※「競争考」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!
岩崎夏海の競争考(その19)夕陽的とは何か?(後編)
「正しく怒る」ためには、「正しい正しさ」を知ることが必要だ。では、「正しい正しさ」を知るためにはどうすればいいか? それは、「夕陽」を参考にすることだ。「夕陽がなぜ美しいか」ということを構造的に理解し、それを物差しにすることで、「正しい正しさ」を知ることができる。そこで今回も、前回に引き続き「夕陽がなぜ美しいか」ということを考えていきたい。
美しさの秘訣は、「変化が早い」こと
夕陽がなぜ美しいか? それは「変化が早い」からだ。昼と夜の境界だから、あっという間に景色が移り変わっていく。それが、美しさの秘訣となっているのだ。
人は、変化が早いものが好きである。DNAのレベルでそうプログラミングされている。例えば、人は「流れの速い川」が好きである。ほとんど無条件で引き込まれる。台風のときなど、危ないにもかかわらず、濁流となった川に多くの人が見入っている。あるいは、ニュース映像で流れると、誰でも息を止めて見てしまう。
ちなみに「面白い」というのは、「面白い」と感じられるようなものではまだレベルが低い。本当に面白いものは、無条件で引き込まれる。つい見てしまう。だから、「面白い」と思う暇がない。
例えば、街で誰かが喧嘩していると、つい引き込まれてしまう。これなどは、「面白さ」のレベルがとても高いということができよう。その逆に「このコンテンツ面白いなあ」というふうに、面白いと自覚できるようではまだまだなのだ。本なども、本当に面白いものは、それこそ寝る間も惜しんでつい読みふけってしまう。
面白さを生み出す魔法
「変化の早いもの」も、これと同じだ。人間は、ついそれに魅入られる。ちなみに、最近YouTubeで「タイムラプス」という、動画をハイスピードで再生する映像が流行っているが、これなどもまさに「変化が早い」のが面白がられている理由だ。変化が早いと、なんでも面白く見られるのである。チャップリンなど昔のコメディ映画も、再生スピードが早くなっていた。すると、通常のスピードよりも面白く見えるのだ。変化を早くするというのは、面白さを生み出す魔法だ。どんなものでも、変化を早くさせるだけでも面白くなるのである。
そこから逆算すると、変化するもの、変化の激しいものは、正しく、美しい――と判断がすることができる。例えば「子供」――それも赤ん坊。赤ん坊は、とても変化が激しい。幼ければ幼いほど、変化のスピードは早くなる。だから、赤ん坊は「正しい」のだ。そしてまた、「美しい」のである。
おそらく、赤ん坊が正しくなかったり美しくなかったりしたら、人類は絶滅しているだろう。なぜかというと、子育てにはさまざまな困難が伴うからだ。人類はそれを、彼らが「正しい」もしくは「美しい」から乗り切っているのである。彼らが誤っていたり醜かったりしたら、とてもではないがそんな苦労をして子供を育てなくなる。彼らが正しかったり美しかったりするから、困難な面については目をつぶっているのだ。
多くの人が、赤ん坊というのは「家族」だから、あるいは自分の「血を分けた存在」だから、無条件で育てると思っている。もちろん、そういう側面もあるだろう。だが、子育てというのは、とても面白い。しかも、自覚できないほど面白いのである。つい自然とのめり込んでしまうのだ。夢中になってしまうのである。だから、子育てというのは「面白さ」のレベルがとても高いということがいえる。その面白さに、人は夢中になるのだ。

その他の記事
![]() |
最新テクノロジーで身体制御するバイオ・ハッキングの可能性(高城剛) |
![]() |
都知事・小池百合子さんは希望の党敗戦と台風対応の不始末でどう責任を取るのか(やまもといちろう) |
![]() |
「お前の履歴は誰のものか」問題と越境データ(やまもといちろう) |
![]() |
大きな社会変革と技術的飽和点の第一歩はそう遠くない(高城剛) |
![]() |
自己セラピーダイエットのすすめ:酒好き、食いしん坊のスーパーメタボなアラフィフでも健康と若さを取り戻せた理由(本田雅一) |
![]() |
怒って相手から嫌われることのメリット(岩崎夏海) |
![]() |
週刊金融日記 第307号【確定申告の季節ですがこれから事業をはじめる人にアドバイス、出口戦略言及で日本円が大躍進他】(藤沢数希) |
![]() |
変化のベクトル、未来のコンパス~MIT石井裕教授インタビュー 前編(小山龍介) |
![]() |
夏至にまつわる話(高城剛) |
![]() |
日印デジタル・パートナーシップの裏にある各国の思惑を考える(高城剛) |
![]() |
なぜゲーム機だけが日本発のプラットフォーム作りに成功したのか(西田宗千佳) |
![]() |
今年は「動画ゼロレーティング」に動きアリ(西田宗千佳) |
![]() |
『赤毛のアン』原書から、アイスクリームの話(茂木健一郎) |
![]() |
自民党、まさかの派閥解消からの安倍派処分の強硬手段で政治資金ネタを有耶無耶にしてしまう(やまもといちろう) |
![]() |
「執筆ウォーキング」と「縄文式トレーニング」(高城剛) |