内田樹&平川克美のメールマガジン「大人の条件」

小商いと贈与


こんにちは。平川です。
ここんとこ、喫茶店でマスターやってる日が多いです。
珈琲がおいしい季節ですからね。
ぜひ、立ち寄ってください。

<お客が来ないなぁ>と、カウンターで惚けていると、
「こんにちは〜」と元気な声で入ってくる女性がいる。
<ただの客じゃねぇな>とお冷や片手に出迎えると、
「私、平川さんの『小商いのすすめ』を読ませていただき、
ひとりで出版社を始めたんです!」と言うではないですか。

<ああ、また、かよわき純な女性の人生を狂わしちまった>と心で呟きました。

縷々話をうかがっていると、その彼女はかよわいどころか、すごいバイタリティの辣腕編集者であることが分かり、彼女ならきっと人生の荒波に立ち向かえると、少し安心しました。

それにしても、“小商い思想”はよくよく浸透しているんですねぇ。

問題は、お金になる仕事が極端に減ってきたということです。

こういう時代をこの思想を抱えて乗り切るには、なるべく友だちを作ることです。とはいっても、急に友だちをつくるなんていうことはできませんから、日ごろからひととの付き合い方を大切にしていかなくてはならないということです。

自分の利得を最大化するみたいな、競争原理のなかにいると、こういうときに困ったことになるわけです。競争原理とは、必ず勝ち組と負け組をつくりますからね。勝ち組にいても、いつ負け組に転落するか不安ですよね。

やがて、リソースが不足して、その分だけ競争が苛烈になっていく。

そういう時代の生き残り戦略は、競争原理を止めて共生の仕組みへと切り替える以外にはありません。

喜捨と贈与がキーワードになると思います。

「いやあ、世の中、そんなに甘くなくて、仕事なんかもらえませんよ」という声も聞こえてきますが、実はこういう儲からない時代こそ、贈与の経済がうまれてくるものなんです。

豊かだから、おこぼれがくるのではないのですよ。

反対なんです。リソースが足りないから、なるべく分け合う。
そうやって、集団の生き残りを工夫する。
それが、経済の根源的な仕組みなんです。

古来、部族社会に生きてきた人間は、そういうやり方を自然だと考えていたようです。
贈与してお互いを生かしてきたんです。
贈与を受けたら、今度は、第三者に返す。
パスするという考え方です。
そうすると、贈与は終わらない。
世代を超え、広がっていく。
これは、部族的な社会が生き残っていくための
部族社会のコスモロジーです。

本題でもちょっと、そんな話に触れています。
コーヒーでもすすりながら、お読みください。

 

内田樹&平川克美メールマガジン 「大人の条件」

2015年10月20日 Vol.118 目次

★01 小商いと贈与(平川克美)
★02 小田嶋隆のグラフィカルトーク+平川克美のグラフィカルトーク「解題」
第22回<哀愁の虫愛づる男ども>+<ムシ族と小説家族>
★03 内田樹の「大人になるための本」
第47回 下村治著『日本は悪くない、悪いのはアメリカだ』
 
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