※高城未来研究所【Future Report】Vol.335(2017年11月17日発行)より

今週は、東京にいます。
先々週、先週と滞在していた沖縄と香港は、日中30度近くまであがる日もありましたが、東京に戻るとめっきり秋模様。
手持ちの服がないことに気がつき、およそ5年ぶりにアウターを購入しました。
いまから10年ほど前までは、1シーズンに驚くほどの洋服を購入しておりましたが、その後、持ち物を徹底的に処分してから、服を滅多に買わなくなりました。
かつては、人が手にできない限定モノを入手することが、その人のアイデンティティと直結するような時代でしたが、いまや、同じ服を毎日着る人のほうが強いアイデンティティな時代へと移り変わりました。
インターネット普及以降、アイデンティティこそがモノからデジタルへと変わったように感じます。
イタリアの貴族で映画監督だったルキノ・ヴィスコンティは、1960年代から70年代にかけて、撮影現場でルイ・ヴィトンの鞄を愛用していましたが、当時はルイ・ヴィトンはまったく無名でしたので、「さすが貴族だけある。トランクの生地にすらイニシャル(偶然の一致で同じL.V)を入れてオーダーするとは」とスタッフや出演者が感嘆したという逸話があります。
同じ欧州のイタリアでも、ルイ・ヴィトンの知名度は、その程度のものにしか過ぎなかったのです。
しかし、80年代の日本で、ルイ・ヴィトンは大ブームを仕掛けることに成功し(当時はまだパリとニースの2店舗しかなかった無名ブランドでした)、瞬く間に世界のヴィトン製品の売り上げの40%近くを日本で売り上げました。
バブル経済だった80年代から00年代のおよそ20年間強で、日本で売れたヴィトン製品は1兆円以上と言われています。
この時、日本発の欧州ブランドバブルがはじまったのです。
また、並行輸入品や日本人が海外で購入したヴィトン製品の売上を加算した「日本人マーケット」が、全体に占める割合は6〜7割とも見られており、実際ルイ・ヴィトンは、日本人のためのブランドとも言えるものでした。
この日本人が購入した資金をベースに、ルイ・ヴィトンは本当のグローバル展開を進めていきます。
著名デザイナーであるトム・フォードが、「初年度の売り上げと同じ額を広告費にかける必要がある」と言い切ったように、ブランド製品の価格の大半は、広告費です。
つまり、購入者は高額を支払って、個々が広告費の負担を分担しているのが、このビジネスの中心的モデルなのです。
インターネットが普及すると、多くの情報にアクセスすることが容易になりましたので、購入の利便性が高まると同時に、ビジネスモデルを推察することが可能になります。
それゆえ、情報時代を生き抜こうとする者たちは、仕組みを理解すると同時に我に返って、メガブランドと呼ばれる一連の商品群から離れて行きました。
その後、メガブランドの出店攻勢は、日本から中国に移り、ここ数年で早くも中国から撤退しています。
生産拠点だけでなく、中国にある大型店舗を次々と閉めるメガブランド。
続いて、ファストファッションが、中国から撤退しはじめる時。
もし、ファッションが言われるようにトレンドだとしたら、それは、よくいわれる中国発の不況だけを意味しません。
この機に中国発のブランドが登場し、あっという間に世界を席巻する可能性があり、その時が欧州ブランドバブルが終焉し、時代が変わった証左なんだと思います。
今年、僕が買ったアウターは、欧州製品ですが、10年後、僕が買うアウターは、もしかしたら中国のブランドになるかもしれないな、と多くの中国人で賑わう東京のストアで考えます。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.335 2017年11月17日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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