前回のメルマガを発行した直後から、結構な反響を頂戴しましたアーミテージ=ナイ報告書についての解説記事なんですが、まあもう内容を知りたいという方は原文を読んでいただくのが一番早いと思うのです。
「英語だから分からない」というのは、まあ致し方ない部分かと思いますが……。でも、プリントアウトして、辞書片手にじっくり読まれるのも知力の鍛錬という意味では相応しいものだと思いますので、敢えて重要部分を引用して解説を重ねるというようなことはしないほうがいいかなと。
URLも再掲しますけれども。
http://csis.org/files/publication/120810_Armitage_USJapanAlliance_Web.pdf
日本人は日本をどうしたいのか?
ただ、エッセンスとして重要な部分でいいますと、日本人が、日本の国力をどう評価し、その日本が他国と関わるにあたってどのような態度を取っていくべきなのか、という点で極めて明確なPlan A、Plan Bが内包されているんだ、ということを知っていただきたいのです。
細やかな提言部分は、まあ正直どうでもいいのです。問題は、日本人が日本をどうしたいのかの意志を、同盟国であるアメリカに見せていない、あるいは充分ではない、という点だろうと思います。
p16の"Recommendations for Japan"、日本へのお奨めの中で(まあいまさら炭素25%カットとかに言及すんなとは思うけれど)、"In a new roles and missions review, Japan should expand the scope of her responsibilities to include the defense of Japan and defense with the United States in regional contingencies."、すなわち日本の役割に対する再認識、再定義というものを強く迫っている部分が象徴的です。
この議論をより深めていくならば、日本の立場は(a)日本の国力をいまなお大国列強の中にあると捉え、国際的な責務に対して前向きに取り組んでいくか、(b)日本の国力はピークを超えたので、より限定的で、抑制的な立場を取るか、という二択を迫られています。そして、どちらかというといまの日本での雰囲気、空気でいうと、衰退を受け入れる(b)の論調がやはり強い。
しかし、日米同盟のアメリカ側からすれば、明確に日本に対して「大国としての意識を持ち、パートナーでない限りは日米同盟は維持できなくなる」と言われているわけであります。アジアでのパートナーシップの強化はアメリカにとっても国益の一部ではあるけれども、日本が自信を失っていてはアメリカにとって足を引っ張る存在になりかねないとも思われているということです。
そして、日米同盟は”漂流”、要するに近い将来に再定義を求められることは日本からもアメリカからも出るだろうということで、例えば日本にとっては沖縄在日米軍の問題然りシーレーン防衛としての尖閣諸島問題然り、武器輸出問題の緩和然り(これは成ったが)、中長期的には北朝鮮の核保有に引き摺られる形での日本の核武装化の容認といった、より長い目線での日米関係の構築と、アジアでの役割の規定が必要になってくるだろうということでもあります。

その他の記事
![]() |
ドイツは信用できるのか(やまもといちろう) |
![]() |
言葉と、ある相続(やまもといちろう) |
![]() |
低価格なウェアラブルモニター「Vufine」(西田宗千佳) |
![]() |
ゆたぼん氏の「不登校宣言」と過熱する中学お受験との間にある、ぬるぬるしたもの(やまもといちろう) |
![]() |
可視化されているネットでの珍説や陰謀論に対するエトセトラ(やまもといちろう) |
![]() |
ひとりぼっちの時間(ソロタイム)のススメ(名越康文) |
![]() |
トレンドマイクロ社はどうなってしまったのか?(やまもといちろう) |
![]() |
夜間飛行が卓球DVDを出すまでの一部始終(第1回)(夜間飛行編集部) |
![]() |
人間の運命は完璧に決まっていて、同時に完璧に自由である(甲野善紀) |
![]() |
週刊金融日記 第265号 <日本社会で多夫一妻制が急激に進行していた 他>(藤沢数希) |
![]() |
中国バブルと山口組分裂の類似性(本田雅一) |
![]() |
依存癖を断ち切る方法(高城剛) |
![]() |
パニック的なコロナウイルス騒動が今後社会にもたらすもの(やまもといちろう) |
![]() |
「東大卒ですが職場の明治卒に勝てる気がしません」(城繁幸) |
![]() |
カメラ・オブスクラの誕生からミラーレスデジタルまでカメラの歴史を振り返る(高城剛) |