「太い時間」を上手に使うのが<時間の技法>の真髄
「時間のチューブ」は、自分の意志とは無関係に、周期的に伸び縮みします。後で述べますが、いわゆる典型的な「うつ」状態でない限り、「太い時間」の後には必ず「細い時間」がやってくるし、「細い時間」の後には「太い時間」が待っています。
そういう意味では、たとえ「細い時間」に陥ってしまったとしても、そう心配することはないわけですが、問題は「細い時間」にしても「太い時間」にしても、それが10分続くのか、1時間続くのかは誰にもわからないということです。
僕の実感では、本当にクリエイティブな作業に集中できる「太い時間」は長くても40-50分程度しか続きません。逆に、何をやっても集中できない「細い時間」というのは、コントロールに失敗すると長く続いてしまうことが少なくない。
ですから実践的に重要なことは、「太い時間」をいかに有効に使うか、ということと、「細い時間」からいかに早く抜け出すか、ということなんです。それがいわば、「時間の技法」の真髄ではないかと僕は考えます。
よく、「仕事に行き詰まったら自分なりの気分転換をしてください」といったことが言われます。それは確かに「太い時間」と「細い時間」の間に、ある種、「デジタルな区切り」をつける意味で、有効なテクニックです。「太い時間」からだんだんと「細い時間」に移り変わってきたら、そのまま効率の落ちた状態でだらだらと仕事をするのではなく「終わり」をキチッとつける。そのほうが、次の「太い時間」に万全の態勢で臨めるというわけです。
しかし、それだけでは十分ではありません。太い時間と細い時間にうまく乗っていくためには、「身体」を使った心理的アプローチが重要となります。
例えば気分転換ひとつとっても、身体を使って歩き、空間的に移動していくということの意味は非常に大きい。仕事場からちょっと外に出る、5分でもいいから散歩する。そうすることによって、時間の「太さ」は大きく変化するんですね。
少なくとも、デスクワークに従事している人が、気分転換のときにパソコンの画面を眺めたり、スマートフォンでtwitterを見たりするよりは、絶対、歩いて、移動したほうが「時間の切り替え」という点では有効なのです。

その他の記事
![]() |
コロラドで感じた大都市から文化が生まれる時代の終焉(高城剛) |
![]() |
ウェブフォントを広めたい・ふたたび(西田宗千佳) |
![]() |
川端裕人×オランウータン研究者久世濃子さん<ヒトに近くて遠い生き物、「オランウータン」を追いかけて>第3回(川端裕人) |
![]() |
付き合ってるのに身体にも触れてこない彼氏(25歳)はいったい何を考えているのでしょう(石田衣良) |
![]() |
『風の谷のナウシカ』宮崎駿著(名越康文) |
![]() |
「親子上場」アスクルを巡るヤフーとの闘い(やまもといちろう) |
![]() |
もう少し、国内事業者を平等に or 利する法制はできないのだろうか(やまもといちろう) |
![]() |
スウェーデンがキャッシュレス社会を実現した大前提としてのプライバシーレス社会(高城剛) |
![]() |
リモートワーク時代のエンタメを考える(本田雅一) |
![]() |
「疲れているとついイラッとしたり、怒りっぽくなってしまうのですが……」(石田衣良) |
![]() |
“コタツ記事”を造語した本人が考える現代のコタツ記事(本田雅一) |
![]() |
働かないのか? 働けないのか? 城繁幸×西田亮介特別対談(後編)(城繁幸) |
![]() |
本当に大切な仕事は一人にならなければできない(やまもといちろう) |
![]() |
マイナンバーカードについて思うこと(本田雅一) |
![]() |
影響力が増すデジタルノマド経済圏(高城剛) |