小寺信良メルマガ『金曜ランチボックス』より

「13歳の息子へ送ったiPhoneの使用契約書」が優れている理由

匿名を過信しない

“7.このテクノロジーを使って嘘をついたり、人を馬鹿にしたりしないこと。人を傷つけるような会話に参加しないこと。人のためになることを第一に考え、喧嘩に参加しないこと。”

ネットの匿名のコミュニケーションでは、特に重要なポイントである。MIAUの契約書では、“悪口、嘘を書かない。”がこれに該当する。

かつて2008年頃に「学校裏サイト」が問題になったことがあるが、学校やサービス会社の巡回により、沈静化した。しかしまた2011年頃に、違った形で裏サイト化するサービスが出てきて問題になった。だいたい3年サイクルで繰り返していることになる。

これら裏サイトの特徴は、どれも匿名のコミュニティであるということだ。人は自分が誰だかバレないということになると、必ずいたずら半分で悪いことに手を出す。子どもは特にそうである。

こういうものに荷担するのは、本人にとっても、だれにとってもプラスにはならない。荒れたネットが大好きならば、そういうところはいくらでもある。ただしそこで人を怒らせたことの報復は、子どもの人生を破壊するに十分な威力があり、非常にリスクが高い。子どもはそこに近づくなと言うには、十分な根拠がある。

 

生身の人間が相手

“8.人に面と向かって言えないようなことをこの携帯を使ってSMSやメールでしないこと。”

“9.友達の親の前で言えないようなことをSMSやメールでしないこと。自己規制してください。”

この2つは、同じようなことを指している。つまり、ネットを使ったからといって、その向こう側には生身の、あなたと同じように傷つきやすい人間がいるのだということを忘れてはならない、という戒めである。MIAUの契約書では、“いくら本音でも、言わなくていいことまで書かない。”がこれに該当する。

今どきの子どもは、対面のコミュニケーションにものすごく気を遣う。言いたいことを言えない、あるいは気を遣って本当ではないことを言ってしまうことに対して、罪悪感を持っているようだ。

・友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル (ちくま新書)
http://j.mp/U9a2vn

一方ネットのコミュニケーションにおいては、本音を言っていいと思っている。つまり、リアルとバーチャルのコミュニケーションは違うものだと認識しており、ネットは心の裏側が表出しても構わないものという認識を持っている。

「本当にそう思ってるんだから、それを言って何が悪い」と開き直るケースが多いのは、そういう理由からだ。だがそれによって誰かが傷つくのであれば、それはネットであろうとも心の中だけにしまっておくべきことであり、あるいはリアルの場で信頼できる人だけにそっと打ち明ける話だ。

これはネットのマナーというよりも、人としての躾の問題である。

1 2 3 4 5 6 7 8

その他の記事

前川喜平という文部科学省前事務次官奇譚(やまもといちろう)
メダルの数より大切なことがある ――有森裕子が語る2020年に向けた取り組み(宇野常寛)
先行投資か無謀な挑戦か ネット動画事業に関する是非と簡単な考察(やまもといちろう)
今年は「動画ゼロレーティング」に動きアリ(西田宗千佳)
組織変革とは、まず自分が変わろうとすること(やまもといちろう)
職業、占い師?(鏡リュウジ)
世界情勢の大きな変わり目を感じる今年の終わり(高城剛)
イギリスと中国、お互いに国営メディアBANで見る価値観の衝突とプロパガンダ戦(やまもといちろう)
「家族とはなんだって、全部背負う事ないんじゃない?」 〜子育てに苦しんだ人は必見! 映画『沈没家族 劇場版』(切通理作)
フェイクニュースか業界の病理か、ネットニュースの収益構造に変化(やまもといちろう)
すべてをデジタル、すべてをオンライン。成功と失敗と挑戦(本田雅一)
横断幕事件の告発者が語る「本当に訴えたかったこと」(宇都宮徹壱)
週刊金融日記 第280号 <Instagramで女子と自然とつながる方法 〜旅行編、米朝核戦争に備えビットコインを保有するべきか他>(藤沢数希)
【高城未来研究所】「海外に誇る日本」としてのデパ地下を探求する(高城剛)
【第5話】オープン戦(城繁幸)

ページのトップへ