【対談】山本一郎×辻元清美

辻元清美女史とリベラルの復権その他で対談をしたんですが、話が噛み合いませんでした

山本:なるほど、そういうお考えでしたか……。ただ、邪推をされても仕方のない部分もあると思うんです。たとえば「なぜ、北朝鮮に行ったんですか」という疑問に対して、「いや、いろんなものを見なきゃ始まらないからだ」という答えを聞けば、確かにその通りだと思います。(苦笑)でも、そうした背景を知らない人たちからすれば、北朝鮮に寄港したこと自体が「あやしく」見えるでしょうが!

辻元:北朝鮮に行ったときのキャッチコピーは「ミラクルツアー・ピョンヤン」でした。(笑)

山本:ミラクルすぎますよ(笑)。そこだけ切り取って見るとヤバい奴大集合じゃないですか…。

辻元:(笑)。ただ、そのときは単純に「独裁国家はどんなものなのか、見にいこうよ」というスタンスだったんです。

 

リベラルの復権はあり得るのか?

山本:辻元さんのことを「あいつは在日朝鮮人だ」と言っている人たちのログを見ていくと、辻元さんのそういう体験主義的な考えを踏まえていないんですよね。

ピースボートが北朝鮮に行った話、拉致家族の問題についての発言…… そういうエピソードの断片を組み合わせていって、勝手に辻元さんの人物像をスキャンダラスに作り上げているんだと思うんです。もっとはっきり言えば、「辻元は日本に対してマイナスの影響が出ることをやらかす人物だ」というイメージで捉えている。

辻元:そうなんですか…….。

山本: でもね、実際はそういう意図ではないということであれば、辻元さんご自身が一つ一つ説明していかないといけない類の話だと思うんですよ。ご著書にも書かれていましたけど、辻元さんのご親族は反日どころか、親戚の方が太平洋戦争で国のために戦って亡くなられていたりするわけですよね。

辻元:ええ、祖父が戦争で亡くなっています。

山本:辻元さんのそういう属性にまったく触れられず、知られないまま、ただただネットでレッテルを貼られて風評だけが悪くなっていく流れは、やっぱり止めないといけないでしょう。

辻元:どうすればいいんですかねぇ

山本:今、日本でリベラルの旗を振って、まともな活動している人が少なくなってしまったわけですよ。たとえば、今の日本にあちこちにいるネトウヨというのは、幕末の攘夷運動家みたいなものです。彼らは「われわれが貧しいのは、ほかの国からプレッシャーを受けて日本人が不当に搾取されているからだ」ということを主張しているわけです。確かに日本の状況を考えると、そう思い、信じる人が増えるのは分かる。やっていることはともかく、日本のために、社会のために考えを発信したいという気持ちを持っている人たちでもあるわけです。

でも、一方で、ちゃんとしたリベラル派の人たちが「日本人という垣根を越え、みんなで肩を寄せ合って、格差や差別の少ない共同体をつくろうよ。そうして日本社会を再興していこうよ」という志と能力を持った人たちが一定数いないと、建設的な議論ができないと思うんです。

辻元:リベラルの地盤沈下は大変なことになってますね。

山本:はい。私自身の政治信条としては保守主義ですが、ちゃんとした保守の考え方とリベラルの考え方とが高いレベルで議論を重ねて、政策を吟味し、高めあう関係にしなければならない。保守主義である私はこう考える、これが平等だと思っている、リベラルの人たちはこういう社会にしなければいけないと信じている、でも現実はこうだから政治はこうでなければならない、ということを互いの立場で意見をぶつけ合って、妥協してでも一つ一つ結果を積み重ねて進歩しようとするのが民主主義のはずです。理想というか。

辻元:よくわかります。

山本:でも現実は日本社会の右と左でレッテル貼り合って互いに中傷しているわけでね。こんな体たらくで日本はいいのかと思ってしまうんです。今回の選挙で予測どおりに自民党がまた大勝すれば、憲法改正も視野に入ってくるでしょう。政権にかなりのフリーハンドが与えられる可能性が高い。

辻元:はい。危機的だと思っています。

山本:「これからの日本人はどうやって生きていけばいいのか」「経済成長が止まったあとに社会保障をどうするか」「少子高齢化で日本人が減り、少ない労働人口でどう競争力を維持していくのか」といった懸案を串刺しにして政策を語れる人が必要なのに、リベラルの側に現実的でありながら大局を語れる人がなかなかいない。民主主義に備わっているはずのチェック機能が機能しなくなっているのは問題じゃないでしょうか。だからこそ、リベラルの復権についてはきちんと考えていかないといけないんじゃないかと思っているんです。

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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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