岩崎夏海
@huckleberry2008

岩崎夏海の競争考(その24)

ゆとり世代がブラック企業を育んだ

※「競争考」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!

岩崎夏海の競争考(その24)ゆとり世代がブラック企業を育んだ

ゆとり世代には辛抱が足りない

 

ゆとり世代は、2000年代の半ばから社会に出始めたが、なかなか適応できなかった。彼らはいわゆる「失われた20年」――つまりずっと不況の中で生きてきた。おかげで大変な就職難で、就活にはずいぶんと苦労をさせられた。そのため、そうして苦労して入った会社には石にかじりついてでも残りそうなものだった。しかし実態は違った。そうやって苦労して入った会社であるにもかかわらず、すぐに辞めていった。理由はさまざまあろうが、一番は「彼らの辛抱が足りないこと」だった。

なぜ辛抱が足りないか? 理由は簡単で、それまで「辛抱させられたこと」がなかったからだ。そういう訓練を積めていなかったのだ。よく「競争をしなかったこと」がゆとり世代の最も大きな問題とされている。運動会の徒競走で、手をつないで一斉にゴールしたのがその象徴で、この連載でも幾度となくそのことを取りあげた。しかしそれと同じくらい大きな問題がもう一つあって、それは先述した「辛抱させられた経験がない」ということだ。彼らは「我慢」というものを知らないのだ。

ゆとり教育まっただ中の90年代後半、小学校において大きな問題となったのは「学級崩壊」だった。「学級崩壊」とは、文字通りクラスが崩壊することだ。どう崩壊するかというと、多くの子供がめいめい勝手なことをするのはもちろん、座っていることもできなくて、立ち歩いたり、ひどいときには教室から出ていったりしてしまう。ゆとり教育の最中では、文科省や教育委員会の指導で、教師はこれらを注意してはいけなかった。子供に黙っていることを強要したり、座っていることを強いたりするのは間違いだとされていたのである。

そのためこのとき、子供たちの中に決定的な観念が植えつけられた。それは、「嫌なことはしなくてもいい」というものだ。もっといえば、「嫌なことは我慢するべきではない」という考え方だ。こうした考え方が、彼らにとっての重要な価値観として根づくのだが、それが後々、大きな問題を引き起こす。

 

1 2
岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。

その他の記事

“B面”にうごめく未知の可能性が政治も社会も大きく変える(高城剛)
「家族とはなんだって、全部背負う事ないんじゃない?」 〜子育てに苦しんだ人は必見! 映画『沈没家族 劇場版』(切通理作)
Appleがヒントを示したパソコンとスマホの今後(本田雅一)
職業、占い師?(鏡リュウジ)
Netflix訪問で考えた「社内風土」と「働き方」(西田宗千佳)
『声の文化と文字の文化』ウォルター・オング著(森田真生)
VRコンテンツをサポートするAdobeの戦略(小寺信良)
エッセンシャル・マネジメント(本質行動学)とは何か(西條剛央)
なぜ若者に奴隷根性が植えつけられたか?(後編)(岩崎夏海)
「骨伝導」のレベルが違う、「TREKZ AIR」を試す(小寺信良)
この冬は「ヒートショック」に注意(小寺信良)
部屋を活かせば人生が変わる! 部屋が片付けられない人の5つの罠(岩崎夏海)
萌えセックス描写溢れる秋葉原をどうするべきか(やまもといちろう)
ビッグマック指数から解き明かす「日本の秘密」(高城剛)
「歳を取ると政治家が馬鹿に見える」はおそらく事実(やまもといちろう)
岩崎夏海のメールマガジン
「ハックルベリーに会いに行く」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 基本的に平日毎日

ページのトップへ