「どのレールに乗れるか」から「どういう職歴が積めるか」へ
もはや「どのレールに乗れば安定しているか」で企業を選ぶべき時代ではない。「どれだけ自分のキャリアビジョンに沿った職歴を2、30代の内に積めるか」を基準に職を選ぶべき時代だ。それはけして突飛なことではなく、日本以外では当たり前の価値観である。筆者が以前、アメリカ人の同僚と一緒に仕事をしていた時のこと。当時は雑用的な仕事が多かったので、筆者が「君は何でわざわざ日本まで来てこんなつまんない仕事やってるの?」と聞いたところ、彼は「日本での数年間の職歴が欲しいから。それがあれば一気に選択肢が広がるからね。逆に、君はなんでいつまでこんなつまんない仕事続けるの?」と聞かれ、返す言葉が無かった。留学するのなら、生活費も含めれば1000万近い身銭を切らねばならないが、会社に勤めるのであれば給料がもらえつつ実務が学べるわけだ。
それからもう一点。キャリアアップでよくある勘違いの一つに、「有名企業や大企業でないと職歴にならない」というものがある。だが以前も述べたように、人事は中途採用において、中小企業からの叩き上げを高く評価する傾向がある(逆に格上の企業からの応募だと「何かあるな」と勘繰られる)。もちろん、自分が描いているキャリアビジョンとリンクしていなければならないが、どんなに泥臭い現場経験でも、いや、泥臭ければ泥臭いほど、それは重要なキャリアになりえるということだ。
※POSSEというのは独立系のユニオンが発行する季刊誌で、筆者とは労働問題に対するスタンスが大きく異なるものの、今回のユニクロ・ルポは秀逸な出来だ。同社に興味がある人はご一読をお勧めする。同社の労務管理に問題があるのも事実だが、基本的に、世界で戦えるホワイトカラーに日本の大学生が入社数年で追いつくには、ここまでやらないとムリだということだろう。職能給から職務給へのショック療法だと考えるべきだ。
【今週のポイント】
・少子化による日本経済の縮小と処遇の硬直性を考えると、企業はギリギリの人員配置を続けるしかなく、今後さらに過重労働は蔓延化すると思われる。
・定年まで腰を落ち着けられる会社と、2~30代で希望する職歴を得られる会社は違う。前者は年々減少中であり、後者を意識した会社選びを考えるべき時に来ている。そう考えると、ワタミやユニクロのような会社にも見るべき点はある。
<この記事は城繁幸メルマガ『サラリーマン・キャリアナビ』Vol.32からの抜粋です。もしご興味を持っていただけた方は、ご購読をお願いします>
その他の記事
新型カメラを同時二台買いするための長い言い訳(高城剛) | |
クラスターとされた飲食店で何が起きていたか(やまもといちろう) | |
コロナウイルス(COVID-19)対策で専制・共産国家のやり方を称賛するのって怖ろしくない?(やまもといちろう) | |
貯まっても使う機会に恵まれないマイレージに思うこと(高城剛) | |
中進国の罠に陥って変わりゆくタイ(高城剛) | |
夏の京都で考える日本の「失われた150年」(高城剛) | |
明日にかける橋 1989年の想い出(切通理作) | |
21世紀の稼ぎ頭は世界中を飛び回るシェフ、DJ、作家の三業種(高城剛) | |
上野千鶴子問題と、いまを生きる我らの時代に(やまもといちろう) | |
「分からなさ」が与えてくれる力(北川貴英) | |
正しい正しさの持ち方(岩崎夏海) | |
競争社会が生み出した「ガキとジジイしかいない国」(平川克美×小田嶋隆) | |
中国人にとって、「村上春樹」は日本人ではない!?(中島恵) | |
キャリア女性のみなさん、その結婚、本当に大丈夫?(藤沢数希) | |
脱・「ボケとツッコミ的会話メソッド」の可能性を探る(岩崎夏海) |