甲野善紀
@shouseikan

対話・狭霧の彼方に--甲野善紀×田口慎也往復書簡集(16)

ピダハンとの衝撃の出会い

『ピダハン』に省みる信仰

この著者ダニエル・L・エヴァレット氏の、この告白は、人間として心打たれるものがあります。ただ、この本を読んで、深く自らを省みる宗教関係者は決して多くはないでしょう。

なぜなら、この本は近代文明に対して十分なインパクトがあるとはいえ、他人の経験を記したものであり、この本から自分の信仰を深く問い直すという事は、日常それだけ信仰と本気で向き合っているという前提が必要だからです。

ただ、本当に深い信仰を持っている人は逆に感銘を受けるのではないかと思います。それは「ピダハン」の人々の精霊に対する思いと、自らが信じる宗教の神や仏に対する感覚に共通したものを感じ取るからだと思います。深い信仰に目覚めた人にとっての神や仏は、きわめて実感があり、現に存在している親戚の人々や知人のように感じられているようですから。

しかし、何といっても驚くのはピダハン語という言語によって形成されたピダハンの人々の精神構造が、近代文明と触れ合って百年以上も経っていて、その文明の利器をある程度生活に取り入れているのに、精神は「いささかも」と言っていいほど近代文明に侵食されていない事です。この事に関しては、言語学を専門的に学ばれている田口さんの御意見を是非とも伺いたいと思いますので、よろしくお願い致します。

甲野善紀

 

※この記事は甲野善紀メールマガジン「風の先、風の跡――ある武術研究者の日々の気づき」 2012年07月16日 Vol.032 に掲載された記事を編集・再録したものです。

 

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甲野善紀
こうの・よしのり 1949年東京生まれ。武術研究家。武術を通じて「人間にとっての自然」を探求しようと、78年に松聲館道場を起こし、技と術理を研究。99年頃からは武術に限らず、さまざまなスポーツへの応用に成果を得る。介護や楽器演奏、教育などの分野からの関心も高い。著書『剣の精神誌』『古武術からの発想』、共著『身体から革命を起こす』など多数。

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