やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

鉄鋼相場の変調とアジア経済の調整

そろそろニュースに取り上げられつつありますが、現在国際的な鉄鉱石相場の変調や、汎用の鉄鋼相場が下落してきており、下げ止まらない状況に陥っております。私のビジネスで直接影響があるのは中国国内で製鉄のために必要なハイカロリー炭(SOC)の国境渡し価格がかなり下がってしまいまして、大口でこの辺りを売買してくれる中国系企業がバイヤーすら取引現場に来なくなりつつあるという現状が出てきております。

過去にも類例は何度かありました。一番顕著だったのはSARSコロナウイルスが流行して中国経済が大きく減退した2003年ごろと、一時的な経済停滞に見舞われた2009年から2010年にかけて、国境でもCIFでもモノが止まりました。それでも中国経済に対する信頼感はあったので、そのタイミングでリスクを取った中国系企業は大儲けをしたようです。

今回問題となるのは、屑鉄だけでなく製鋼も下落して、恐らくモンゴル経由で出る一般炭(コモン)もハイカロリー炭、極東ロシア・シベリア経由では高級鋼相場で必要不可欠なニオブなどのレアメタルも取引が途絶え始め、過剰に在庫を取っていた会社が相場から脱落しているように見えていることです。つまり、需要減少を流通在庫のところで吸収できなくなったので、取引自体が細って価格が急落するというちょっといままでにない問題が起き始めているということであります。

ただでさえ大口の取引ではリスクのあるグッズであるにもかかわらず、このような問題があると長期の大口で信頼感を持って続けていたディールも幾つかはキャンセルになってしまうことでしょう。先物相場も影響を受けて大きく崩れたとき、生産中止であるロシアやモンゴルのエネルギー関連企業へのプレッシャーは相当なものになるでしょうし、間を取っていた中国系企業は支えきれなくなって破綻が相次ぐことも懸念されます。

中国とのビジネスは、うまくいっているときは非常ににこやかに進むのですが、どんなに信頼関係があろうといったん関係がうまくいかなくなったり、トップ同士では握れてもその下でトラブルが絶えなくなると文字通りどうにもならない状態になるんですよね。このあたりは本当にどうしようもないので、どうにかなら
ないのかなと思いますが。

そういう貿易の現場から見ていると、去年の日露会議からそぞろ話の出ていたサハリン産天然ガスのパイプライン建設で日露協調をするという話が再び持ち上がり、さてどうしたものか悩ましいところであります。以下の記事では、どちらかというとクレムリンと永田町の話のように解説されていますが、現場からします
とどっちかっていうと「商品相場が下落が見込まれる、上客の中国との取引だけでは身動きが取れなくなるんじゃないか」っていう合理的な疑心暗鬼で他の売り先として有力な日本市場をそろそろちゃんと確保したいよという事情があるように感じられます。もちろん、ウクライナ問題などもないわけではないのでしょう
が、こちらからは見えません。

http://newsphere.jp/economy/20141017-1/

肝心の中国経済が失調するとなると、アジア全体の経済成長に大きなリスクが出るばかりか、逆噴射で深刻な経済後退が起き、97年のアジア通貨危機以上のジレンマを生むことになりそうです。さてどうなりますか、固唾を飲んで見守りたいと思います。

 

やまもといちろうメルマガ「人間迷路」Vol.111

<スクウェア・エニックスとSNKプレイモアのハイスコアをめぐる争いの美しさと
急増するスマホアクセスに対応を急ぐCCC他各社の話>

187A8796sm

目次
【0. ヘッドストーリー】鉄鋼相場の変調とアジア経済の調整
【1. インシデント1】スクウェア・エニックスとSNKプレイモアの愛憎溢れる泥仕合
【2. インシデント2】CCCがWebサービスを統合してニュースキュレーションにまで手を広げてきました
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

「人間迷路」のご購読はこちらから

 

やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

部屋は「あなた」である――掃除をするか、旅に出るか(名越康文)
生き残るための選択肢を増やそう(後編)(家入一真)
本格的な移動シーズンに向けて最後の仕上げ(高城剛)
職業、占い師?(鏡リュウジ)
花見で教えられるこの世の唯一の真実(高城剛)
南国の夜空を見上げながら読むアーサー・C・クラーク(高城剛)
「高倉健の死」で日本が失ったもの(平川克美×小田嶋隆)
素晴らしい東京の五月を楽しみつつ気候変動を考える(高城剛)
夕日が映える豊かな時間をゆったりと楽しんで生きる(高城剛)
うまくやろうと思わないほうがうまくいく(家入一真)
日本でも始まる「自動運転」(西田宗千佳)
世界的な景気減速見込みで訪れる「半世紀の冬」(やまもといちろう)
新型コロナウイルスが浮き上がらせる様々な物事の本質(高城剛)
なぜか「KKベストセラーズ」問題勃発と出版業界の悲しい話(やまもといちろう)
自分の部屋を「iPhone化」する–大掃除の前にヘヤカツ(部屋活)してみよう!(岩崎夏海)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外
Contact Us()
Blogs()
megamenu-integration()
image()
divider()

ページのトップへ