日中の緊張関係は文化で溶けるのか

中国人にとって、「村上春樹」は日本人ではない!?

誰でも知っていますけど、読んだことがない人も多い

しかし、中国人の若者全員が村上春樹に心酔しているわけではない。このように熱弁をふるう若者が多い一方で、「もともと村上春樹はあまり読まない」という答えも少なくなかった。

「私は一度も読んだことがないです。なぜって? 理由はないですけど、もともとあまり小説は読まないから。中国で村上春樹の知名度は抜群ですから、たぶん、誰でも知っていますけど、読んだことがない、という人も案外多いんですよ」(1986年生まれ、都内の大学院に在学中の男性)

「5ページしか読んだことがないんです。ちょっと読んで、あ、この作家は自分には合わないって思いましたから、やめちゃいました。もともと私、推理小説くらいしか読まないので。だから、好きか嫌いかといわれても困りますね。とくに村上を読まない理由はありません」(1989年生まれ、北京の大学院生、女性)

村上はよく「日本独自の情緒的な表現ではなく、翻訳しやすい文体や世界観だから世界中に広く翻訳された」と評される。だが、私が取材したかぎり、そうしたこととはあまり関係がないように感じられた。

北京の大手企業に勤務する朱さん(1979年生まれ、33歳)はいう。

「大学時代に『ノルウェイの森』だけは読みました。大学時代に取っていた文学の授業でこの作品が取り上げられたので。でも、それだけです。印象は『暗い』の一言。登場人物もみんな暗くて、私はとてもこういう世界にはついていけないなぁ…と。私の同級生の間でも、評判はあまりよくなかったですね。中国で『1Q84』もすごい話題になりましたけど、私は書店で手に取ろうという気には一切ならなかったです」

1 2 3 4 5

その他の記事

五月病の正体 「どうせ……」というくせものキーワード(名越康文)
NYの博物館で出会った「カミカゼ・エクスペリエンス」(川端裕人)
京成線を愛でながら聴きたいジャズアルバム(福島剛)
子どもに「成功体験」を積ませることよりも、親の「しくじった話」が子どもの自己肯定感を育むってどういうこと?(平岩国泰)
なぜ忘年会の帰り道は寂しい気持ちになるのか――「観音様ご光臨モード」のススメ(名越康文)
「学びとコンピュータ」問題の根本はなにか(西田宗千佳)
電気の「自炊」が当たり前の時代へむけて(高城剛)
英国のシリコンバレー、エジンバラでスコットランド独立の可能性を考える(高城剛)
4K本放送はCMスキップ、録画禁止に?(小寺信良)
ピダハンから考える信仰における「ほんとう」について(甲野善紀)
アーユルヴェーダで身体をデトックスしても治らないのは……(高城剛)
ヨーロッパ最大の放送機器展でこれから来る欧州の冬を想像する(高城剛)
アーミテージ報告書の件で「kwsk」とのメールを多数戴いたので(やまもといちろう)
地上で幸せになるためには、絶対に手に入らないものについて考えるのが良い(茂木健一郎)
波照間島への旅のコツ(高城剛)

ページのトップへ