学生のために「新卒採用やめます宣言」をして欲しい
西田:働き方のバリエーションを増やしていくというご提案には大賛成です。正社員か無業かではなくて、週3日や4日だったら働けるという人が能力を発揮できる場を作る。そういう意味では、従来型の「フルタイム正社員」だけでなく、職務や勤務地が限定された「ジョブ型雇用」などが、もっともっと広まるのは良いことだと思います。
そして長い目で見れば、僕らがごちゃごちゃ言わなくても、「雇用制度の自由化」は進んでいくのではないでしょうか。そうでなければ、企業は生き残れませんからね。
ただ、僕の予想では、その過渡期において、どうしても弱い人にしわ寄せがいく。普通のことはできるけれども何か専門的な技術を持っているわけでもない、競争的な気質ももっているわけでもない、という人が取り残される。誤解を恐れずにいうと、偏差値40から55くらいの、もっともボリュームが多いところに、そういった人たちがたくさんいるわけです。そして、実際に彼らは無業者予備軍になっていたりもするわけですが、やはり誰しもがきちんと働くことができて、快適で幸せな生活を送ることができる社会が豊かな社会ではないでしょうか。そうでなければ、ぎすぎすした、過剰競争の社会が訪れ、社会の分断や不安定化を招くことを、とくに欧州の現代史は示唆しています。
それで、もっとも効果的なのが「新卒採用やめます宣言」を企業や経団連が発信することではないかと考えています。
※企業の採用手法、変える時期 立命館大学大学院特別招聘准教授・西田亮介氏:日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM17013_Y2A910C1000000/
今の日本の教育は、初等教育から大学教育まで一貫して「横並び」を良しとしています。それは、従来の日本型長期雇用においては、ある意味ではぴったりの教育だったと思いますが、これからは様々な働き方が提示されるとなると、いろいろと齟齬が出てくるでしょう。労働市場に出た瞬間に突然「はい、競争してください」と言われても、戸惑う人ばかりになるはずです。
首都圏以外では、横並び感覚の存在をしばしば感じます。実際、関西でも、「体育会に入っていれば、就職は大丈夫!」といった感覚はまだまだ非常に根強い。そんな中で、ある日、学生が主体的に自分のキャリアを考えるようになるのかというと、ちょっと想像がつかない。それに昨今では学生は「大学の先生は好きなことだけやってきた人たちなので役に立たない」という誤解を信じ込んでいたりさえしますから、僕たちが言っても聞く耳を持たないかもしれない。たとえば大学教員といっても僕たちの世代だと、30代前半で複数回の転職を経験していたり、僕もそうですが前職が大学以外の職場だったりするのも当たり前だったりするんですけどね……。
だから一見厳しいようですが、多くの学生やご両親なども関心をもって動向を見ている大企業や業界団体のほうから、「時代は変わりました。具体的には新卒一括採用は辞めます。それぞれ自分にあった会社を選んでください」というくらいのメッセージを十分な準備期間を設けて出してくれたほうが、学生のためにもなるし、それは会社にためにもなると思うのです。
城:確かに、「優秀な人材を採用する」という企業の側に立って考えても、新卒一括採用はなくなったほうがいいですね。ただ一方で、企業からすると「とにかくラクだ」というところもある。期限が区切られていますし、ある程度の有名企業であればその時期になると勝手に希望者がわらわらと集まってくるわけですから。それに、同じ日に内定式があるので、「踏み絵」まで用意されている状況です。もちろん「新卒一括採用」なんてナンセンスなものは、近い将来自然となくなるはずですが、「一気に変える」というのであれば、どこかの企業が宣言してしまうのも面白いかもしれませんね。
それで、学生の意識を変えるという意味では、私は就活をはじめる段階ではなくて、義務教育のレベルから変えるべきだと思っています。今までの教育は「いかに美しく、前例を踏襲するか」でした(笑)。センター試験はその究極ですね。でも、現実の社会はもうそうしたことが評価される時代ではなくなっています。前例通りやっていたら評価されないし、そもそも座る席すら確保できない。
労働市場では学校教育で推奨されてきたこととは違ったアプローチを求められているのに、そこに気づかずにコケてしまった人こそが、「仕事からあぶれてしまった層」のコアをなしていると思うんです。教育の改革は、実は雇用問題の改善に直結する話だと考えていますよ。
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