いかがでしょう?
アンはマシューと一緒に通ってきた道に、「街道」(avenue)の代わりに「歓喜の白路」(White Way of Delight)という名前をつけます。それから、自分は、ふさわしくない名前があると、いつも新しい名前を考えるのだといい、孤児院にいた女の子に、ひそかに別の名前をつけていたことを話します。このあたりは、ちょっとユーモラスですね。
この場面は、アンの感激力を表しています。地元の人が、ただ「街道」(avenue)と名づけて済ませてしまう場所に、新しい名前をつける。ここには、何げないものにも心を動かし、そこに意味を与えずにいられない人間の根源的な衝動があります。こういう感激力をもつアンだからこそ、この後、見慣れた日常を新鮮な風景に変えて、周囲の人に感化をもたらして行くのです。
その一方で、マシューの、「ちょっとキレイなところだね」と済ませてしまう、実際的なセンスも、この部分の読みどころです。英語圏には、アンのような人よりも、むしろマシューのような人の方が多い。英語圏が実際的なセンスを文化として持っていたからこそ、文明が発展したともいえます。原書に親しむことは、そのような、英語圏の人々の性格のようなものにまで出会い、読み取る機会を与えてくれるのです。
英語を通して、英語以上のものを学ぶ。英語学習は、単なる検定試験の点数稼ぎではない。人間としての幅を広げる、習練の場なのです。
この名文!
It's the first thing I ever saw that couldn't be improved upon by imagination.
想像力を使ってもそれ以上良くできないものなんて、初めて出会ったわ。


その他の記事
![]() |
公共放送ワーキンググループがNHKの在り方を巡りしょうもない議論をしている件(やまもといちろう) |
![]() |
馬鹿に乗っかられて壊滅した「評価経済ネタ」バブルの今後(やまもといちろう) |
![]() |
2023年は「人工知能」と「公正取引」の年に(やまもといちろう) |
![]() |
会社を立ち上げました–家入流「由来を語れる」ネーミングについて(家入一真) |
![]() |
なぜ若者に奴隷根性が植えつけられたか?(後編)(岩崎夏海) |
![]() |
汚部屋の住人が勘違いしている片づけの3つの常識(岩崎夏海) |
![]() |
「昔ながらのタクシー」を避けて快適な旅を実現するためのコツ(高城剛) |
![]() |
中学受験に思う(やまもといちろう) |
![]() |
「コントラスト」と「ダイナミックレンジ」(高城剛) |
![]() |
違憲PTAは変えられるか(小寺信良) |
![]() |
週刊金融日記 第292号【ビットコインのお家騒動は続く、ビットコインキャッシュ大暴騰他】(藤沢数希) |
![]() |
「日本の動物園にできること」のための助走【第一回】(川端裕人) |
![]() |
中国マネーが押し寄せる観光地の今(高城剛) |
![]() |
コロナはない国、タンザニアのいま(高城剛) |
![]() |
「テレビの空気報道化」「新聞の空気化」とはなにか──ジャーナリスト・竹田圭吾に聞くメディア論(津田大介) |