やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

谷村新司さんの追悼と事件関係


 谷村新司さんとのご縁は私にとっては珍しいもので、まだいまのような仕事をする前、不動産オーナー兼芸能事務所の社長をやっていた知人から「困ったことがあった」といって、ご紹介いただいたのが谷村新司さんでした。

 その案件は「私にとっては」たいした話ではなかったのですが、その後も人間関係が続いて半年に一回ぐらい会合でお目にかかるような感じでした。とにかく明るい方でしたので、ご一緒していて大変に楽しく過ごさせていただいた経験しかありません。

 最近ご体調を崩しておられたのは存じておりましたが、ちょっとこのような感じになったのは残念でなりませんです。神の御許に召された谷村さんの魂に平安があらんことを心よりお祈り申し上げます。

 谷村さんと言えばふたつ、ひとつが日中友好人士的なお立場としての谷村さんと、もうひとつはネットでもご存知、エロ親父としての谷村さんです。私が知己を頂戴する前にはすでにその方面ではご活躍だったのは、やはりアリスの最後期に中国・上海公演をされた折、その当時の上海閥大物政治家群からその文化的素養の深さを称賛される形で日中文化交流のコアなところに刺さっておられたからだと思っております。

 それでいて、谷村さんご自身はそういう生臭い外交やら政治やらの人間関係に無頓着と申しますか、あまりこだわりなく、いい人といい人の間にいる俺はいい人だぐらいのノリで気さくに関わられていたので、込み入った相談事をしても「いいよいいよ」という雰囲気で乗っかってくださることも一再ならずありました。日本側の音楽関係者の人脈も深く、ある時期女子十二楽坊の日本公演とそれにかかる宣伝費用で揉めた際、あんな感じで颯爽と出てきて何となく間に入り、どこからともなくアレが出てきてその場はあっという間にまとまった、というのは結構すごかったなと思います(その後、またすぐ揉めて独立騒動とかあった)。

 また、DJエロ親父の件は有名ですが、一方で、その方面の人脈に極めて詳しい旦那衆であり、ある種の顔役でもありました。相当に昔の話ではありますが、愛人バンク的な、いまでいう管理売春を業としてやっていた筒見待子さんの「夕暮れ族」事件は有名でした。勿論そのころ私はガキでしたが、その後もその方面への活動は続けておられ、境遇が恵まれない女性が集う系のサービスではお名前を散見し、当時のご担当からは「谷村さんがいるなら、あの近辺は安全だ」という謎の信頼を得ていたのも記憶に新しいところです。

 残念ながら、谷村新司さんが歌手として活躍されていた時期は私はまったくその方面には造詣がなく、面白おかしく話を聞かせていただいて「へぇ、そういうことなのか」と承知する程度の存在でしかありませんでしたが、あの界隈を本当の意味でお人柄の良さで勝ち取ったゆるぎない信頼で完璧に乗り切ってこられた谷村新司さんにはリスペクトしかありません。愛されたうえに、頼られた人でした。

 大変に、お疲れさまでした。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.420 谷村新司さんを悼みつつ、プラットフォーム事業者に対抗するための消費者団体のあるべき姿や骨董品売買にまつわるマネロン問題を語る回
2023年10月18日発行号 目次
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【0. 序文】谷村新司さんの追悼と事件関係
【1. インシデント1】プラットフォーム事業者の悪態と、必要とされる消費者団体の機能・役割
【2. インシデント2】「価値のないものに値札をつけて売る」骨董品とマネロン問題
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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