死を思えば、日々の過ごし方が変わる
教育としてのグリーフワークが子どもたちの教育のレベルから浸透してくれば、それは単に「看取りの場面」に留まらず、日常の僕らの立ち居振る舞いに大きな影響を与えるはずです。
例えば頼みごとをされて「面倒だな」と思ったとしても、そこでふっと「死」を意識するようになると、「明日、この人か、私か、どちらかが死ぬかもしれない」という思いがよぎる。そうすると、その出会いが一期一会であることが、より強く意識されることになるでしょう。そんな気持ちがよぎれば、相手のお願いをそう簡単にむげにはできなくなります。
実際問題、僕らが対人関係上で感じるストレスの多くは、今日も、明日も、明後日も、自分や周囲の人の命が続いていくということを前提にして生じているものです。でも、その前提には何の根拠もありません。現実には私たちはいつ死ぬかわからないし、長い年月の間には、必ず死ぬ存在なのです。
グリーフワークの本質は、個別の死を悼む方法論というよりもむしろ、「僕の命も、あなたの命も、ここに生きているすべての命がはかない、風前の灯である」という素朴な事実を、実感として「知る」ということにある、と僕は考えています。
かつては、そういう感覚は特殊なものではないし、特別に学ぶようなものではありませんでした。ところが僕らは医学の進歩や、平和の実現によって、死から遠ざかっています。、実際には僕らはいつか死ぬという事実は変わっていませんが、感覚的には「いつまでも死なない」という意識が強く、強くはびこっている。
もしそうした感覚世界に働きかけ、変化を促すようなグリーフワークができるなら、それは単に「死を悼み、身近な人を看取る」力を高めるということではなく、僕らが生きていく上での総合力を高める、本質的な意味での「教育」になりうると僕は思うんです。
※この記事は「名越康文のメルマガ 生きるための対話(dialogue)」2013年08月19日 Vol.058のうち<教育としてのグリーフケア>を元に加筆・修正を加えたものです。
好評発売中!
驚く力―さえない毎日から抜け出す64のヒント 
現代人が失ってきた「驚く力」を取り戻すことによって、私たちは、自分の中に秘められた力、さらには世界の可能性に気づくことができる。それは一瞬で人生を変えてしまうかもしれない。
自分と世界との関係を根底からとらえ直し、さえない毎日から抜け出すヒントを与えてくれる、精神科医・名越康文の実践心理学!
amazonで購入する
名越康文メールマガジン「生きるための対話」
テレビ、ラジオなど各種メディアで活躍する精神科医・名越康文の公式メルマガです。メルマガ購読者とのQ&A、公開カウンセリング、時評、レビューなど盛りだくさんの内容を隔週でお届けします。
「ぼくらが生きているのは、答えのない時代です。でも、それはもしかすると、幸福なことなのかもしれません。なぜなら、答えのない問いについて対話し続けることではじめて開ける世界があるからです。皆さんと一緒に、このメルマガをそんな場にしていきたいと思っています」(名越康文)
【 料金(税込) 】 540円 / 月 <初回購読時、1ヶ月間無料!!>
【 発行周期 】 月2回発行(第1,第3月曜日配信予定)
ご購読・詳細はこちらから!
その他の記事
|
ドイツでAfDが台頭することの意味(高城剛) |
|
「文章を売る」ということ(茂木健一郎) |
|
努力することの本当の意味(岩崎夏海) |
|
声で原稿を書くこと・実践編(西田宗千佳) |
|
400年ぶりの木星と土星の接近が問う「決意と覚悟」(高城剛) |
|
あなたが「運動嫌い」になった理由(若林理砂) |
|
地域住民の生活が奪われるオーバーツーリズム問題(高城剛) |
|
どうも自民党は総体として統一教会と手を切らなさそうである(やまもといちろう) |
|
「貸し借り」がうまい人は心が折れない(岩崎夏海) |
|
今だからこそ! 「ドローンソン」の可能性(小寺信良) |
|
これからのビジネスは新宗教に学んだほうがいい!(家入一真) |
|
「反日デモ」はメディアでどう報じられ、伝わったか(津田大介) |
|
AIと再生医療(高城剛) |
|
「相場下落」の冬支度、なのか(やまもといちろう) |
|
フェイクと本物の自然を足早に行き来する(高城剛) |











