津田大介
@tsuda

『メディアの現場』特別号外より

「政治メディア」はコンテンツかプラットフォームか

※この特別号外は、メルマガスタンド「夜間飛行」による企画・制作で作られたものです。夜間飛行を通じて購読をしていただいている読者の方のみへの配信となります。今後も不定期で配信していく予定です。よろしくお願いします。

<聞き手>
井之上達矢(株式会社夜間飛行代表取締役)

10月分の『メディアの現場』夜間飛行限定号外は、前半と後半の2つのコンテンツで構成されています。前半は津田さんが準備を進めている「政治メディア」のコンセプトに沿った形での「コンテンツorプラットフォーム論」。そして、後半はメルマガの最先端をゆく津田大介さんによるメルマガコンサルティングです。すでにメルマガを発行している人、これからメルマガを発行したいと考えている人、必読です。

 

絶対にやりたい4つのこと

井之上:先日、東浩紀さんがツイッター上で、「ドワンゴさんもコンテンツ作りから退かないでほしい」と発言して、それに対してドワンゴの川上会長は「手離れのいいプラットフォーム、コンテンツはおまかせで場だけ提供というタイプは、米国企業しか勝てません。日本が勝てるプラットフォームは自らコンテンツをつくって新しいジャンルを開拓する任天堂モデルだというのが持論です」と返事をしていました。私が以前から気になっているのは、津田さんが今準備されている「政治メディア」は、はたしてコンテンツになるのか、ニュースになるのか、プラットフォームになるのか、ということなんです。お話できる範囲で結構ですが、どのような展望を持っているのか教えていただけますか。

津田:これは、複雑な質問ですね。というのも、さまざまな要素によって、僕が作る政治メディアの内容は変わっていくからです。例えば、どのくらいの資金を集めることができて、どのくらいの人員を確保できるのかによっても、できることはまるで違います。最初は、できるだけ無理のない態勢の中で意味があることをやっていくことになるとは思います。

ただ、「これだけはやりたい」ということが4つあります。

まずは、どのような情報を役所は発表していて、その情報からは何が読み取れるのかを丁寧に取り上げる。これはできればデイリーで追いかけたいですね。津田マガで言えば、Vol.37に掲載した「中部横断自動車道をめぐる国交省の不可解な動き」みたいな切り口で政策解説をやっていきたい。

もう1つは、データジャーナリズムの手法(大量のデータを解析することで新たな解釈を作り出す手法)を取り入れた政策提言をしていきたい。そもそも日本ではデータジャーナリズム自体を紹介するメディアが少ないのですが、そこは津田マガで何度も取り上げてきたわけですし、まさにネットがあるからこそ可能になった新しいジャーナリズムのかたちだと思うので、ぜひとも実践に結び付けたいと思います。

それから、クラウドファンディングも含めたさまざまなプロジェクトも、インタビューや取材などを通して積極的に取り上げていくつもりです。「社会を変えたい」と考える人たちが世の中に出ていくのを手助けする場所にしていきたい。

4つ目は、政策に関する情報に「タグ付け」をしたいと思います。ベタな言葉では「キュレーション」ですね。次々に発表される政策と、それに関するメディアの情報をリンクしていき、タグでまとめてしまう。例えば、牛肉の生レバー規制問題について知りたいと思った場合、この「政治メディア」にアクセスをしてタグ検索をするだけで、詳しい政策内容から識者の意見に当事者の声、それからソーシャルメディア上での主な意見など、あらゆる情報にアクセスできるイメージです。「どのようなタグを作ることができるか」がこの政治メディアのクオリティを決めてしまうと言っても過言ではないくらい、このタグ設定はサービスのキモになると考えています。

ここまでの話でお分かりかと思いますが、ここに挙げた僕のやりたいことすべてをあらゆる政策分野できちんと実行するには、少なくとも100人ぐらいのスタッフが必要になります。もし100人集まったのならば100人でできることをやる。30人集まったのなら、30人でできることをやる。では、今の僕のまわりで実質的な戦力になる人が何人いるのかと言えば、津田マガが思いの外忙しいこともあって、自由に政治メディアのために動けるのは1人や2人しかいないというのが現実です。でもそのことに文句を言っても仕方がないので、この中でできることをやるしかないと考えています。

1 2 3
津田大介
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。

その他の記事

夕日が映える豊かな時間をゆったりと楽しんで生きる(高城剛)
個人の情報発信で考えていること(やまもといちろう)
雨模様が続く札幌で地下街の付加価値について考える(高城剛)
貯まっても使う機会に恵まれないマイレージに思うこと(高城剛)
週刊金融日記 第304号【楽しいのはパーティーか読書か、世界の株式市場が大暴落、新大久保で美味しいネパール料理他】(藤沢数希)
古いシステムを変えられない日本の向かう先(高城剛)
手習いとしてのオンライン・エデュケーションのすすめ(高城剛)
コンデンサーブームが来る? Shureの新イヤホン「KSE1500」(小寺信良)
「高倉健の死」で日本が失ったもの(平川克美×小田嶋隆)
400年ぶりの木星と土星の接近が問う「決意と覚悟」(高城剛)
小笠原諸島の父島で食文化と人類大移動に思いを馳せる(高城剛)
観光バブル真っ直中の石垣島から(高城剛)
「消費者安調査全委員会」発足、暮らしの事故の原因究明は進むのか?(津田大介)
効かないコロナ特効薬・塩野義ゾコーバを巡る醜聞と闇(やまもといちろう)
準備なしに手が付けられる、ScanSnapの新作、「iX1500」(小寺信良)
津田大介のメールマガジン
「メディアの現場」

[料金(税込)] 660円(税込)/ 月
[発行周期] 月1回以上配信(不定期)

ページのトップへ