本田雅一
@rokuzouhonda

メルマガ「本田雅一の IT・ネット直球リポート」より

アップル暗黒の時代だった90年代の思い出

※この記事は本田雅一さんのメールマガジン「本田雅一の IT・ネット直球リポート」 Vol.025(2018年7月27日)からの抜粋です。




僕は長い間、テクノロジーの世界で生きてきました。当初はエンジニアとして、そしてその後の25年はテクノロジーの世界をさまざまな角度から取材してきましたが、振り返ると(僕自身の)物事の捉え方が大きく変わってきたことを実感するようになりました。

現在の仕事を始めた当初、僕はテクノロジー関連製品を“システマチックに機能を果たすべし”と捉え、感覚的な部分……すなわちフィーリングや、もっと単純に“好き、嫌い”、あるいは“心地よい、安心する”といった部分には、あまり目を向けていませんでした。なぜなら、テクノロジーの進歩や新たな形の商品が次々に登場し、完成度を高めるまでもなく、さらに次へと進んでいく世界だったからです。

まずはちゃんと動いて、目的を達成する。それができないのであれば、感性うんぬんの前に道具として使いものにならないと考え、読者には無機質に機能性と信頼性について伝えれば良いと考えていたのでした。そんなことを思い出したのは、90年代半ば、アップルが苦難の時代を送っていたころに日本法人の広報責任者をしていた人物と久々に懐かしい話を交わしたからです。

当時、おもに企業を対象にした週刊のタブロイド版PC情報紙に寄稿していた僕は、ハードウェアのページを担当。毎週のようにアップルのニュースから日本の読者に伝えたい記事を選んで翻訳指示し、自分でも記事を書いていました。そして毎回のように広報に連絡を入れ、「海外での報道ではこうなっていますが」と、情報の確認を求め、そのたびに「日本は関係ないよ〜」「日本の事情は違うし、それ発売予定ないから」などと、そっと愚痴を呟かれていた仲だったのが、この懐かしいお相手。

当時のアップルは財務状態も製品も最悪のころで、ユーザーインターフェースは洗練されていましたが、ハードウェアもソフトウェアも品質は劣悪だったのです。どんなに格好良かろうが、どんなに使いやすかろうが、あっという間に固まって動かなくなるようでは、怖くて作業なんてできません。

当時、過度のダイエットで不健康そうな顔をしているモデルさんが問題になったりしていましたが、まさにMacはそれに近い状態だったと思います。実際に記事の中でそう書いた時も同じように愚痴を聞かされたものです。

当時の判断は今でも間違っていたとは思いませんが、その後、技術的な成熟が進んでくると、だんだんと製品に要求される最低限の機能や性能よりも、自分のユースケースにどこまで寄り沿った製品なのか、あるいはデザインや使い勝手といった部分に目がいくようになってきます。

その後、アップルが復活を遂げると、彼らの製品に注目が集まるようになったのは、自然な流れだったでしょう。僕自身、アップルに対するスタンスも変わりましたが、もっとも自分で驚いたのは、オーディオ&ビジュアル製品という、まさに“感性に訴える”領域で勝負する製品たちの評価を行うようになったことでした。

「情熱」こそが仕事を成功させる秘訣

前回のメルマガで、減量成功への道は我慢しないやり方を探すことだと書いたが、実はあらゆる事について“我慢しない”ことが有効だと思っている。加えて言うならば“大好き!”と思えることに取り組むことこそが、自分のパフォーマンスをもっとも引き出せる唯一の方法だとも思う。

そう改めて感じたのは、恵比寿にある「酒 秀治郎」という店を訪れた時のことだ。上記のアップル暗黒時代に広報を勤め、その後、米国で起業して成功した某氏夫妻と食事に出掛けたのだ。


(この続きは、本田雅一メールマガジン 「本田雅一の IT・ネット直球リポート」で)

 

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2014年よりお届けしていたメルマガ「続・モバイル通信リターンズ」 を、2017年7月にリニューアル。IT、AV、カメラなどの深い知識とユーザー体験、評論家としての画、音へのこだわりをベースに、開発の現場、経営の最前線から、ハリウッド関係者など幅広いネットワークを生かして取材。市場の今と次を読み解く本田雅一による活動レポート。

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本田雅一
PCハードウェアのトレンドから企業向けネットワーク製品、アプリケーションソフトウェア、Web関連サービスなど、テクノロジ関連の取材記事・コラムを執筆するほか、デジタルカメラ関連のコラムやインタビュー、経済誌への市場分析記事などを担当している。 AV関係では次世代光ディスク関連の動向や映像圧縮技術、製品評論をインターネット、専門誌で展開。日本で発売されているテレビ、プロジェクタ、AVアンプ、レコーダなどの主要製品は、そのほとんどを試聴している。 仕事がら映像機器やソフトを解析的に見る事が多いが、本人曰く「根っからのオーディオ機器好き」。ディスプレイは映像エンターテイメントは投写型、情報系は直視型と使い分け、SACDやDVD-Audioを愛しつつも、ポピュラー系は携帯型デジタルオーディオで楽しむなど、その場に応じて幅広くAVコンテンツを楽しんでいる。

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