高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

コロナが起こす先進国と発展途上国の逆転

高城未来研究所【Future Report】Vol.531(2021年8月20日発行)より

今週は、タンザニアのダルエスサラーム、エチオピアのアディスアベバ、韓国の仁川と乗り継いで、成田のホテルで隔離中です。

驚くことにアフリカの空港はどこもコロナ禍でも大混雑だったのに対し、東アジアの空港は、まったく人がいない無人空港ばかりで、ある種の「コロナ後の世界」を垣間見たように感じました。
いわば、感染症はそばにあるのが当たり前のなか、普通に暮らす世界がアフリカにはありました。
皆さん、新型コロナウィルスよりマラリアなどのほうが怖いと、口を揃えておっしゃいます。

さて現在、出発した国によっても異なるところですが、帰国便が成田のゲートに着いてから、およそ10箇所を超えるチェックポイントを誓約書含む大量の書類を持って巡り、PCR検査(唾液)の結果を待って最後に指定されたホテルに到着するまで、3〜4時間見越さなければなりません。
この間、空港内で働く人たちに「お話し」という名の取材を行いまして、たっぷり現状をお聞きして参りましたが、市中感染が記録的に広がる現在の状況に反し、空港は受け入れ人数を増やして緩和し、チェックポイントを減らす方向に動いているとのことでした。
今後、パラリンピック終了と共に水際が一気に緩むと思われます。
ラムダ株蔓延も時間の問題となるでしょう。

また、空港そばでのホテル隔離は(東横INNでした)、昨年お伝えしましたように、10日間ホテルの部屋から一歩も出ない予行演習を行なったこともありまして、準備次第では快適だと改めて実感しました。
もし、このような機会があるならば、個人的には体を動かすトレーニング・チューブなどを持参することをオススメします。

ホテルの部屋に入ったら一歩も外に出ることはできませんが、実は交渉次第でコンビニへ代理で買い物に行ってもらったり、外から差し入れを受け取れます。
これは一種の裏技なのかもしれませんが、空港に誰かに迎えに来てもらい、バスに乗り込む一瞬、隔離中に必要な荷物の受け取りや渡航荷物を交換することも可能です。
特に隔離中の弁当が酷く、こちらで体調が悪くなってしまうのではないかと思うほどの出来で、アレルギーを聞かれてうっかり「小麦を控えています」などチェックイン時に話してしまうと「ハラルフード」が配膳されるのですが(なぜ?)、結局、パンなどが山盛りで届きます。
ですので隔離が予想されるなら、日数分の食事やサプリメントを独自に手配する準備が大切です。

(冷え切った)弁当の配給は、館内一斉アナウンスと共にもたらされ、なんとも言えないプチ社会主義感というか、未来を感じるSF映画のような感覚がありました。
改めてタルコフスキーの傑作映画「惑星ソラリス」を見たのは、面白い経験でした。

そして隔離三日めの朝食前、再びPCR検査(唾液)を行なって数時間後の検査結果が陰性であれば、公共交通機関を使わず、自宅や自分で予約したホテルへ移動可能となります。

移動後、アプリにあたらしい滞在先の位置情報を登録し、当面GPSで所在確認が行われます。
その後、11日間は「基本的に」外出を自粛する必要がありますが、人混みを避ければ飲食物の買い物等、必要最低限の外出は可能です。
この間、日々アプリに書き込む健康チェック(11時から14時の間)と、不定期にAI、もしくはオペレーターからかかってくる電話に応答しなければなりません。

このような煩わしさも大変ですが(空港内の頻雑さは入管と厚労省の縦割り行政のため)、成田の指定ホテルにチェックインする際、容態が急変し、救急車で運ばれる人を見かけました。
新型コロナウィルス、なかでも東アジア人は抗体を持っていない変異株を甘くみない方が良いと思います。

今回、僕が辿ったルートは、日本入国前に行われるPCR検査で陰性だった人に限り、もし、症状なくても陽性であれば、まったく違う展開になってしまったと思われます。
ちなみに、指定される隔離ホテルとその間の飲食は無料です。

一方、タンザニアに入国する際は、空港内で5分で終わる抗原検査(鼻ぬぐい)だけが行われ、あとは事前にWEBで症状を記入するだけでした。

このような状況がいつまで続くのかと言われ明確に答えられる人は世界にひとりもいないのでしょうが、北半球に冬はこれから訪れます。

アフリカの日常である感染症とともに暮らす世界。
この点では、先進国と発展途上国の逆転が起きているのではないか、と隔離中のホテルで考える今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.531 2021年8月20日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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