高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

グローバル化にぶれないアフリカのエッジの象徴としてのエチオピア時間

高城未来研究所【Future Report】Vol.331(2017年10月20日発行)より


今週は、エチオピアのジンカ村にいます。

エチオピアには「カリオモン」と呼ばれるコーヒーセレモニーがありまして、これは日本や台湾の茶道に通じる「茶の儀式」として知られています。
面白いのは、コーヒーを味わう前に、部屋中に炊かれたお香をたっぷり楽しみ、その香りとともにコーヒーをすする、他では体験できない空間性だと思います。
豆と香木のマッチングがセンスの見せ所のようで、おかわりを頼むと、わざわざお香を変える店もあるほどです。
日本では楽しめないお香とエチオピアンコーヒーに、この数日すっかりハマりまして、良さそうな珈琲処を見つけるたびに入っています。
その上、辺境の地に行けば行くほど、コーヒーはどこもメチャ美味なんですよ!

さて、日本とエチオピアには6時間ほど時差があり、東京が午後6時でビジネスマンが帰路に着く頃、エチオピアは正午のランチタイムになります。
ですが、ふとカフェにある時計を見ると、6時を指しているのです。

アフリカで時計が壊れているのは珍しくありませんが、どのカフェに言っても同じような時間を指しています。
そこで、カフェで働く人に現地時間を尋ねると、「ローカルタイムなら6時」と、言うのです。

実は、エチオピアには「エチオピア時間」なるものが存在しまして、この国では、朝6時が0時で、正午が6時となり、夕方の6時は0時となります。

その上、本年は2009年で、新年は9月11日からはじまりました。
ちなみに13月もあります!
もう大混乱(笑)。

都市部では、ローカルタイム(=エチオピア時間)とヨーロピアンタイム(=時差ではなく、僕らが使っている時間や暦)やファレンジタイム(外国人の意でヨーロピアンタイムと同じ)を場面によって使い分けているようですが、空港もない地方の町や村に行くと、ローカルタイム(=エチオピア時間)で時間を指す人たちがほとんどです。

しかし、旅行者の混乱はこれだけではありません。

空港に設置してあるテレビモニターの時計が正確でなく、これがローカルタイムなのかウエスタンタイムなのか、そのどちらかにあわせようとして狂ってしまったのか、定かではありません。
さらに、搭乗ゲートも間違ったナンバーが頻繁に表示されるのです。

もう、だんだん楽しくなってきました!

首都でも国内線空港内は、現在時間もわからず、ゲートもわからない欧州からの旅行者が汗だくで走っており、常に大混乱。
僕らが、いかに数字を基準に物事を組み立てているのか、よく理解できるところです。

このジンカ村に、いよいよ数ヶ月後に空港がオープンします。
2009年開業とのことで、その過去の数字はここでは未来を意味し、ああ、もうなんだかわかりませんね。
2000年を祝うミレニアムイヤーは、欧州でいうところの2008年に開催され大変賑わったそうですが、その際なにも知らずに訪れた旅行者は、きっとタイムスリップした感覚に陥ったことでしょう。
開港にあたって、海外からの観光客の混乱は必至でしょうが、エチオピアの人々にとっては、混乱そのものが日常です。

ジンカは、いまはまだなにもない簡素な村ですが、10年もすれば、ここにも世界的なチェーン店が開業しているかもしれません。
ただ、「エチオピア時間」が、グローバル化によって変わることは当面ないでしょう。

アフリカのエッジは、もう少し楽しめそうです。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.331 2017年10月20日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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