変わったこと、変わらないこと
小寺:Engadgetってやっぱり鷹木さんが入ってまったく変わったなと思うのは、コミュニケーションするメディアに変わったと思ってるんですよ。
鷹木:ありがとうございます。
小寺:それまではIttousai君の毒舌を楽しむメディアでしたからね(笑)。
で、多くのニュースメディアって、読者とコミュニケーションするチャンネルはないんですよ。おたより募集コーナーみたいなやつもないし、Q&Aみたいなのもないし。
でもそんな中で、──いちばん最初はやっぱりフェスかなんかかな。Ittousai君時代に毎年1回ぐらいガジェットフェスみたいなやつをやり始めて。
鷹木:Engadget Nightみたいなことをやってましたね。
小寺:ええ。それでけっこうな人を集め始めて。あ、なるほど、そういうふうにファンイベントみたいなことができるメディアというのは、ニュースメディアとしては非常に珍しいなと思ったんですよね。あ、なんだEngadget普通に日本語通じるんだ、みたいな。Ittousai君頭おかしいわけじゃないんだ、みたいな安堵感(笑)。
同じようなスタイルの競合メディアはあるじゃないですか。でもそういうところって、イベントやるっていうよりイベントに行って騒ぐって感じだし、なんかEngadgetだけはすごくうまく展開したよな、というふうに見てるんですよね。
鷹木:日本で始めた当初のギズモードとかは、もしかしたらその可能性もあったな、って実は僕思ってて。実際ブロガーさん達が集まっててイベントもやってたと思うんですけど、定例化しなかったり、今はけっこうすっかり誌面が変わっちゃったりしてるんですけど。
彼らの読者層の推移を見てるとけっこう面白くて。最初はやっぱりガジェット好きが集まってるんですけど、最近の読者調査とかだとほんと平均的になっちゃってるんですよ。女子も読んでるし男子も読んでるし。
小寺:ああ、女性記者もけっこう頑張ってますしね。
鷹木:ガジェットが好きな人たちだけじゃなくてそうじゃない人たちも読んでるし、プログラマとか技術者だけじゃなくて、他のマーケッターの人とか、営業マンとかも読んでるし、みたいな。ほんとに一般誌みたいな読者層になってて。ま、だからこそスケールしたというのもあると思っているんですけど。
小寺:なるほどなるほど。
鷹木:僕らそっちは、なんか行っちゃいけないな、というか。そっち行っちゃうと敵がいっぱいいるんですね(笑)。一番大きいのはYahoo!、GIGAZINEとか、ギズモードさんとかもそうだと思いますが。そっちに行っちゃうと、僕らの良さもどこまで生かせるかわかんないな、と。
僕らは逆にニッチな方を煎じていくというか、突き詰めていって、ほんとにイベントにも来てくださる人たちと一緒に歩まないとまずいな、思ってます。こないだのイベントとかも、僕らが一方的に見せるとか、一方的にトークセッションをやるとかはイヤだったんですね。
だからガジェットトークを入れたりとか、クアッドコプター選手権みたいに、読者そのものが参加したり、読者そのものがコンテンツの一部になるような、そういう建付けの部分を入れないと、そのへんでやってるイベントと一緒になっちゃうよね、みたいな。
これはある種、ニコニコ超会議みたいなものとけっこう考え方としては似てると思っていて。ただ、切り口が、僕らはガジェットだけです、と。向こうはサブカル全般やってるんで、ガジェットを扱うところが少なくなっちゃってる。そういうある種のニッチ部分をどこまで積み上げていけるかな、みたいな。
さっきの、「尖った」みたいな表現がありますけど、けっこう、インプレスでもITmediaでも、やっぱり尖ったメディアはみんな作りたいんですよ。
小寺:ええ、そうでしょうね。
鷹木:僕らもやっぱりやってくんですけど、けっこう難しくて。だんだんやってくうちにどんどん広がっていっちゃって、ぼんやりしちゃう。
小寺:ああ。広がってっちゃうんだ。いろいろ集まってきちゃう、ってことですかね?
鷹木:いや、あの……そこは難しいんですけど。たとえば僕、誠 Biz.IDの立ち上げやって。当初はライフハックしかやらない、みたいなこと言ってたんですけど、ライフハックだけだと広告が売れない、っていうんです。ライフハックってほら、ケチる……(苦笑)。
小寺:うんうん、そうですよね、節約ですもんね。買わずにうまくやろう、みたいな。
鷹木:そうそう(笑)。だからたとえば、「プリンタを使わないでコレを使えばいい!」、そうするとプリンタメーカーに売りに行けない、みたいな話になって。じゃプリンタもやってください、みたいな、そういう要望が、外的要因で。
こういう要望が、こういう要望が……って、それにちょっとずつ対応していくと、コアな部分がだんだん薄まってきて、それが減っちゃったり、場合に寄っては全然違うメディアになることがあって。そうなっちゃうとやっぱり、当初期待してた読者さんも「なんか違うね……」みたいな話になっちゃうと思ってるので。逆に僕はEngadgetでそこはしないように。
小寺:今のところ基本テイストは変わってないですよね。
鷹木:Ittousaiが元々2005年に手を挙げて始めたメディアなので、彼のDNAというのはすごい生きてる。生きてるし、記事の中でそのDNAがなくなっちゃったと思われた瞬間に、その熱意ある人たちがどっか行っちゃう気もしてるんです。
だから、彼のDNAは残しつつ、そういうコミュニケーション要素みたいな部分を入れることのそのバランスに腐心している、という感じです。
小寺:まさにそれは、誌面を見てても思いますね。やっぱりIttousai君の書きぶりって独特で、シニカルなところがあり、それがいわゆるガジェット野郎っぽいんですよね。
そこのテイストがみんなの共感を得るところであって。すごい熱くガジェットに向かっていく、というんじゃなくて、「またこんなしょうもないものが出ました」みたいな、しょうもないけど大好き、みたいな(笑)。
Engadgetはそういう、憎めないバカ野郎ども集まれ、みたいな感じがすごく良いんですよね。
※この記事は小寺信良のメールマガジン「金曜ランチボックス」2014年7月25日 Vol.129「対談:Small Talk ニュースメディアはどこへ行く?《第1回》」が初出です。第2回以降は、小寺信良のメールマガジン「金曜ランチボックス」をご購読ください!
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