【対談】やまもといちろう×茂木健一郎

小保方問題、ネトウヨとの絡み方などなどについて茂木健一郎さんに直接ツッコミを入れてみた

小保方問題、ネトウヨとの絡み方……茂木健一郎さんはなぜあれほど炎上するのか? やまもといちろうさんが茂木健一郎さんに直接ツッコミを入れるスペシャル対談の第1回!

※第2回以降はやまもといちろうさんのメルマガ「人間迷路」で連載されます。ご興味のある方は<やまもといちろうメルマガ「人間迷路」>をご覧ください!

写真:安部俊太郎

 

ネット論者は空気読みすぎ!

山本:いきなりですけど、茂木さんってものすごくウェブの世界から誤解されていて、私から見ると、とても損をしていると思うんです。例えば、小保方さんの博士論文に対して早稲田大学が調査を行った結果、「不正はあったものの博士号の取り消しには該当しない」と決定したことについて、茂木さんは「きちんと調べてそうなら、いいんじゃないか。なぜ取り消さない、といきり立つのは、非論理なファシズム」とツイートされていましたよね。あれって、理論的には本当に正しい側面もあると思うんですよ。でも、あのつぶやきだけ見ると、まるで茂木さんが早稲田の肩を持って、問題を有耶無耶にしようとする”体制側”によっているかのようにも見える。

茂木さんが誤解されてしまうのは、こうしたほんのちょっとした言葉の足りなさではないかと思うんです。これはわざとやられているんですか。

 

187A8989sm茂木:うーん、僕はただプリンシプル(基本原則)を書いているだけのつもりなんですけどね。日本の言論スペースって、みんなすごく空気を読むのがうまいんですよね。誰も彼もが空気に沿った発言をする。

今回の小保方さん学位問題にしても、池田信夫さんがブログに「早稲田大学が小保方氏の博士号を取り消さなかった処分については、茂木健一郎氏以外のすべての大学関係者が批判しているが……」みたいなことを書かれて「ええ! 俺以外みんな批判しているんだ」と驚いたんです。まあ、池田さんもすべての大学関係者に意見を聞いたわけじゃないだろうけど。でも、確かに今回の小保方さんの学位の問題について、ほとんどの大学関係者は早稲田大学を批判していた。

僕に言わせれば、その構造がすごく不思議なんですよ。いろんな意見の人がいていいはずなのに、しかも大学のような本来であればもっとも自由な発言が許される場所にいる人たちが、付和雷同というか、世間の空気に沿った同じ意見を述べている。これはどう考えてもおかしいですよ。

確か山本さんも早稲田の対応については「あれはダメだ」って書いてましたよね。

 

山本:彼女にはいわゆる「サークルクラッシャー」的な面があったと思うんですよ。自分のポジションを作るためにいろんな男性の側につく。それで実際に、ハーバードに留学できたり、研究所で職を得ることができたりしたわけです。彼女は自分の女性性を武器にして、上にのしあがっていった部分があった。これは研究者のキャリアの作り方としてはいかがなものかと。

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茂木:小保方さんのキャリアに関しては、僕はそれほど知らないんですよ。興味もない。ただ、大学が一つの結論を出した以上、その結論は尊重しようよというだけの話です。それに、小保方さんがしたとされるキャリア形成の仕方が、日本の研究職だけに見られる特殊な現象かと言えば、そんなことはないですよね。世界中のありとあらゆる組織で起きている話です。それに男が特定の女に対してひいきして便宜を図るだけでなくて、女が特定の男に対してする場合もあるし、男が男に対してする場合もある。もちろん女が女に対してする場合もある。山本さんは、そうした行為を批判しているわけですよね?

 

山本:「どちらかというと望ましくない」と考えています。彼女が科学者として本当に実績があって、その上でちょっとやらかしたということであれば、「まあ、そういうこともあるのかな」とも思いますけれども、今回の場合は完全に捏造という結論が出ておりますし、科学者としての実績もゼロですから、諸所への影響も考えればさすがに問題だと思っています。

 

茂木:うーん、そこは山本さんと意見が違うところだな。僕は基本的にアナーキーなので、実は博士号も学歴もいらないと思ってるんですよ。もっと言えば、実績だっていらない。だって実績って、過去の論文の数とかそういうことでしょう。本来、ある仕事について評価をするのに、最終的に判断材料にするべきなのは「その人が今、何をやっているか」だけだと思うんですよ。

それで、彼女は科学者なんだから、STAP細胞について研究していて、それが本当にあれば素晴らしいし、やはり無かったということであれば、「無かったんだ」というだけのことだと思うんです。何だか小保方さんを批判している人って、すごく定型的な批判をするじゃないですか。

 

山本:「不適切な方法で卒業している」とか、「自分はこんなに苦労しているのにあいつはD論もまともにやらないで博士号を取っている」とかですよね。ざっくり言うと、従来のフレームワークで学術研究をやってきた人からすると、彼女はフレームからはずれすぎていて、異物なんだと思います。

 

茂木:僕は「はずれている」こと自体はおおいに結構だと思う。むしろ「はずれている」ことを許容できないことが問題だと思うんですよ。

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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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