茂木健一郎
@kenichiromogi

2012年アメリカ大統領選挙について考えたこと

完全な自由競争はファンタジーである

アメリカはすでに「危険」な国?

ロムニー候補は、今回の討論で、オバマ大統領の医療健康保険改革、いわゆる「オバマケア」を厳しく批判しています。国が個人を助けたり、企業を助けたり、といったスキームは社会主義的であり、間違っているというわけです。人々がそれぞれの自由な創意に基づいて、市場の中で競争する、アメリカはそういう国にするべきだと主張しています。

実際、レーガン大統領とブッシュ親子二代の大統領が、そのような新自由主義的政策を進めた結果、アメリカの経済が活性化したという意見もあります。

しかし、一方では、アメリカはレーガン大統領時代以来、国民の所得の不平等はずっと広がってきています。これはジニ係数を見ても一目瞭然です。

みなさん、あるアメリカの機関が、世界中のさまざまな国のこのジニ係数の統計を取っていることはご存知でしょうか。そのアメリカの機関とは実は、CIA(アメリカ中央情報局)です。ではなぜ、CIAがこのジニ係数の統計を集めているのか。それは、このジニ係数から、社会の安定性を予測することができるからですね。つまり、ジニ係数が大きくなって社会の不平等が増していると思われる国は、革命が起きる可能性が高いということになる。

ちなみに、ジニ係数は、ゼロがもっとも平等な国ということであり、1になると完全な不平等ということを意味します。そして、0.5くらいになると危険水域とされています。ではアメリカは今いくつくらいかというと、0.45ほどになっています。アメリカは、すでにかなり不平等な社会になっていて、安定性の面から考えても危険な状況にあると言えるわけです。

1 2 3 4 5
茂木健一郎
脳科学者。1962年東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文藝評論、美術評論などにも取り組む。2006年1月~2010年3月、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』キャスター。『脳と仮想』(小林秀雄賞)、『今、ここからすべての場所へ』(桑原武夫学芸賞)、『脳とクオリア』、『生きて死ぬ私』など著書多数。

その他の記事

中国人にとって、「村上春樹」は日本人ではない!?(中島恵)
2018年は誰もが信じていたことがとても信用できなくなる事態が多発するように思われます(高城剛)
私たちの千代田区長・石川雅己さんが楽しすぎて(やまもといちろう)
「シマウマ、捕獲後に死ぬ」のニュースの裏側(川端裕人)
リアルな経済効果を生んだ「けものフレンズ」、そして動物園のジレンマは続く(川端裕人)
人々が集まる場に必要なみっつの領域(高城剛)
なかなか技あり、行列を緩和する「イベントアプリ」(西田宗千佳)
「苦しまずに死にたい」あなたが知っておくべき3つのこと(若林理砂)
本当に大切な仕事は一人にならなければできない(やまもといちろう)
2017年、バブルの時代に(やまもといちろう)
今週の動画「切込入身」(甲野善紀)
「すぐやる自分」になるために必要なこと(名越康文)
海外旅行をしなくてもかかる厄介な「社会的時差ぼけ」の話(高城剛)
「最近面白くなくなった」と言われてしまうテレビの現場から(やまもといちろう)
幻の鳥・ドードーの来日説を裏づける『オランダ商館長の日記』(川端裕人)
茂木健一郎のメールマガジン
「樹下の微睡み」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回発行(第1,第3月曜日配信予定) 「英語塾」を原則毎日発行

ページのトップへ