強い人間を善とするシステム
「強い人間」だけを尊ぶ世界の何がまずいかというと、結局、「強い人間」の座を手に入れた人間も、幸せになれないということなんですよ。
「いつか自分も弱者になってしまうかもしれない」という可能性に対して、恐怖を抱くじゃないですか。ドロップアウトに対する恐怖から、終わりのない戦いに巻き込まれていく。
「自分が損しないように根回ししておかなきゃ」とか「ほかの人間を蹴落とさないといけない」とか、恐怖から生まれる工夫にろくなものはない。
「そういう世界で頑張っていても幸せになれない」ということを、若い世代の人は感覚でわかっているような気がする。
これはただの予測だけど、世界は地域や国家を超越して、「シェア」派と「ひとりじめ」派に人間の集団が二分化していくんじゃないかとも思います。
先進国の中から「シェア」を志向する人がたくさん出てきて、すでに自然と調和した暮らしを実践している国の人々に教わるということもたくさん起こるだろうし、今まさに経済発展している国で「ひとりじめ」志向に傾いているインドや中国の人たちが、つながるということもあるだろうし。
俺はずっと人間を「分けるな」って言ってたけど「もう、ふたつに分けたほうがいいのかもしれないな」とも思います。水と油のように交わらない気がするから。
近年のアメリカには非常にがっかりしている。「なんでこんなことになっちゃったんだろう」と。もっと寛容で、多様性を求める国だったのに、今は非常にシステムにがんじがらめな感じがします。
――アメリカが国として変わってしまったというのは、やっぱり9.11以降なんでしょうか?
そうですね。俺はグリーンカード(永住権)を持っているんですが、もう手放そうかな思っているくらいです。
――「シェア」派と「ひとりじめ」派に分かれたあと、新たな争いが生まれてしまう可能性もあるんでしょうか?
そこはもう、繰り返しですよね。「シェア」を志向する人たちが、結局は駆逐されてしまうのかもしれないし、そこはわからないですよね。
【今週のキリヤ語録】
「憧れ」がわけのわからない車輪を動かして、その車輪が暴走することによって人の血が流れている
紀里谷和明メールマガジン「PASSENGER」

映画監督紀里谷和明によって立ち上げられた会員制クリエイティブメディア『PASSENGER』。PASSENGERと連動して配信されるメルマガでは、映像、クリエイティブ業界のビジネストレンドや紀里谷和明の素顔、本質に迫るトークなど、盛り沢山のコンテンツをお届けします。紀里谷和明監修の写真作品やメイキング風景も、メルマガ内記載のパスワードを使ってご覧頂けます。
ご購読はこちらから
PASSENGER:http://passenger.co.jp
その他の記事
|
もう少し、国内事業者を平等に or 利する法制はできないのだろうか(やまもといちろう) |
|
自分の「生き方」を職業から独立させるということ(紀里谷和明) |
|
タロット、ルノルマン……人はなぜ「カード占い」にはまるのか(鏡リュウジ) |
|
限りある時間を広告主やその場限りのよく知らない人の戯言と交換してはいけない(高城剛) |
|
失ってしまった日本ならではの自然観(高城剛) |
|
完全な自由競争はファンタジーである(茂木健一郎) |
|
奥さんに内緒で買った子供向けじゃないおもちゃの話(編集のトリーさん) |
|
開成中高校長「『勉強しなさい』を言ってはいけない」教育論の波紋(やまもといちろう) |
|
変化が予測できない時代(本田雅一) |
|
格安スマホは叩かれるべきか? サービス内容と適正価格を巡る攻防(やまもといちろう) |
|
京都で実感した宗教を超える文化のグローバリゼーション(高城剛) |
|
津田大介×石田衣良 対談<前編>:メルマガは「アナログ」なメディアである(津田大介) |
|
フィンランド国民がベーシック・インカムに肯定的でない本当の理由(高城剛) |
|
波照間島への旅のコツ(高城剛) |
|
日本の脱原発は本当に可能なのか?――ドイツ10年の歩みに学ぶエネルギー政策(津田大介) |











