時間をかけて腹に落としていくしかない
ただ、老舗や名家と言われる実業の世界では、親族間の争いが起きやすいのも事実であります。株の分配や遺産を巡る相続の争いというのは、金が目の前に詰まれたときに豹変してしまう人間の弱さを突きつけられる思いがします。
いま、まさに貴殿が悩み、苦しんでいる状態と言うのは、文字通り貴殿のお父様の考えが正しかったという可能性を示唆するものです。つまり、お父様はそういうことで飯が喉を通らないほど思い悩んでしまう貴殿に対して、仕事を引っ張り、組織を率いて人の上に立つ器量を感じなかったのかもしれません。
もしも、継ぐべき会社などなくなっても独りで俺は喰っていけるというような自負があったならば思い悩むことなどほとんどないでしょうし、また弟が上に居ても俺はここで仕事ができれば満足だとなれば唯々諾々と継ぐ弟さんのため家業のため部下のために働くこともできるのです。ただ、貴殿はまだその割り切りができない。俺が社長を継ぐはずだと強く思っていたからこそ、弟さんに継がせるというお父様の決断にショックを受けたのではないでしょうか。
私が自分の経験や考えを元に、貴殿に「受け入れましょう」というのは簡単です。でも、貴殿は納得できないだろうと思います。もう少し、時間をかけて腹に落としていくしか方法はないんだろうと感じますので、くれぐれも自暴自棄になったりせず、自分の人生は自分で切り拓くのだという、普通に生きている人であれば普通に覚悟をすることを普通に考えて行動されるのがよろしかろうかと思います。
私も親父から事業を継ぐことは結構な苦労を伴いましたが、二桁億のマイナスからスタートしたことと比べれば、貴殿の立場は相当恵まれていると思いますよ。もし生まれ変わるならば、貴殿のようなポジションにいたかったと感じるぐらいの話です。
もっと広く世間を見て、自分自身の足で生きていく感覚を持ちながら前を向いて生きていくことをお奨めします。
<やまもといちろうメルマガ『人間迷路』Vol.24、「迷子問答」より>
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