某大使館の微博運用セオリー
中国の微博は今や中国最大の情報源となった。わずか3年前には「ブログのエントリが削除されたー!」「ネット検索ができない!」という声がよくあがっていたが、今では当局は「微博のエントリ削除」や「微博のキーワード検索」に集中的に力を入れている。そして「微博で検索できない!」と騒がれても、実際には検索エンジンでネット検索すれば問題なくネットサイトの結果が現れる場合も多く、当局が微博にものすごく注意を払っていることがよく分かる。先日も微博には「五毛」と呼ばれる、政府寄りのネット輿論評論員が10万人くらいいるという話題がツイッターで暴露されていた(その結果、微博常用者が減り始めている、という情報も)。
わたしは以前、駐中国の外国大使館で微博公式アカウントの運営担当方に、個人的にその「運営のコツ」について尋ねたことがある。返ってきた答は驚くほどシンプルだった。「徹底的に我が国の事情についてのみ語り続けること。そしてそれをもって中国の批判をしたり、当てこすったり、比較したりする文言を一切入れないこと」だそうだ。
彼らの運営方針は「自国をPRすること」にあり、「中国をあてこすること」ではない。その国の制度や習慣がどうやって成り立っており、そこにはどんな精神が宿り、どんな歴史があり、どんなふうに維持され運営されており、どんなふうに利用され、またどんなふうに受け入れられているか。それが社会にどんな影響をもたらし、どんなふうな議論が起こっているのか。それをどうやって国や政府が受け取り、どう生かしているのか。さらには民間でどんなことが起こっているのか、なぜ起こっているのか、そこではなにが語られているのか、考えられているのか──アカウントではそれだけを「情報として」中国人ユーザーに向けて徹底的に語り続ける。その先の連想は読んだ者の自由だから、というのである。
簡単にいえば、批判や称賛はその精神を持つ人たちには自然に宿る。だが、彼らがその批判や称賛を発揮するためにはきちんとした情報、基礎になる情報、判断のもとになる情報が必要となる。その「情報」を与え続けること、それが彼らの微博運営のスタイルなのだそうである。
もちろん、日本では、そして西洋諸国の多くではメディアが自国政府を批判しても称賛しても自由だ。そして他国の政府や要人を批判するのも称賛するのことも許されている。だが、中国ではそれが許されていないのはすでにいわずもがなであり、そこに斬りこんでいくのは当然のことながら中国政府の警告、処分の対象になる。微博アカウントという場を中国政府に斬りこむ場とするのか、それとも自分たちのPRをもって読む者の判断力を豊かにしていくのか。
朝日新聞アカは間違いなく、このセンシティブな点に気づいていなかった。そして地雷を踏んでしまったのだろう。そんな「中国政府に対する指摘」がどうどうと中国語で書かれた記事がその中国語ニュースサイトに掲載されていても、微博での導入をちょっと工夫するべきだった。「読ませる」という努力はメディアの人間なら日々普通にしているもので、それがどういうものかわかっているはずだったろうに。
だが、上述した某大使館の微博運用セオリーは中国で事業運営をするその他の企業にも十分通用するものだ。この朝日新聞アカ削除事件でまた恐れおののく日本人微博アカウント利用者が出ているかもしれないが、あなたの目的がなんであるか、を見極めれば、日本のみならず多くの外国メディア、大使館、企業アカウントが今日も生き残れているという現実のセオリーに従って微博を利用することは十分可能なはずだ。
※* この「朝日微博アカウント削除」事件について、『Newsweek 日本版』で連載しているコラム「中国 風見鶏便り」の「朝日君」で、中国に向けた情報発信の意義と、朝日中文アカが「朝日君」(http://goo.gl/MP7Fke)という名前で親しまれるようになった裏話が触れられています。ぜひ併せてご一読ください。
<この文章はふるまいよしこメルマガ『§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな』から抜粋したものです。もしご興味を持っていただけましたら、ご購読をお願いします>
その他の記事
|
川端裕人×オランウータン研究者久世濃子さん<ヒトに近くて遠い生き物、「オランウータン」を追いかけて>第3回(川端裕人) |
|
なくさないとわからないことがある(天野ひろゆき) |
|
怪しい南の島が目指す「金融立国」から「観光立国」への道(高城剛) |
|
スマホはこのまま「高くなる」」のか(西田宗千佳) |
|
あたらしい知覚の扉を開く体験を多くの方々に(高城剛) |
|
貯まっても使う機会に恵まれないマイレージに思うこと(高城剛) |
|
『犯る男』朝倉ことみさん、山内大輔監督インタビュー 「ピンク映画ってエロだけじゃない、こんなすごいんだ」(切通理作) |
|
「わからない」という断念から新しい生き方を生み出していく(甲野善紀) |
|
迷子問答代表質問:生成AIの波に翻弄される映像制作者(やまもといちろう) |
|
見た目はあたらしいがアイデアは古いままの巨大開発の行く末(高城剛) |
|
「銀座」と呼ばれる北陸の地で考えること(高城剛) |
|
これからの時代をサバイブするための「圏外への旅」(高城剛) |
|
残暑の中で日本だけに定着したマスク文化を考える(高城剛) |
|
福永活也さんの「誹謗中傷示談金ビジネス」とプロバイダ責任制限法改正の絶妙(やまもといちろう) |
|
金は全人類を発狂させたすさまじい発明だった(内田樹&平川克美) |











