津田大介
@tsuda

津田大介のメルマガ『メディアの現場』より

国民投票サイト「ゼゼヒヒ」は何を変えるのか――津田大介、エンジニア・マサヒコが語るゼゼヒヒの意図

ローンチから1週間――面白かった質問は?

――ゼゼヒヒが始まって1週間が経ちましたが、ここまで出してきた質問の中で印象的なものはありますか?

津田:ゼゼヒヒがスタートした日に投稿した「夫婦別姓にあなたは賛成? 反対?」[*20] が面白かったですね。みんながそれぞれに賛成・反対の理由を書いていて、人気の回答を見てもさまざまな論点が並んでいますよね。「きのこ・たけのこ」の回答も面白かった。すごくくだらない質問なんですけど、みんないろいろ考えて、ここがいい、あそこがいいと褒めたりして、よく考えてるなぁと。

――ネット上では「きのこたけのこ戦争」[*21] とも呼ばれる一大トピックですからね。

津田:あとは「『竹島の日』政府式典の見送りを支持する?」[*22] も支持と不支持の間のグラデーションが意見から垣間見えて面白かった。「ぶっちゃけ、忘年会って世の中に必要?」[*23] では、いい意味で期待を裏切られました。僕は忘年会大好きなので、まあネットユーザー的にも忘年会必要派が多数派じゃないかと思ったんですが、きれいに割れましたね。同じく賛成と反対で真っ二つだったのが「野田政権の取り組み、あなたは評価する?」[*24] という質問。「この部分は認める」とか「この部分は認めない」とかあって、どちらを選ぶこともできるんだけど、どちらかを選ばないといけない。その結果、中間点がうまく出たんだと思います。意見を見てみると、やはり条件つきの回答だということがにじみ出ていますよね。「初デートでサイゼリヤに行くのはあり? なし?」[*25] は予想通りだったというか、意見も結果も非モテ [*26] に偏ってるなぁと。今後はもう少し一般的な女性ユーザーも増やしていきたいですね。

マサヒコ:僕は「音楽を買うならCD? それともデータ配信?」が個人的に印象深かったですね。割合を見ても意見を見ても、「やっぱりCDなんだよね」という人が多いのは意外でした。サイゼリアの質問からもわかるように、ゼゼヒヒのユーザーには何かしらの偏りはあるんですが、そこから想像できる方向とは逆の結果ですよね。でも、ちょっと角度を変えて「音楽を聴くならCD? それとも音楽データ?」[*27] という質問を投げかけてみると、今度はもうデータで聴いているよという回答や意見が圧倒的になった。いろんな角度から質問を投げかけることで、データで聴いてるのにどうしてCDを買っているのかという理由も見えてきますよね。そういう面白さは感じています。

津田:あと、「あなたは今年映画を映画館で見ましたか?」[*28] というような質問も面白いですよね。「こんな映画を見ました」と書いてあると、「あ、そっかこんな映画があったか、見なきゃ」というようなきっかけにもなるし。

マサヒコ:数が集まると、参考になる意見や視点は絶対に出てくるんですよ。「それがあったか!」とか「なるほどね、そんな見方があるんだ」みたいな。

津田:そういう意味でも、コメント率の高さは大切にしたいですよね。たとえば、はてブで1000ユーザーを集めるような記事があったとしても、コメントを残すユーザーはそんなに多くない。それに比べると、ゼゼヒヒでは明らかにコメント率が高くて、意見を表明するのがほぼデフォルトになっている。それはコンセプトとインターフェースが良かったということだと思ってます。今のコメント率を維持しつつ、さらにコメントするインセンティブを高めていけるよう、ブラッシュアップしていきたいですね。1つの質問に対して常に意見が1000個以上寄せられるようなサービスになると、サービス単体でのマネタイズも見えてくるし、さらに面白いことが仕掛けられるんじゃないかと思ってます。

1 2 3 4
津田大介
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。

その他の記事

週刊金融日記 第276号 <ビットコインは本当に世界を変えるかもしれんね他>(藤沢数希)
第9回情報法制シンポジウムで議論される、日本の情報収集・分析体制の現在地(やまもといちろう)
福永活也さんの「誹謗中傷示談金ビジネス」とプロバイダ責任制限法改正の絶妙(やまもといちろう)
コデラ的出国前の儀式(小寺信良)
週刊金融日記 第294号【怪物ビットコイン ~ハードフォークという富の複製、ビットコイン・ダイヤモンド誕生!時価総額1兆7000億円他】(藤沢数希)
近頃人気があるらしいコンサルタントという仕事の現実とか(やまもといちろう)
どうも自民党は総体として統一教会と手を切らなさそうである(やまもといちろう)
「たぶん起きない」けど「万が一がある」ときにどう備えるか(やまもといちろう)
夏休みの工作、いよいよ完結(小寺信良)
悪い習慣を変えるための5つのコツ(名越康文)
僕がザハ案の国立競技場の建設に賛成していた、たった一つの理由(岩崎夏海)
99パーセントの人が知らない感情移入の本当の力(名越康文)
現代日本の結婚観と現実の夫婦の姿(やまもといちろう)
今の京都のリアルから近い将来起きるであろう観光パニックについて考える(高城剛)
高2だった僕はその文章に感情を強く揺さぶられた〜石牟礼道子さんの「ゆき女聞き書き」(川端裕人)
津田大介のメールマガジン
「メディアの現場」

[料金(税込)] 660円(税込)/ 月
[発行周期] 月1回以上配信(不定期)

ページのトップへ