切通理作
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『木屋町DARUMA』そして初のピンク映画!榊英雄監督ロングインタビュー

シネフィルは知らん。映画でハンコを押せ!


『木屋町DARUMA』撮影現場にて。木村祐一(右)に演出する榊英雄監督
 
―― 『木屋町DARUMA』の最初の取り立てシーンの脱糞もそうですし、『オナニーシスター』の方でも、冒頭3か所セックス場面があってシャッフルさせて「飛ばして行くぜ!」という、その勢いに、榊監督が見える気がするんですけど。

 映画の冒頭部分ってたぶん、エネルギーを見せるとこでもあるじゃないですか。
それは静かなシーンであろうが、動的なシーンであろうが「俺はこれで行くぜ」みたいなとこって、通過儀礼じゃないですか。

「榊の監督作品っていうのはこういう事ですよ」「今回はこういう事です」というのが。
そういうとこはハッキリしやすいタイプかもしれませんね。

まず僕はシネフィルではないし、映画の学校行ったわけでもないし、助監督やったわけでもないので、自分で映画を見て、自主映画撮った事の体感でしか物事を測れないから。いまだにそれで映画撮ってますよね。

僕はデビューが古厩智之監督の『この窓は君のもの』(95)。そのプロデューサーが仙頭武則さん。その方の周りが、いまデビューしている監督さん達が助監督やっている時代だったのですが、ゴダールとかトリュフォーとか、そういうのを知らないのは恥ずかしいんだって言われて。

たしかに知らなかったから、恥ずかしいと思ったんですけど、見てみて色んなことを自分の中に消化していくと、映画は方法論ではないし、誰でも映画撮れるんだっていう風に、一番思ったんですよ。

俺は俺でいいよね。
だからもう「何を撮るかっていったら、俺は人間を撮る。あんたは別の意味を撮ればいい」みたいな。

でも、だから映画って面白いなって思うんですよね。主義主張っていうのをはっきりオープニングにするタイプですよね。映画として。

―― 『捨てがたき』でも舞台となる港町に主人公の大森南朋さんがやってきて、お弁当屋さんに入って、そこの女店員を舐め回すように見ると、店員の方から「のり弁」って決めつけられる。あそこでもう「入った」というか、「榊監督を見た」という気になるというか。

 うん。そういうなんか、刻印を押したいですよね。
だからこれは榊印、これは大森立嗣印、これは大友(啓史)印という意味で、たぶん映画監督って個性の塊だと思うんですけど。

特に『捨てがたき人々』は僕自身の性を出して撮り始めた感がありますね。それ以前までと違って。よそいきじゃなくて(笑)。

―― 人間をホントにむき出しの状態というか、言い訳のきかないところまで追いこんで、出していかれているのかなと。

 そうですね。デビューから3本目までの時、よく言われたんです。「面白いんだけど、ちょっと嘘くさいね、榊って」って言われる。それが嫌だったんで、じゃどういうことなんだろうってのが『捨てがたき』と『木屋町』ですね。

俺が撮りたいものはこれ……しかないわけではないんですけど、もっと色々自分が思う直情的な、感情的な直感的な、自分流のものは堂々とやろうと。カメラの移動とか、カッコいいワイドとかレンズとかっていう事はもうプロにお任せしようと。

榊組では監督はカット割りは放棄しますね。「監督、カット割りどうしますか?」って聞かれたら「いやもうずーっと見れるから最後まで見ちゃダメ?」「いや監督、これ割った方がいい」「そうですか、わかりました。こっから下、割って下さい」。

だから僕も芝居始まったらもう撮るだけっていう方が楽ですよね。

そこのコンプレックスは昔あったんですけど、全然いまはないですよね。プロが居ますから、いっぱい。

 


※以降、役者から経歴をスタートさせた榊さんが監督するきっかけとなったある女優さんの決定的な一言、俳優が映画を撮るという事、キャスティングプロヂューサーでもある木下ほうかさんはじめ烏丸せつこさん、木村祐一さんほか出演者とのエピソード、そして遠藤憲一さんと交わしたある約束……と話題が続きます。そして本記事はメルマガの記事から再構成したものです。完全版は45000字(400×110枚)あります。既に配信されている『映画の友よ』第38号でお読みくだされば幸いです。

 
公開中『木屋町DARUMA』公式サイト
http://kiyamachi-daruma.com/

榊英雄監督ピンク映画公開・上野オークラ公式サイト
http://uenookura.blog108.fc2.com/blog-entry-3236.html

『オナニーシスター たぎる肉壺』作品データ(PGウェブサイトより)
http://www2u.biglobe.ne.jp/~p-g/data/2015/151016sister.html

 

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切通理作
1964年東京都生まれ。文化批評。編集者を経て1993年『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』で著作デビュー。批評集として『お前がセカイを殺したいなら』『ある朝、セカイは死んでいた』『情緒論~セカイをそのまま見るということ』で映画、コミック、音楽、文学、社会問題とジャンルをクロスオーバーした<セカイ>三部作を成す。『宮崎駿の<世界>』でサントリー学芸賞受賞。続いて『山田洋次の〈世界〉 幻風景を追って』を刊行。「キネマ旬報」「映画秘宝」「映画芸術」等に映画・テレビドラマ評や映画人への取材記事、「文学界」「群像」等に文芸批評を執筆。「朝日新聞」「毎日新聞」「日本経済新聞」「産経新聞」「週刊朝日」「週刊文春」「中央公論」などで時評・書評・コラムを執筆。特撮・アニメについての執筆も多く「東映ヒーローMAX」「ハイパーホビー」「特撮ニュータイプ」等で執筆。『地球はウルトラマンの星』『特撮黙示録』『ぼくの命を救ってくれなかったエヴァへ』等の著書・編著もある。

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