている社会になってしまってきている。しかし、アメリカは日本などとは比べ物にならないほど、ひどい状態にある。
この自由競争というのは、僕は、ひとつのイデオロギーだと考えています。
イデオロギーはさまざまな前提のもとに成り立つものです。社会の構成員が、ある程度の安全基地を持って、しかもある程度の教育を受けた上で競争する、ということであれば、「自由競争を重視しましょう」という考え方も分かります。しかし、最初からまともに競争することができないような不平等がある場合には、それはおかしいと言わざるを得ない。そもそも「自由競争」自体が成り立たないと思うのです。
その他の記事
|
アマチュア宇宙ロケット開発レポートin コペンハーゲン<後編>(川端裕人) |
|
「AV出演強要問題」揺れるオフィシャルの対応(やまもといちろう) |
|
世界的観光地が直面するオーバーツーリズムと脱観光立国トレンド(高城剛) |
|
仕事とは「何を」するかではなく「どう」するかだ(岩崎夏海) |
|
(ある意味で)巨星・石原慎太郎さんを悼んで(やまもといちろう) |
|
実力者が往々にして忘れがちな「フリーランチはない」 という鉄則(やまもといちろう) |
|
選挙の行方はカネとネットの話がほぼすべてという時代における公職選挙法整備のむつかしさ(やまもといちろう) |
|
今の京都のリアルから近い将来起きるであろう観光パニックについて考える(高城剛) |
|
誰がiPodを殺したのか(西田宗千佳) |
|
「疑り深い人」ほど騙されやすい理由(岩崎夏海) |
|
失ってしまった日本ならではの自然観(高城剛) |
|
なぜ「正義」に歯止めがかからなくなったのか 「友達依存社会」が抱える課題(平川克美×小田嶋隆) |
|
クラウドにデータを委ねるということ(本田雅一) |
|
身近な日本の街並みが外国資本になっているかもしれない時代(高城剛) |
|
カップ焼きそばからエリアマーケティングを考える(西田宗千佳) |











