現実をきちんと「見る」ことが難しい今こそお薦めしたい本

『ご依頼の件』星新一著

読書の原点

子供の頃に星新一のショートショートにお世話になったという人は、ずいぶん多いのではないかと思います。典型的なじっとしていられない子供だった自分にとっても、星新一ははじめて本というものに没頭させてくれた読書の原点でした。

彼の読者だった者なら誰しも、記憶に焼き付いて離れない“特別なお話”というのが一つはあると思いますが、自分の場合、特に本書に収録されている『夜の会話』がそれでした。内容は、一見するとある平凡な男のUFOそして宇宙人との遭遇を描いた軽いSFものという風なのですが、その実「現実はどうやって作る(作られる)のか?」「そもそも人がなにかを見るということとはどういうことなのか?」といった、唯識論的なテーマを扱ったお話になっているんです。

ここのところ、ますます時勢の変化が激しくなり、「現実」をきちんと「見る」ということが難しくなってきたという気がしています。そうした状況のなか、改めて“見通し”というもののありようを問う意味でも、この場をかり先のお話を紹介したいと思います。

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