高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

気候が不動産価格に反映される理由

高城未来研究所【Future Report】Vol.578(7月15日)より

今週も、ロサンゼルスにいます。

南カリフォルニアの気候は地中海性気候に区分され、この時期は日々、素晴らしい気候に恵まれています。
人間の気分や精神状態に気候が影響することは言うまでもありませんが、近年は不動産価格にも反映されるようになってきたことは、あまり知られていません。
毎年ロサンゼルスの気候は、5月から10月までが最低気温18度前後、最高気温28度前後と快適な日々が続きますが、同じカリフォルニアでもサンフランシスコは緯度と海流の関係からロサンゼルスより6度ほど低く、5月から10月まで最低気温12度前後、最高気温21度前後とそこまで夏を体感できません。

また、ロサンゼルスと言っても広大で、場所によって天気も違い、交通事情が悪いことから海岸沿いのサンタモニカから気温が高いダウンタウンへ行くのに1時間かかり、広大ゆえ目的地が点在していたら午前ひとつ、午後ひとつの用事を終えれば、もうサンセット。
つまり、曇天の午前中に溜まった電話料金をサンタモニカへ支払いに行き、ランチを挟んで、快晴で暑い午後にシルバーレイクのオーガニック・スーパーで買い物をするだけで1日終わってしまうのです。

それゆえ交通渋滞が年々悪化し、1日あたりの平均渋滞時間が81分と「全米でもっとも酷い渋滞都市」として悪名を馳せています。
いまから30年ほど前、僕がロサンゼルスに住んでいた頃と比べても遥かに渋滞は酷く、解決する見込みはありません。
場所にもよるところですが、ちょっとランチに出かけて、戻るだけで4時間かかります、、、。

実は以前のロサンゼルスは、電車による交通網が全米一整った街でした。
しかし、1940年代から50年代にかけ自動車会社と石油会社のロビー活動(と裏金)に屈した為政者が次々と電鉄網を廃線にし、車社会の街へと変えていきます。
これが、今日まで続くのです。

こうして、大渋滞はロサンゼルス名物になり、光化学スモッグの原因となる大気汚染物質オゾンの大気中濃度が最も高い全米の都市になってしまいました。
また、頻繁にある山火事が起きると、中国とインドを上回る大気汚染が観測され、この時期でも午前中はスモーキーな日々が目立ちます。

このようなことからフレッシュな海風が吹き、常にスモッグのないビーチから3マイル(約5キロ)までの地価が高騰しているのです。
あわせてLAカルチャー発信源も、かつてのメルローズやロバートソンから海沿いのアボットキニーなどへ移り変わりました。

ロサンゼルスで海の近くに住みたいと思うのは、単に景色の良さだけでなく、実は健康被害から身を守るための手段なんだな、とつくづく実感する今週です。
同行したスタッフは、青い空の下でずっと咳が止まりません、、、。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.578 7月15日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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