※高城未来研究所【Future Report】Vol.373(2018年8月10日発行)より
今週は金沢にいます。
北陸新幹線が金沢まで延長されて以降、この街の観光ラッシュの勢いは止まりません。
いまも、あたらしいホテルが続々と建造中で、多くの人たちは「古いものとあたらしいものが交差する街」として、人口わずか40万人強の金沢へ続々と訪れています。
古いものの代表が、兼六園やひがし茶屋街だとすれば、あたらしいものの代表は、21世紀美術館なのでしょうが、ひとつの場所に古いものとあたらしいものを見事に融和させたのは、「しいのき迎賓館」だと思います。
もともと石川県庁舎だった歴史ある建物の表玄関外装はそのまま残し、建物の裏半分は、現代建築にリノベーションした古いものとあたらしいものを融和させた建造物は、「いまの金沢の象徴」だと僕は考えます。
しかし、この「いまの金沢の象徴」と僕がお話しするのは、成功例としての意ではなく、あくまでも「今後の金沢が目指す真のゴール」だと思います。
現在の金沢は、古いものとあたらしいものを、うまく融和させたと思われていますが、実際はバラバラなままである、と個人的には推察しています。
あたらしい金沢の象徴のひつともいうべき「金沢駅」は、近代建築に木製の「鼓門」を作り、世界の美しい駅100選にまでなった「古いものとあたらしいものが交差する」象徴と言われていますが、実際には、この上なく使い勝手が悪い駅です。
縦軸の「鼓門」正面導線はともかく、横軸移動は歩行者も自動車も、あまりに不便で、機能的とは言えません。
対面に渡るのに、一度駅まで戻る必要があり、もし、自動車ではじめてこの駅に訪れたなら、距離的に1分でも、コントロールが悪い信号のため、実時間は10倍近くかかると考えておかねばなりません。
また、暑い夏に駅を出て、なにか飲み物を買おうにも、コンビニはどこにもなく、再び駅舎に戻るしかありません。
周辺の駅ビル移動の雨天対応も、無いに等しいのが現状です。
つまり、駅舎のデザイン性は高くとも、旅行者の出入り口であり、金沢の街の人たちの中心的機能を持つ駅の有り様から推察されるのは、「極めてコネクティビティが悪い街」だということがわかります。
古いものは古いままで、本心ではあたらしいものとはつながろうとせず、表層だけつながっているようにみせているだけ。
「一方的」とも言える縦軸の「おもてなし」はあっても、全方位な「オープン性」が見えません。
ここに金沢の本質が見え隠れするのです。
素晴らしい飲食店が多く、個人的にも金沢は好きな場所ですが、もっと街全体に一体感が出ないものか、と訪れるたびに実感しますし、言い換えれば、まだまだ可能性を秘める街だとも思います。
第二次世界大戦中にアメリカ軍からの空襲を受けなかったことから市街地に歴史的風情が今なお残り、観光客で賑わう「幸運な街、金沢」。
戦後、空襲の被害者やその遺族が少ない地域という理由から、フランク・ロイド・ライドが正面玄関を作ったアジア一と言われた伝統ある金沢の宿屋をGHQが摂取し、しばらく保養地として栄えたのちに米軍が去ると、あっという間に経営難になり、「廃墟となった白雲楼ホテル」。
訪れていた誰かが去ると、その地の本質が浮き彫りになるのは、どの時代でも同じです。
一見、古いものとあたらしいものが融和しているように見える金沢は、いま、歴史的岐路に立っているように思える今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.373 2018年8月10日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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