岩崎夏海
@huckleberry2008

岩崎夏海の競争考(その14)

怒って相手から嫌われることのメリット

 

怒って相手から嫌われることの二つのメリット

怒って相手から嫌われることのメリットの一つは、そういうふうに自分を厳しい環境に置くことによって、能力を向上させられるということだ。世の中の大きな成果をあげる人間が、しばしば短気で周囲から嫌われているのはそのためである。多くの人は、成果をあげている短気な人に対して「天狗になっている」と見なしがちだが、実際は逆だ。彼らは、もともと短気で嫌われ者だったからこそ、努力し、成果をあげられるようになったのだ。

怒って相手から嫌われることのメリットのもう一つは、「他人のハードルが下がる」ということである。嫌われ者というのは、周囲からの評価が下がる。人は、嫌いな人を無能だと見なす性質があるため、「何をやってもダメなやつ」という先入観を持つのである。つまり、評価のハードルが下がるのだ。そのため、少しでも能力を見せつけると、とたんに評価が上がる。人は、もともとダメな人間だと思っていた相手にちょっとでも長所が見つかると、とたんに評価を逆転させる。少女マンガにおける恋愛も、最初は「嫌なやつだ」と思っていた男の子が実は良い人だったというパターンがほとんどだ。

これは、「競争」にはとても有利に働くのである。面白いことに、人間にとっては好き嫌いの感情と能力の評価というのは、真逆の場合も少なくない。人は、嫌いな人の能力が高いということを、比較的すんなりと受け止められるのである。なぜなら、人間は「交換条件」という概念に強く縛られているからだ。そのため、嫌いな人の能力が高くても、「あいつは嫌われている分、能力が高いのだ」と納得してしまうのである。

このように、短気な人というのは、他者から能力を評価されやすいという利点がある。これに、最初の「自分の能力を高めやすい」という利点を足せば、むしろ短気になって人から嫌われることは、競争に勝つためには不可欠なことともいえる。

そこで次回は、ではどうすれば「怒れる」ようになるのか?――ということについて考えたい。というのも、世の中には怒らない訓練を積み重ねすぎたために、今ではすっかり怒れなくなったという人も少なくないからだ。また、嫌われ方にも「良い嫌われ方」と「悪い嫌われ方」があるので、それについても併せて論じていきたい。

 

 

大好評新刊!『部屋を活かせば人生が変わる』413ISPOvcgL._SL500_AA300_

夜間飛行、2013年11月

部屋を考える会 著

amazonで購入する

 

 

 

 

 

※「競争考」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!

 

岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」

35『毎朝6時、スマホに2000字の「未来予測」が届きます。』 このメルマガは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)作者の岩崎夏海が、長年コンテンツ業界で仕事をする中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代をどうとらえればいいのか?――また未来はどうなるのか?――を書き綴っていく社会評論コラムです。

【 料金(税込) 】 864円 / 月
【 発行周期 】 基本的に平日毎日

ご購読・詳細はこちら

http://yakan-hiko.com/huckleberry.html

 

岩崎夏海

1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。

1 2
岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。

その他の記事

メルマガの未来~オープンとクローズの狭間で(津田大介)
減る少年事件、減る凶悪事件が導く監視社会ってどうなんですかね(やまもといちろう)
海外旅行をしなくてもかかる厄介な「社会的時差ぼけ」の話(高城剛)
光がさせば影ができるのは世の常であり影を恐れる必要はない(高城剛)
『冷え取りごはん うるおいごはん』で養生しよう(若林理砂)
週刊金融日記 第299号【誰も教えてくれなかったWebサービスとアフィリエイトの勝利の方程式、日本も世界も株式市場はロケットスタート他】(藤沢数希)
「スターウォーズ」を占星術でひもとく(鏡リュウジ)
菅政権が仕掛ける「通信再編」 日経が放った微妙に飛ばし気味な大NTT構想が投げかけるもの(やまもといちろう)
極めてシンプルでありながら奥が深いシステマ小説(西條剛央)
本当に必要なものを見抜くためのひとつの方法(高城剛)
セキュリティクリアランス法案、成立すれども波高し(やまもといちろう)
奥さんに内緒で買った子供向けじゃないおもちゃの話(編集のトリーさん)
あまり参院選で問題にならない法人税のこと(やまもといちろう)
『スターウォーズ』は映画として不完全だからこそ成功した(岩崎夏海)
Amazon(アマゾン)が踏み込む「協力金という名の取引税」という独禁領域の蹉跌(やまもといちろう)
岩崎夏海のメールマガジン
「ハックルベリーに会いに行く」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 基本的に平日毎日

ページのトップへ