高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

テクノロジーの成熟がもたらす「あたらしいバランス」

高城未来研究所【Future Report】Vol.406(2019年3月29日発行)より

今週は、仙台、東京、イスタンブール、テルアビブと移動してます。

日曜日に東京青山スパイラルホールで行いました講演会「ふたつの植物」に、まだまだ寒い日だったにも関わらず、朝から大勢の方々にお並び、ご来場いただきました。
お越しになった皆様、誠にありがとうございました。

また、わざわざお越しなったにも関わらず、会場内にお入りできなかった方々、大変申し訳ございませんでした。
近々、もう少し大きな会場を用いまして、当日関心が高かったトピックを、さらに深く掘り下げてお話しできる機会を考えたいと思っております。

さて、今年は例年に増して移動が多く、一般的な商用フライト以外にも、チャーター機やチャーターボートなどを駆使して、予定に合うように目的地に向かっています。
お目にかかる方の予定はともかく、屋外ロケには季節や時刻も大変重要で、真夏と真冬の日差しや光が違うだけでなく、真昼間と夕焼けでは、同じ場所でも別の風景を描くものです。
これを狙って、移動スケジュールを考えねばなりません。

なかでも日没から、天空に明かりがまだ残っている美しい光景を「ゴールデンアワー」や「マジックアワー」と呼びます。
この時間帯こそ、人も風景ももっとも美しく見える瞬間で、まさにシャッター時。
古くからある日本語では「たそかれ」どきと呼ばれ、「万葉集」に代表される古典文学では、薄明かりに見える男性にときめき、「誰そ彼」と言ったのが「たそがれ」、のちの「黄昏」の語源となります。

レオナルド・ディカプリオがアカデミー主演男優賞をとった映画「レヴェナントー蘇えりし者」は、一切照明を使わず、この「たそがれ」どきだけで全編を撮影し、アカデミー撮影賞も受賞しましたが、少し前まで(少なくとも十年前まで)、「たそがれ」どきに撮影をするなら、大きな照明装置が必要でした。
しかし、高精細で高感度かつ大型センサーを持つ動画カメラが登場したことにより、照明の必要は、かつてほど必要ありません。
同時にスタジオ撮影より屋外ロケーション撮影が好まれるようになり、自然光だけで撮るなら照明などの「バレ」や「見切れ」がないので、近年、映画業界では、広角レンズが多用されるようになってきました。

このように、「スタジオ」や「照明」と言った「作り物」の世界は、ハリウッド映画でさえ年々敬遠されるようになってきたのが、ここ最近の傾向です。
CGバリバリのコミックを原作にした子供向け映画が量産される一方、ロケーションで自然光だけを用いた良い作品が、年々増えています。

しかし、「天気運」も大事です。
どんなにデジタル・テクノロジーが進化しても、台風最中に、晴天を描くことは、まだまだできません。

かつて、忙しいタレントの要望に応えるため、「天気待ち」を避け、映像関係者はスタジオ撮影を好んで(強要されて)いましたが、いまでは、視聴者が意図せずとも「嘘臭さ」を感じることから、クライアントもロケーション撮影を指定する機会が増えてきました。
最近、面白いことに、プロデューサーは、監督やカメラマンの「天気運」を気にします。

かつて、コンピュータが高性能になってきた頃には、僕も含め誰もが、天気をデジタルで変えられると考えましたが、いまや、高性能コンピュータ同然のデジタルカメラをロケーションに運び、「天気待ち」をするようになりました。
やはり「本物の自然」は、作ることができません。

テクノロジーが成熟すれば、自然に近づきます。
しかし、それはテクノロジーが「あたらしい自然」を作るのではなく、その間に人が立ち、両者のいいとこ取りを行い、常に「あたらしいバランス」をしっかりと考えねばならないように思います。

花粉が飛び交う日本を脱し、早くも夏を感じる中東諸国。
今年も北半球の旅行シーズン&撮影シーズンが、はじまります。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.406 2019年3月29日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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