「戦争したくない」というのは、少なくとも「論点」とはいえません。議論の基点です。しかしいまのところ、そこを共有できないまま、時間だけが無為に過ぎ去っていきます。そこに、シュプレヒコールのデジャブ感を覚えざるを得ない。
平和を願うことは大切です。しかしそれよりもずっと大切なことは、一人ひとりの人間が、深く呼吸をすることです。深い呼吸をすることによって、はじめて私たちは考えることができる。そうでなければ、平和を主張する者の叫びが、虚しく響くことになるだけです。
シュプレヒコールによって煽ることの弊害は、考えること、学ぶことが必要ないと直感する者を増やしてしまうことです。物事を短絡的に捉えることを推奨することは、本人の予想をはるかに超えた扇動となります。なぜなら扇動された者は、同時に排他的に生きる者となるからです。そしてその究極の排他が「戦争」である、と考えることもできるでしょう。
ではなぜ人はかくもたやすく扇動されるのか? それは、私たちの多くが常日頃から、大きな不満を抱えながら生きているからです。
不満を抱えているから、私たちは「ただ生きる」ということはできず、なんらかのアイデンティティを求めます。それがわかりやすいものであればあるほど、魅力的に映る。
そういう意味では、私たち大衆の一人一人が、そうした世界的なアイデンティティの矛盾の只中に足を踏み入れるしかないという、空前の時代が訪れているのかもしれません。私もまた、その時代を、深い呼吸とともに迎えたいと思います。
【ご案内】類人猿分類の新刊、9月11日発売決定!
「ガイアの夜明け」や「とくダネ!」で話題となった類人猿分類。その最新版・決定版の本を鋭意制作中です。タイトルは『類人猿分類公式マニュアル2.0 人間関係に必要な知恵はすべて類人猿に学んだ』。2015年9月11日発売です。
私は監修として関わらせていただきました。非常に良い本になると思います。よろしければぜひ!(名越康文)
『類人猿分類公式マニュアル2.0 人間関係に必要な知恵はすべて類人猿に学んだ』
http://amzn.to/1RpGnhS
書籍情報はこちらに掲載中です。
http://gorihiya.yakan-hiko.com
※類人猿分類の既刊『ゴリラの冷や汗』も好評発売中。
無料簡易診断サイト
http://yakan-hiko.com/gather/
名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)
2015年8月 17日 Vol.106目次
00【イントロダクション】シュプレヒコールのデジャブ感
01【近況】性の交差現象が起きるとき、人は癒される
02カウンセリングルーム
[Q1] 「面倒くさい」は我慢しなければいけないのか
[Q2] デモに参加するときに気をつけなければいけないこと
[Q3] ついお酒を飲みすぎてしまう
03精神科医の備忘録 Key of Life
・時間とは「壊れやすさ」のことである
04【新刊】 『自分を支える心の技法』文庫版あとがき(抜粋)
05講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】
↓メルマガ詳細・定期購読する
その他の記事
自分の健康は自分でマネージメントする時代(高城剛) | |
自民党・野田聖子さんご主人、帰化在日韓国人で元暴力団員と地裁事実認定の予後不良(やまもといちろう) | |
落ち込んで辛いときに、やってはいけないこと(名越康文) | |
週刊金融日記 第291号【SegWit2xのハードフォークでまた天から金が降ってくるのか、日経平均は1996年以来の高値にトライ他】(藤沢数希) | |
フリーランスで働くということ(本田雅一) | |
終わらない「レオパレス騒動」の着地点はどこにあるのか(やまもといちろう) | |
老舗江戸前寿司店の流儀(高城剛) | |
脱・「ボケとツッコミ的会話メソッド」の可能性を探る(岩崎夏海) | |
「自由に生きる」ためのたったひとつの条件(岩崎夏海) | |
日本人は思ったより働かない?(高城剛) | |
「負けを誰かに押し付ける」地方から見た日本社会撤退戦(やまもといちろう) | |
見捨てられる子供の安全(小寺信良) | |
「今の技術」はすぐそこにある(西田宗千佳) | |
観光バブル真っ直中の石垣島から(高城剛) | |
アフリカ旅行で改めて気付く望遠レンズの価値(高城剛) |