※高城未来研究所【Future Report】Vol.478(2020年8月14日発行)より
今週は、東京にいます。
いままで、半年ぶりに東京に戻ったことも何度かありますが、このように得も言われぬ退廃感に浸ったのははじめてで、これが世に言う「withコロナ」と呼ばれる世界なのか、まだ、実感が湧きません。
それほど変貌を感じます。
連日、新規感染者がXXX人!と街角のニュースでも見ますが、どこか遠い国で起きている大変な惨事に思えるほど、街に距離を感じています。
なにしろ大企業が連なる都心部(特にビジネス街)は、テレワークとお盆の影響もあって平日でも驚くほどガラガラで、まるで無人の街にいるような感覚さえ覚えます。
急ピッチで開発が行われている渋谷駅周辺を歩けば、「渋谷スクランブルスクエア」など駅周辺12棟の半分を持つ「渋谷の大家」東急グループが、東京のあたらしいビジネス街として開発を目論んできたオフィスの需要が急速に落ち込み、早くも入居企業の賃貸面積を減らす動きが目立ちます。
現在、渋谷オフィスビルの空室率は、東京都心部5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区)の倍近くあり、なかでも渋谷を牽引してきたスタートアップ用に設定された不動産は、他地域の三倍近い空室率まで落ち込んでいます。
これは単にテレワークへ移行しただけでなく、街の力学にとてつもない異変が起きているのを、久しぶりの東京で感じています。
つまり、新渋谷駅本格開業前に、渋谷の価値が暴落しているのです。
もともと渋谷は「地ぐらい」が高い場所ではなく、文化都市として盛り上がったのは90年代で、そこにIT企業が流入。
しかし今後、渋谷の凋落を見る限り、スタートアップ・バブルの崩壊も視野にいれなければなりません。
また、米国のライフスタイルの変化を見ると(https://econ.st/3iC8zOk)、各種チケットセールスが激減しているのは予想通りですが、NETFLIXの一時的な集客増も落ち着き、今後、エンターテイメント業界がさらなる苦境になることが予測できます。
こちらも渋谷周辺に拠点を構える企業が多いことから、今後渋谷は、相当「気」が悪くなることが考えられます。
テレワークに限らず、オフィスや働き方の概念は大きく変わり、渋谷だけでなく都心のオフィスビル全般の価値は、当面急落するでしょう。
そこで、早くも暗躍しはじめたのが、北海道や沖縄の物件を買い漁る外資ファンドです。
現在、同じことが東京中心部でも起きています。
証券化したビルの利回りが急落した物件の現金化や転売が目立ち、なかには銀行が中心となって、外資ファンドへの売却が水面化で多数蠢いています。
外資とひとくくりにお話ししていますが、オフショアにペーパーカンパニーを構える秘匿集団のため、実態は、誰にもわかりません。
近隣諸国の政府系企業かもしれませんし、実は表に出たくない日本人なのかもしれません。
どちらにしろ、長年に渡る日本の問題だった東京一極集中は、急速に崩れようとしています。
その後に起きることは、僕が長年提唱し、いつか夢見たストリートの開放かもしれません。
例えば、路上に面する飲食店に、新型コロナウィルス感染拡大対策の意を含んで、路上売上げ比率に準じた税制を用いストリートを解放し、人々の「場」に戻すこと。
本来、ストリートは移動するだけの「機能」だけではなく、人々が交流し、また、なにかを表現する「場」であったはずです。
欧州では当たり前な光景が、そのうち東京中心部でも頻繁に見られるようになるのではないか、と非現実的な暑さのなか夢想する今週の東京です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.478 2020年8月14日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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