城繁幸
@joshigeyuki

期間限定公開! 新刊『「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話』

【第2話】波乱の記者会見


「プロスポーツにはハングリー精神が欠かせないとよく聞きます。実際、体力的なも のよりも、そういったモチベーションの衰えを理由にユニフォームを脱ぐ選手は多い。 年俸制を否定し、横並びの基本給+αにすることで、はたしてプロの選手はやる気に なるものでしょうか?」
「人間は、生活が保障されて初めてハングリーな挑戦ができるものだというのが、 我々連合のポリシーです。少なくとも日本はそうやってこれだけの経済成長を成し遂げた。だが、今、さまざまな理由で終身雇用に対する信念が薄らいできているのは事実です。ペナントレースにおける我々の戦いは、日本国民に再び大いなる自信を植え付けるでしょう。期待していてください」

「では、最後に一つだけ。あなた方にとって『ハングリー』とはどういうことですか?」

古賀は一瞬ギクッっとした顔をしたものの、会の終了を告げる司会の声に促される 形で壇を下り、結局最後はうやむやとなってしまった。

ペナントレース開幕まで4カ月を切ったユニオンズ。 守られるのかユニオンズ憲章。 そして、本当に戦えるのかユニオンズ。

 

 

(次回は6月17日更新予定です!)

 

 

【教訓】嘘と本当を見分ける目を持つ

世の中には色々な意見があります。もちろん、日本は民主主義の国なので何を言うのも自由ですが、真実は常に一つしかないのも事実です。

ではなぜいろいろな意見があるかと言えば、多くの人は「何が正しいか」ではなく「何が今の自分にとって利益になるか」という観点で意見を決めているからです。だから、人の数だけさまざまな意見があるわけですね。

では、これから社会に出る若者は、誰の意見を参考にすべきでしょうか?  実は、本当に正しい意見と、誰かの都合で吐かれているだけの意見を簡単に見分けるポイントがあります。それは「じゃあ、何をどうやればいいの?」と、具体的な処方箋を求めてみることです。

たとえば「消費税を上げることには反対だ」という人はとても多いですが、その代わりにどこから取るかとか支出の何をカットするといった現実的な対案を出している人に筆者は会ったことがありません。筆者の私見ですが、この手の人には自営業の人が多く、消費税さえ潰せばもっと取りやすいところ(はっきり言うとサラリーマン)から徴収してもらえると分かっているのでしょう。

誰がきちんとした処方箋を持っているか

本書のテーマでもある雇用問題でも同じです。氷河期世代の就職が問題となった2000年代半ば頃、そして派遣切りが騒がれた 年前後に、筆者は多くのメディアで対策を提言してきました。若者の就職難も派遣切りも、問題の根っこにあるのは硬直した終身雇用であり、そこにメスを入れなければ問題は解決しないこと。現在の労働法制は終身雇用を維持する体力のある大企業だけを視野に入れたものであり、その結果、多くの中小零細企業や非正規雇用者の雇用環境は、おざなりにされたままであること等です。

それに対して、労組から左派政党、 大手マスコミまで、実に多くの反論が 寄せられましたが、そのすべてが「では、どうすべきか」という観点をまっ たく持ち合わせない「反対のための反 対」だったように思います。

そうなってしまう理由はとてもシン プルです。マスコミや労働組合の役職者は、大企業の正社員の中でも既に一 定の昇給を手にした中高年であり、現 状維持さえできれば別に問題解決なんてする必要ないわけです。そして、彼ら労組と仲の良い左派政党も当然同じ スタンスですね。

既得権というしがらみを持たない若い世代に対しては、きっと多くのグループが自分達の側に引き入れようと手を差し伸べてくることでしょう。でも、誰がきちんとした処方箋を持っているかという観点でチェックさえすれば、ただ一本の道だけがまっすぐに伸びているのがはっきりと見えるはずです。

 

fig02

 

2014年6月20日発売!

『「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話』

城 繁幸 著

 

cover_0605

 

ある日、「サラリーマンなんて言われたことやってれば楽勝だろ」が信条の山田明男に、とんでもないミッションが与えられてしまう。史上初の”終身雇用”プロ野球球団「連合ユニオンズ」への出向! 山田が見た終身雇用システムの光と影とは!?

 

――衝撃のストーリーが教えてくれる、すべての働く人のための生き残り術!

 

眼を閉じて、10年後の自分を思い浮かべてみてください。

「責任ある仕事を任され、安定した収入を得ている」そんな自分を明確にイメージすることができますか?

「さすがに失業している……ってことはないだろう」と思ったあなたは、日本の雇用環境についての見通しが少し甘いかもしれません。

人事部門には、「人材は職場環境で作られる」という格言があります。確かに、環境は人を変えます。でも、その環境を変えるのもまた人であり、その人自身の心の持ちようです。

さて、あなたは10年後に仕事で困らないために、今、どんな心構えで、何を準備すればいいのでしょうか。

この本では、「もし日本労働組合総連合会(連合)がプロ野球チームを保有して、全選手を終身雇用にしたら何が起こるのか」を細かくシミュレーションしました。そこには多くの日本人が見落としている「雇用の真実」を見つめるヒントが詰まっています。

「ありえないこと」が普通に起こる激変の「10年後」の世界で力強く生き残る方法、お伝えします。

 

<目次より>

1主体性を持って仕事をする
2嘘と本当を見分ける方法
3年功序列に期待するな
4環境が人を変える
5流動性のない組織に成長はない
6”研修”ですべてを変えるのは無理
7自分の市場価値を高める
8世の中にただ飯はない
9きれい事しか言わない人を信用してはならない
10ローンは組まないほうがいい
11若手に仕事を任せる
12過去の成功体験は捨てる
13「人に優しい会社」などない
14会社の”社会保障”には期待しない
15ブラック企業の心配をする暇があったら勉強しろ
16未来の成功体験はこれから作られる

 

四六判並製1C・248頁
定価 本体1600円+税
ISBN978-4-906790-09-8

amazon.co.jpで購入する

1 2 3 4
城繁幸
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』等。

その他の記事

冬の京都で酵素浴によるデトックスに励む(高城剛)
フィンテックとしての仮想通貨とイノベーションをどう培い社会を良くしていくべきか(やまもといちろう)
週刊金融日記 第297号【世界最大のビットコイン市場であるビットフライヤーのBTC-FXを完全に理解する、法人税率大幅カットのトランプ大統領公約実現へ他】(藤沢数希)
Appleがヒントを示したパソコンとスマホの今後(本田雅一)
【号外】安倍官邸『緊急事態宣言』経済と医療を巡る争い(やまもといちろう)
映画は誰でも作れる時代(高城剛)
米朝交渉を控えた不思議な空白地帯と、米中対立が東アジアの安全保障に与え得る影響(やまもといちろう)
カーボンニュートラルをめぐる駆け引きの真相(高城剛)
ITによって失ったもの(小寺信良)
「日本の動物園にできること」のための助走【第一回】(川端裕人)
TikTok(ByteDance)やTencentなどからの共同研究提案はどこまでどうであるか(やまもといちろう)
日産ゴーン会長逮捕の背景に感じる不可解な謎(本田雅一)
依存癖を断ち切る方法(高城剛)
1980年代とフルシチョフ(岩崎夏海)
これからのクリエーターに必要なのは異なる二つの世界を行き来すること(岩崎夏海)
城繁幸のメールマガジン
「『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回配信(第2第4金曜日配信予定)

ページのトップへ