壮大な人気レースに巻き込まれる怖さ

「ブロマガ」はプラットフォームになり得るのか

 

メルマガの立ち位置

さて、メルマガというシステムをここまで安定的なものに仕上げた功績は、やはりまぐまぐの力、というか継続性が大きい。ただまぐまぐの存在意義とは、ある意味自費出版プラットフォーム的なものであった。アマチュアが自分の好きなテーマで、好きなだけ配信できる。それならブログとかでいいんじゃないの? と言われるかもしれないが、強制的に送りつける点で能動的である。

今、メルマガがひとつのブームになっているわけだが、そのきっかけを作ったのは堀江貴文氏だろう。著名人の発言をマネタイズするシステムとして、ブログではなく、もっと古いメルマガに目を付けたのは、さすがのセンスと言わざるを得ない。メルマガは課金システムとしてもこなれており、しかもメールベースなので、無断転載が発生しにくい。また転載されたものを見つけるのも簡単だ。

一方で、ブロマガ立ち上げのニュースを見て、なんだか座りの悪さを感じている人も少なくない。これはブロマガに関する違和感をTwitterで語った西田宗千佳氏(@mnishi41)に対して、ジャーナリストの本田雅一氏(@rokuzouhonda)が言った「最初から上の方にいる人、ごく一部の運のいい人以外にとって、それは蜘蛛の糸でしかないからだと思う」という発言が、実に的を射ている。

 

・メルマガは持続的なシステムとなりうるか? (togetter)
http://togetter.com/li/359312

 

現時点のメルマガというプラットフォームは、古き良きまぐまぐ時代のものではなくなったことは確かで、まぐまぐ自身もそこで苦しんでいる。古いシステムながら、思考や論でメシを食う人のアフィリエイトモデルとして、ようやく機能し始めたところなのだ。僕もそこの末席にいるわけである。

しかしブロマガ発表の記事から伝わってくるのは、もうそれは誰にでもチャンスがあるようなものではなく、すでにテレビ出演レベルで名のある人でなければ成立し得ない課金モデルになったかのような感覚だ。

それが書籍とも違うのは、それがダイレクトに発信者個人の魅力というところで繋がっているということである。逆に言えば、そこだけでしか繋がっていないが故に、危うさを感じてしまう。うっかりすると、壮大な人気レースに巻き込まれる怖さがある。

売れ筋のものしか置かないプラットフォームは、社会に定着できない。ニッチなニーズにも答えられる懐を持っているからこそ、人は集まってくる。マスにしか必要とされないものしか置かれないのであれば、それは駅ナカの本屋だったり、TSUTAYAのブックコーナーと大差ない。これらは特定の環境や条件の中でのみ成立できるもので、自律したプラットフォームとは言えない。

このブロマガの人選が「目利き」の結果だ、と言われたら返す言葉もない。ブロマガにはメジャー商品がずらりと揃っているが、ニッチなニーズに応えるというような人選が、どうもないような気がする。細々ながらメルマガを毎週出している身からすれば、ブロマガはメルマガがようやくここまで積み上げてきたものを、いっぺんにぶっ壊してしまうのではないかという気がする。

ありゃ古い、こっちに新しくてピカピカのプラットフォームを作るよ、という話であれば、ブロマガはTSUTAYAや郊外のイオンのようなプラットフォームということになるだろう。残念ながら僕は、淘汰される商店街の小さな店舗に過ぎない。

初期ローンチの人々で日銭を確保して、それからニッチなニーズの住処も確保するよ、というのであればまあ話はわかるのだが、初期ラインナップのセンスからは、どうもそんな様子が感じられない。ブロマガが今後プラットフォーム足りうるのかは、第2弾以降の執筆ラインナップで、ある程度判断できるのではないかと思う。

 

小寺信良の『金曜ランチボックス』Vol.038、コラム「現象試考」より」

 

1 2 3 4

その他の記事

北朝鮮危機の背後にある金正恩の怯えとアメリカのメッセージを読み解く(小川和久)
違憲PTAは変えられるか(小寺信良)
プログラミング言語「Python」が面白い(家入一真)
2016年米国大統領選候補、スコット・ウォーカー氏が思い描く「強いアメリカ」像(高城剛)
この星に生きるすべての人が正解のない世界を彷徨う時代の到来(高城剛)
孫正義さん、周りに人がいなくなって衰えたなあと思う件(やまもといちろう)
「魔術」をアカデミックにひもとく ! ? 中世アラビア禁断の魔術書『ピカトリクス』の魅力(鏡リュウジ)
レジームの反撃を受けるベンチャー界隈と生産性の今後(やまもといちろう)
起業家は思想家でありアーティストである(家入一真)
次々回衆議院選挙10増10減の恐怖と有力政治家国替え大作戦の今後(やまもといちろう)
「小池百合子の野望」と都民ファーストの会国政進出の(まあまあ)衝撃(やまもといちろう)
ひとりぼっちの時間(ソロタイム)のススメ(名越康文)
ショートショート「金曜夜、彼女のジョブ」(石田衣良)
2017年、バブルの時代に(やまもといちろう)
津田大介×石田衣良 対談<前編>:メルマガは「アナログ」なメディアである(津田大介)

ページのトップへ