若林理砂
@asilliza

若林理砂メールマガジン「鍼灸師が教える一人でできる養生法」より

体調を崩さないクーラーの使い方–鍼灸師が教える暑い夏を乗り切る方法

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長く厳しい夏ですな。皆さんエアコン使ってますか。使わずに過ごせる地域の方は問題ないんですが、日中室内が30度を超える地域にお住まいの方。気温計置いて室温チェックしながらエアコン使うかどうか考えようね。うちの治療室は待合室30度以上になっているときにエアコンスイッチオン! です。ベッドサイドはだいたい28-29度程度に保っています。

本来はWGBTという指標を使って熱中症の危険度を測ります。

http://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_lp.php

湿度が高くなければ暑さがひどくてもまあまあ耐えられることがわかります。

そうはいっても気温31度以上は危険だと考えるのが妥当だったりします。その人の体力によりますが、温度が高い状態で室内で作業していても熱中症の危険はありますしね。

「暑さも寒さも自然に受け止めるのが体にいい!」ってことで過ごされている方もいらっしゃるかと思います。それはそれでいいかもしれないんですが、もともと体力がないタイプの方は、それでますます体力を奪われている可能性もあります。なんつーのかな……、そもそも少ないリソースを気候に耐えることに割いてしまうのはもったいないんじゃないかと思うんだけどどうなんだろう……やれること減るし。

現代の科学技術=エアコンを取り入れて養生を

私が提唱している養生は言ってみれば「ハイパー養生」で、現代の科学技術やその他利用できる文明の利器はすべて利用したうえで東洋医学の知恵を取り込んで、さらに自分が中道王道を歩んでビシバシやれることを増やして楽しくする……って方法なのね。だから無駄に耐えさせない。

そもそも東洋医学では、天の意思が順行なら自然は人間にやさしく、不順なら自然は人間に厳しいって考え方があるんだよね。季節がいつもと同じく普通にめぐっているならそれに合致して生きることが何よりの中道王道につながるけれど、天が乱れるならそれなりの対応をしなきゃならないってこと。大昔は天が乱れる=天候不順なら人はたくさん死んでたけど、今はいろんな技術で老人や子供、病人を守ることができます。

これはちょっと言っておいたほうがいいなあと思うことなんだけど、東洋医学はその当時の最新技術です。だから、途中で発達が止まったりしないで、たとえば中国でペニシリンの発見や麻酔薬と外科手術の発達、顕微鏡の発明がなされて医学全般が東洋医学がぶっちぎりで一番ってことになっていたら、「……なんでエアコン使わんの?」ってなってたと思う。あの当時の冷やしちゃいけないと今の冷やしちゃいけないはだいぶ違う。で、夏にエアコンや氷で冷やすことに関しての問題点とその解決策を、たぶん、東洋医学は決着させていないんだな。

私は利用できるものは利用し、問題点は問題点として受け止めて解決することが大切だと思っているので、エアコンも使う。そして冷やしすぎないようにすることで対応。エアコン使う場合、最高温度に設定してやると大体なんとかなります。29度とか30度に設定できるよね。こうすると外気との差が5~7度程度で何とかおさまる。風量は「自動」で。

オフィスが寒い人はバスタブで発汗

オフィスが寒い人。しっかり着込む。そして、冷たいものを食べないようにして対応です。オフィス寒いけど外に出たらアイスたべる……、とかないない。帰宅したらバスタブしっかり入って発汗させるのも大切です。要はバランスとるのだ。前回も書いたけど、冷房対策には布一枚持って出かけること。大きめのスカーフ一枚、 手ぬぐい、ストール、なんでもいい。ちょっと寒いなって思ったら首から肩にかけて巻くこと。

この間テレビで面白い実験やってたんだけど、夜しっかりバスタブ入ると深部体温下がるんだと。一度体温をガッと上げると体がそれを下げようと判断して深部体温が低下するんだと。この作用を利用し、夜の寝苦しさを改善させることができる……って話。これをみて、やっぱり夏でもバスタブって正しいんじゃないのよと確信を深めました。「暑いし汗かくからバスタブいやだから入らない」って選択がさらに暑さを助長させているってことになる。お風呂入ろうね。

