やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

思い込みと感情で政治は動く

f9e326d87748b37fa8ea82da1608c568_s-compressor

先に安倍晋三首相が訪米し、日米首脳会談を経てアメリカ議会で演説を行いました。その演説には、日米だけでなく中国その他海外からも賛否両論の内容が寄せられ、世界から関心を持たれている日米関係という意味で印象深い内容でありました。

細かい部分は、私もいくつかの媒体で論評を寄せたり、いま進めておりますフジテレビ系ネット放送「ホウドウキョク」に出演した際に、そのコンテクストやバックグラウンドについて解説もしました。しかし、何よりも興味深いことは日本において「アメリカは信頼するに足る同盟国である」という印象を国民が持っていながら、実際には「日米安全保障条約の内容や問題点について詳しく知らない」とする国民が過半に上ることです。

ホウドウキョク 『真夜中のニャーゴ』
http://www.houdoukyoku.jp/pc/

知りもしないことを聞かれ、適当に回答する国民と、その結果に右往左往する偉い人たち【コラム】
http://sirabee.com/2015/05/15/30968/

「しらべぇ」では、そういう国民について少し懐疑的な目線で記事にしてみたのですが、実際のところ政策のプロフェッショナル、専門家と官僚がその良心に基づいて国民の生命や財産を守るための活動を行うことを前提にしています。つまり、外交に限らず多くの行政分野は国民からすれば「細かいことは分からないけれど、良いようにやってくれるのであれば、その内容について承認したことにするのでまじめに取り組んで欲しい」というスタイルが一般的であります。

ということは、今回は日米関係ですが、例えば日韓関係、日中関係のように冷却化した近隣諸国との関係についても、国民が感じているものは必ずしも裏づけや実態が伴わないものもあるばかりか、かなりの部分がイメージや風評が担う部分が大きいことになります。そもそもデモクラシー(民主主義)とはそういうものなのだ、と言われればそれまでなんですが、情報化社会といわれ、高度な情報通信技術がこれだけ発展しても結局は人間の感情や思い込みで物事が差配され、右に左に事柄が動くというのは大変なことだなあとも思います。

つまりは、そういう思い込みや感情で動く部分もよく理解しながら、どのような風が吹いてもしっかりと着地できるような準備をいかにしておくのかが大事なのだ、ということでしょう。その意味では、安倍政権の今回の訪米前後の外交は日本外交史的にもうまくやったほうだと思いますし、しばらくは穏やかに日米関係が強化されていくことでアジアでの不測の事態への対処もしやすくなっていくのでしょうか。

 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路

Vol.128<不動産仲介界隈の百鬼夜行を遠くから眺める事案と、国内各キャリアの新製品がいろいろ不発だったことを真顔で観る回>

2015年5月22日発行号
目次
187A8796sm

【0. 序文】意外と国民は争点の詳細を知らない
【1. インシデント1】不動産業界「爆弾データ」の件とその後
【2. インシデント2】2015年夏モデル発表会から国内キャリアの動向を考える
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

「人間迷路」のご購読はこちらから

 

 

【月1で豪華ゲストが登場!】山本一郎主宰の経営情報グループ「漆黒と灯火」詳細はこちら!

やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

石田衣良がおすすめする一冊 『ナイルパーチの女子会』柚木麻子(石田衣良)
沖縄の地名に見る「東西南北」の不思議(高城剛)
あれ? これって完成されたウエアラブル/IoTじゃね? Parrot Zik 3(小寺信良)
ソーシャルビジネスが世界を変える――ムハマド・ユヌスが提唱する「利他的な」経済の仕組み(津田大介)
スウェーデンがキャッシュレス社会を実現した大前提としてのプライバシーレス社会(高城剛)
川端裕人×オランウータン研究者久世濃子さん<ヒトに近くて遠い生き物、「オランウータン」を追いかけて>第2回(川端裕人)
恋愛がオワコン化する時代の不幸(紀里谷和明)
天然の「巨大癒し装置」スリランカで今年もトレーニング・シーズン開始(高城剛)
なぜ『フィナンシャル・タイムズ』は売られたのか(ふるまいよしこ)
高城剛のメルマガ『高城未来研究所「Future Report」』紹介動画(高城剛)
南国の夜空を見上げながら読むアーサー・C・クラーク(高城剛)
「芸能」こそが、暗黒の時代を乗り越えるための叡智であるーー感染症と演劇の未来(武田梵声)
光がさせば影ができるのは世の常であり影を恐れる必要はない(高城剛)
「身の丈」萩生田光一文部科学相の失言が文科行政に問いかけるもの(やまもといちろう)
Appleがヒントを示したパソコンとスマホの今後(本田雅一)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