2012年4月某日、夜間飛行事務所で編集作業に勤しむイノウエに届いた1本のメールからすべては始まった。
(第1回はこちらから)
(第2回はこちらから)
やはりDVDしかない
次の日、イノウエはさっそくTから送られてきた資料を読みこんだ。
ARP(アープ理論)というのは、Axis(軸)、Rhythm(リズム)、Posture(ポスチュア)の頭文字A、R、Pからとったものであること、卓球をフォアハンドやバックハンド、ツッツキやドライブといった個別の技術ではなく、その大本になる身体運動から整理したものであることなどが徐々に理解できてきた。
これは、既存の卓球の技術体系とはずいぶん違う捉え方だ。例えば一般的な指導では、バックハンドロングとツッツキは、まったく別の技術とされている。しかし、アープ理論ではそれらは「腕の動き」が違うだけで、「身体の動き」としては同じものだと考えるのだ。
[embed]http://www.youtube.com/watch?v=jSsITy9z3TA[/embed]
あるいは、テイクバック→インパクト→フォロースルーといった「フォーム中心」の捉え方も否定する。卓球の運動は、必ず「相手のボールのバウンド」に合わせて行われる。よって、フォームは運動の「結果」に過ぎず、反復練習によって身体に覚えこませるような意味でのフォームは存在しない。
姿勢を美しく保ち、相手のボールのリズムを合わせ、2種類の軸(センターアクシスとサイドアクシス)を使い分けて打球する。
一見、多種多様に見える卓球の技術も、アープ理論によってシンプルに整理することができる。それによって、動画のような非常にスムーズな技術の切り替えが実現できるようになる。
[embed]http://youtu.be/w3rdMjMY8g0[/embed]
アープ理論の概要をある程度理解したイノウエはひとしきり思案した。
このコンテンツには間違いなく力がある。すごみがある。ただ、どういうパッケージにするかは考えどころだ。
理論を正確に説明するには言葉や図解が必要だ。その一方で、最初にみた動画のインパクトは大切にしたい。はじめてアープ理論を知る人が「こういうふうにプレーしたい」と感じるようになるには、やはり動画の力を最大限にいかすべきだ。
5月の声を聴く頃、方針は決まった。夜間飛行ではじめての、卓球のDVD作成プロジェクトがスタートしたのだ。
(第4回につづく)
(第2回はこちらから)
(第1回はこちらから)
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