きっかけは外からやってくる
小山:いや、それは「内発」と言ったときに内側にしかないと思うのは、哲学的に言うと大間違いでさ。内発だから内側にしかないんじゃなくて、実は外も内なんだよね。「内も外になるし、外も内になる」っていう感覚で。
僕が高木さんに言ったっていうのは、もしかしたら高木さんに言わされたってことかもしれないし、その「内側外側関係」は実はすごく微妙なんだよね。
「能をやりたい」って思ってたときに、能の話がたまたまくる。これは要は、禅の話で。卵から生まれるヒナが、親鳥と同じ場所を同じ瞬間に叩いたときに、殻が割れるっていう。この外からの機会と、内側からの機会が一致するっていうのが、すごく重要なわけですよ。
「内発、内発」って内側だけじゃなくて、それは内側からコツコツ卵の殻を打ってるだけで、それは外からの機会というものに無頓着なんだよね。
「チャンス・オペレーション」[*6]ってあるじゃない。例えばこのエアコンの音も、実は音楽として聴くことができる。つまり、偶然起こっているチャンスを自分のなかで、偶然を必然に変えていくということだよね。
[*6]偶然性音楽を実現するための方法のひとつ。アメリカの作曲家ジョン=ケージはコインのトスで音高・音価などを定める曲を発表したが、元来はその方法をチャンス・オペレーションと呼んだ
五線譜についていたゴミを音符に見立てて音楽をつくる、ということをやるとき、「外の偶然性をいかに必然に変えていくか」という働きのなかに実は「内発性」が存在している。「内発」って言ったときの言葉の語義から言うと、どうしても内側だけに起こるもののような印象があるんだけど、きっかけは実は外からやってくることもある。外からやってきたから内発的じゃないということでもない。
だって、高木さんに「インプロとコーチングをやった方がいいよ」と言うのは今だから言えるのであって、1年前の高木さんに言えるかはわからない。
原尻:確かに。代理店のときも「何かこの解決策を考えてこいよ」と言われたときに、「うーん」と考えていてもわからないんだけど、偶然の刺激によって気付くことがいっぱいある。それと同じ。こっちがアンテナを立てていると引っかかるものが増える。さっき話した清水先生の「相互誘導合致」だね。
小山:それは、高度な即興性が求められることだよね。
人も国家もベクトルを見定めるべき?
小山:やっぱり今は、キャリアも含めて計画性が重視されすぎていると思う。「キャリア・プランニング」とかね――「プランできる程度のキャリアは、プランできる程度のものでしかない」んだけどね。
原尻:そうだね。「キャリア・プランニング」で言うと、この前、大林稔先生と話したときに「原尻さん、キャリアで重要なのはベクトルを定めることじゃない?」って言ったんだよね。「確かに先生、そうなんですよ」と。ベクトルが定まっていれば、プランニングをいつでも柔軟に変えられるし、細かなことじゃなくて、大きいベクトルさえあっていればそれで絶対いいんだと。
職種は変わってもそのベクトルの方向に向かい続けていればいいわけです。外れた方向に行ってなければいい。「そこに就職をしなければいけない」っていうプランニングは厳しいけど、ベクトルさえ決まっていてれば、やっている方向性は間違っていないと分かると、大林先生は言うんだよね。その通りだなと。
小山:逆に言えば、ベクトルがない人はダメだよね。どんなにいいキャリアを積んでいても、ベクトルがなかったら展開しない。もしくは、他人のベクトルを「こういうふうなのがいいんだ」って信じてやるパターン。そういう他律的なベクトルも、失敗しやすい。
これは、結局さっきの外交問題もそうだけど、ベクトルが定まってないから「小手先の謝罪要求をした方がいい」とかなるんだよね。
そうじゃなくて、ベクトルをまず定めて「日韓関係良くしていきましょうよ」と。
「東アジアのこれからを考えたときに、友好関係を保ってお互いに繁栄する道を探しましょうよ」というベクトルを、メッセージとして示したいなと思いますね。
原尻:ベクトル論で言うと、韓国の今の政府の発言で違和感があるのは、未来に向けたベクトルを言わないよね。過去のベクトルで国民を駆り立てて、方向をあわせようとしないし、日本は日本でベクトルが定まっていない。
だから、まず、「同じ方向にベクトルを向ける」ための話し合いをしないといけなくて、そのときには長いスパンで見ないとそのベクトルが見えてこない、ということなのかもしれないね。
<終わり>
<前編はこちらから>
<この文章は小山龍介メルマガ『ライフハック・ストリート』から抜粋したものです。もしご興味を持っていただけましたら、ご購読をお願いします>
その他の記事
本来ハロウィーンが意味していた由来を考える(高城剛) | |
日本はポストウクライナ・ロシア敗戦→崩壊「後」に備えよ、という話(やまもといちろう) | |
旅行需要急増でのんびり楽しめる時間が残り少なくなりつつある南の島々(高城剛) | |
ドイツの100年企業がスマートフォン時代に大成功した理由とは?(本田雅一) | |
古い常識が生み出す新しいデジタルデバイド(本田雅一) | |
「デトックス元年」第二ステージに突入です!(高城剛) | |
「スルーする」ことなど誰にもできない――過剰適応なあなたが覚えておくべきこと(名越康文) | |
「本気」という無意識のゴンドラに乗るために(名越康文) | |
ゴジラGODZILLA 怪獣という<神>の降臨(切通理作) | |
教育にITを持ち込むということ(小寺信良) | |
スマートウォッチとしての完成度が上がったApple Watch(本田雅一) | |
「日本の電子書籍は遅れている」は本当か(西田宗千佳) | |
ドラッカーはなぜ『イノベーションと企業家精神』を書いたか(岩崎夏海) | |
日本が観光立国になり得るかどうかの試金石はVIPサービスにあり(高城剛) | |
政争と政局と政治(やまもといちろう) |