対談:小山龍介×原尻淳一
<前編はこちらから>
舞台設定を狭く捉えると、領土争いはただの痴話喧嘩になる
小山:時事ネタで言うと、短いスパンでは解決できない問題というのは、まさに韓国や中国との関係の問題にも通じるよね。竹島に上陸する、サッカー選手が銅メダル取ったときにプラカードを掲げる、親書を送っても受け取らない……。これ、どうしたらいいですか?(編注・対談の収録は2012年8月24日に行われました)
原尻:日本が同じような手段で主張してもしょうがないよね。なんか、子どもの喧嘩みたいになっちゃう。
小山:それこそ、一方が「謝れ」と言ったときにもう一方が「それは失礼だ。そちらこそ謝れ!」と言い返すようなレベルの喧嘩だよね。
原尻:そういうことじゃないよね。オリンピックでのサッカー選手のプラカードの件はすごくわかりやすくて、あれは「オリンピックの精神を踏みにじっている」ということはみんなわかっている。日本と韓国の問題という以前に「世界のルールを踏みにじっている」という点を問題にするべきだと思う。
〈舞台〉をどこに設定するかによって、解決の方法って変わると思うんだよね。
韓国と日本だけの問題、という小さい舞台で設定をしてしまうと、相手の挑発にそのまま乗るだけという、ただの喧嘩になりかねない。
小山:舞台設定を広げるとしたら、まずは国際政治の世界というのがあるよね。
日本の外務省は、韓国の外務省に対して「アメリカとのすり合わせはどうなっているのか」「アメリカの承認を得て行動しているのか」ということを非公式に情報収集するわけだよね。アメリカは、日韓が喧嘩するといろいろ困るわけだから。
そうすると韓国からは、「いや、アメリカは関係ない」とか「今までの公式見解どおりで、特別変わったことはない」なんて、強気なこと言われる。――こういうやり取りが実際にあったかどうかは知らないけど、そういうふうにアメリカの出方を伺うということは、絶対あるよね。
日本側が「国会で韓国の大統領に謝罪要求をする」と言うのは、間違いなくアメリカに承諾を取った上での行為ですよね。「こういうふうに動くけど、いいです
よね? 国際裁判所に訴えるけど、いいですよね?」と聞いて、アメリカは「うん。この展開じゃあ仕方ないな」と。絶対、裏を取ってると思うんですよ。
――そうやって、当事者以外のプレーヤーがいる空間として、舞台をちょっと広げてみるとまた様子が違って見えるんですよね。
小山:同時に、中国との問題があります。竹島上陸のタイミングで尖閣諸島でトラブルが起こったのは、もう偶然というより必然と捉えた方がいいんじゃないか。つまり、中国と韓国の間で何らかのコミュニケーションがあったのではないかということも、可能性としては考えられるわけです。
もしかしたら、中国だって韓国に対して何かを言ったのかもしれない。「竹島問題の件だけどさ、ちょっとアクションしといた方がいいんじゃない? その後すぐ尖閣行くからさ」「ああ、いいっすね」というやりとりがあって、上陸する、みたいなね。もちろん、これも架空の話ですけど。
そういうふうに中国と韓国の間に密約があり、韓国としては今後中国との関係には重きを置いておいた方がいいと思っている。日本はアメリカに確認をとって、ある程度の緊張関係を生み出してもOKだという了承をとっている。そういうことも、「可能性としては考えられる」わけです。そういう三角関係、あるいはアメリカを加えた四角関係のイメージで捉えることで、〈舞台〉が広がる感じになると思う。