夏の過ごし方、四気調神大論の夏の部分を貼りつけます。

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「夏三月、此謂蕃秀。天地気交、万物華実。夜臥早起、無厭於日。使志無怒、使 華英成秀、使気得泄、若所愛在外。此夏気之応、養長之道也。逆之則傷心、秋為 *瘧、奉收者少、冬至重病」

* http://kotobank.jp/word/%E7%97%8E%E7%98%A7

夏三月、此れを蕃秀と謂う。天地の気交わり、万物華さき実る。夜に臥して早く 起き、日を厭うことなかれ。志をして怒ることなく、華英をして成秀せしめ、気 をして泄を得せしめ、愛する所外にあるがごとし。此れ夏の気の応、養長の道な り。これに逆らうことすなわち心を傷り、秋に*瘧を為す、収に奉ずるもの少な く、冬に重病に至る。

要点を現代語訳するとー。

・夏の3ヶ月(梅雨明け後~9月頃)は、夜に寝て日の出頃に早起きすること。
・お日様を嫌がらないで、恋人に会いに行くように外に出ること。
・怒らず、花がパーッと開くように気を外へ発散させるように活発に過ごすこと。
・これに逆らうと秋になって*瘧(がいぎゃく)、発熱と悪寒を周期的に繰り返す病になる。冬になると更に悪化する。

+++++++++++++

夏は、とにかく積極的に、楽しく、活発に!ってことになっています。夏は陽気を養う時期。ここでしっかり養生しとくと、冬の寒さに耐えられる体になると考えられています。 早起きは陽気をたくさん取り入れる方法ですな。日中しっかり動くためには早く起きる、早く寝る。

早寝早起きって言いますが、これはホントは「早起き早寝」です。早く起きて、日中寝ないでしっかり活動、そしてバッタリ早く寝る。これで早起きリズムが確立します。

今、朝の日差しを浴びると冬の冷え性にも効く!

あまりの暑さに日中ばてる人、夜中暑くておきちゃう人、お昼の1時ごろに10~15分程度の昼寝を。これで夏バテが抑えられる人も多いです。長時間寝ちゃダメだよ。

お日様にあたること。強烈な日差しですが、それでもある程度日に当たっておくことが大切。なんかもう、あらゆる日差しを遮ろうとして忍者みたいになってる人が時々いるんだけども。

日中の一番ひどい日差しの時間帯を避けるのはいいんだけど、朝の日差しくらいは浴びてね。自律神経が整うし、冬に向けての冷え性対策としても結構大切だから。あと、うつっぽい人はホント自分のこと日に干して。お日様は偉大だから。特に夏の日差しはとっても上等な薬です。

お風呂入ろうって話。お湯の温度は40度あるやなしやでOK。汗がかければいいのだ。どうしても「暑いからヤダ」って人は、バケツに43度くらいのお湯を汲んで足突っ込んだままシャワー浴びること。汗かくまでね。汗かいたら、常温で扇風機程度利用しつつ、汗ふいて汗が引くのを待ってから衣服を付けること。一気に冷房で冷やしたりしないでね。せっかく整った自律神経がまたびっくりしちゃうから。

むくみにはペットボトル温灸を

つめたい飲み物の多飲でおなか壊してないでしょうか。温かいものを飲み続ける必然性はそんなないんだけど、オフィスが寒い場合は温かいお茶のほうがいいね。常温の麦茶とかもいい。

真夏でわかりにくくなっているけれど、温度差で風邪をひく場合もあります。舌を見て真っ赤でのどの痛みもあるなら「銀翹散」、白っぽくて肩こり感があるなら「葛根湯」や「桂枝湯」なんかの温める漢方の方剤です。ストールとともに葛根湯は持ち歩いてね。冷房でやられた場合はたいていアレで何とかなるから。

ああそうそう、夏のむくみね。ペットボトル温灸で対応可能です。失眠と湧泉、尺沢ね。暑いからペットボトル温灸めんどくせえって思うだろうなあ。結構効くからやってみて。

ペットボトル温灸特設サイト
http://onkyu.yakan-hiko.com/

 

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若林理砂
1976年生まれ。鍼灸師・アシル治療室院長。高校卒業後に、鍼灸免許を取得し、エステサロンの併設鍼灸院で、技術を磨く。早稲田大学第二文学部卒。2004年、アシル治療室開院。現在3ヵ月先まで予約が埋まるほどの人気を集めている。

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