怒って相手から嫌われることの二つのメリット
怒って相手から嫌われることのメリットの一つは、そういうふうに自分を厳しい環境に置くことによって、能力を向上させられるということだ。世の中の大きな成果をあげる人間が、しばしば短気で周囲から嫌われているのはそのためである。多くの人は、成果をあげている短気な人に対して「天狗になっている」と見なしがちだが、実際は逆だ。彼らは、もともと短気で嫌われ者だったからこそ、努力し、成果をあげられるようになったのだ。
怒って相手から嫌われることのメリットのもう一つは、「他人のハードルが下がる」ということである。嫌われ者というのは、周囲からの評価が下がる。人は、嫌いな人を無能だと見なす性質があるため、「何をやってもダメなやつ」という先入観を持つのである。つまり、評価のハードルが下がるのだ。そのため、少しでも能力を見せつけると、とたんに評価が上がる。人は、もともとダメな人間だと思っていた相手にちょっとでも長所が見つかると、とたんに評価を逆転させる。少女マンガにおける恋愛も、最初は「嫌なやつだ」と思っていた男の子が実は良い人だったというパターンがほとんどだ。
これは、「競争」にはとても有利に働くのである。面白いことに、人間にとっては好き嫌いの感情と能力の評価というのは、真逆の場合も少なくない。人は、嫌いな人の能力が高いということを、比較的すんなりと受け止められるのである。なぜなら、人間は「交換条件」という概念に強く縛られているからだ。そのため、嫌いな人の能力が高くても、「あいつは嫌われている分、能力が高いのだ」と納得してしまうのである。
このように、短気な人というのは、他者から能力を評価されやすいという利点がある。これに、最初の「自分の能力を高めやすい」という利点を足せば、むしろ短気になって人から嫌われることは、競争に勝つためには不可欠なことともいえる。
そこで次回は、ではどうすれば「怒れる」ようになるのか?――ということについて考えたい。というのも、世の中には怒らない訓練を積み重ねすぎたために、今ではすっかり怒れなくなったという人も少なくないからだ。また、嫌われ方にも「良い嫌われ方」と「悪い嫌われ方」があるので、それについても併せて論じていきたい。
大好評新刊!『部屋を活かせば人生が変わる』
夜間飛行、2013年11月
部屋を考える会 著
※「競争考」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!
岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」
『毎朝6時、スマホに2000字の「未来予測」が届きます。』 このメルマガは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)作者の岩崎夏海が、長年コンテンツ業界で仕事をする中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代をどうとらえればいいのか?――また未来はどうなるのか?――を書き綴っていく社会評論コラムです。
【 料金(税込) 】 864円 / 月
【 発行周期 】 基本的に平日毎日
ご購読・詳細はこちら
http://yakan-hiko.com/huckleberry.html
岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。
その他の記事
|
岸田文雄政権の解散風問題と見極め(やまもといちろう) |
|
ダイエットは“我慢することでは達成できない”というのが結論(本田雅一) |
|
絶滅鳥類ドードーをめぐる考察〜17世紀、ドードーはペンギンと間違われていた?(川端裕人) |
|
長寿国キューバの秘訣は予防医療(高城剛) |
|
『売れるネット広告社』加藤公一レオさんから派手な面白ムーブが出る一部始終(やまもといちろう) |
|
人間にとって自然な感情としての「差別」(甲野善紀) |
|
何かに似ている映画とかじゃなくて、今じゃなきゃ出来ない、ここじゃなきゃ出来ない映画に出れる幸せ(切通理作) |
|
怒りを動機にした分析は必ず失敗する(名越康文) |
|
沖縄の地名に見る「東西南北」の不思議(高城剛) |
|
「岸田文雄ショック」に見る日本株の黄昏(やまもといちろう) |
|
「先生」と呼ぶか、「さん」と呼ぶか(甲野善紀) |
|
「安倍ちゃん辞任会見」で支持率20%増と、アンチ安倍界隈の「アベロス」現象(やまもといちろう) |
|
浜松の鰻屋で感じた「食べに出かける」食事の楽しみと今後の日本の食文化のヒント(高城剛) |
|
「スマホde子育て」族に悲報、というか取り返しのつかない事態について(やまもといちろう) |
|
改めて考える「ヘッドホンの音漏れ」問題(西田宗千佳) |











