家入一真
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【対談】木原直哉(ポーカープロ)×家入一真(起業家)前編

東大卒のポーカープロに聞く「場を支配する力」

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ポーカー好きの家入先生が、「ぜひ話してみたい」と今回対談を申し込んだのは、木原直哉さん。ポーカーの世界選手権で日本人初の優勝を果たした、プロのポーカー選手です。会社経営とポーカーは似ていると言われますが、いったいどういう共通点があるのでしょうか?

 

木原直哉プロフィール @key_poker
東京大学理学部地球惑星物理学科卒業。在学中には将棋部に所属しつつ、ボードゲーム「バックギャモン」のプレーヤーとしても活動。その後プロのポーカー選手となり、同年の世界ポーカー選手権大会で「ノー・リミット・ホールデム」に初参戦。653位という成績で入賞を果たす。そして、2012年の第42回世界ポーカー選手権大会 (2012 World Series of Poker) において行なわれたトーナメントナンバー34、「ポット・リミット・オマハ・シックス・ハンデッド」に参加し、日本人選手としては初めて世界選手権での優勝を果たした。著書に『運と実力の間』(飛鳥新社)、『勝つための確率思考』(中経出版)、『たった一度の人生は好きなことだけやればいい!』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ホームページ:木原直哉オフィシャルウウェブサイト

 

運がよい悪いを意識すると判断を誤る

家入:僕、ポーカーが好きなんです。

木原直哉さん(以下、木原):2011年でしたっけ、マカオの大会で入賞していましたよね?

家入:はい。なんだか恥ずかしいですけど(笑)。「マカオ ポーカーカップチャンピオンシップ」のサイドイベントで入賞しました。うれしかったですね。最後の方はずっと耐えて耐えて、なんとか5位までいった感じ。僕、あんまり趣味がないんですよ。海外行ってポーカーするくらいしか。

木原:行きましょう!

家入:行きたいんですよね。次はどちらに?

木原:来週から(8月18日〜)バルセロナで開催される大きい大会に行ってきます。
※「EPTバルセロナ」
http://www.europeanpokertour.com/tournaments/barcelona/

その後は、10月末から11月中旬にかけてマカオで開催される「アジア チャンピオンシップ オブ ポーカー(ACOP)」に。これも結構大きい大会で、世界中から有名なプレーヤーが集まる。

※ここで、木原さんのプレー内容の話になりましたが、専門用語が多く、経験者でないと理解できないため割愛させていただきます。(担当編集より)

家入:対戦相手に対して「コノヤロー」と思うことはないんですか?

木原:ないですね。逆なんですよ。一緒に戦った仲間みたいになるんです。

家入:戦友のような。

木原:意外かもしれないですけど。以前自分が大会でトップに入ったとき、2位の人とは全く面識がなかったけど、それから結構仲がいいですね。たぶん戦わなかったら仲よくならなかった。

家入:戦っている最中にコノヤローと思ったりは?

木原:コノヤローはないですけど、負かすことに精一杯ですね。プロ同士って面白くて、仲がよければよいほど、テーブル上で激しく戦ったり、相手を飛ばしてやろうとするんです。でも、飛ばされてもテーブルを離れたら、また仲よくなる。

家入:ゲームに関してディスカッションをすることはあるんですか? 「あの判断は間違っていたよ」とか。

木原:たまにしますね。間違っているという言葉は使わないけど、「実戦でこんなプレーがあったんだけど、お前だったらどうする?」とかいうのは、日本人同士でもよくあります。

家入:へー、面白い。ツイッターでもやりとりさせてもらいましたが、僕、宗教としてではなく、哲学としての仏教がすごい好きで。

木原:ブッタの考えですよね。仏教というより、もっと根本の。

家入:木原さんのご著書を読んでいて、すごく近いというか、つながるものを感じたんですよね。ポーカーって、もちろん実力もあるけど、運みたいなものにも左右されますよね。僕が言うのもあれですけど。

木原:どんなに強くても、運がないと絶対勝てないです。ただ、普通の人だったら100の運が必要なところでも、実力があれば80の運で勝てるかもしれない。結局は平均の50より運がないとダメ。でも80の運でいいのなら、可能性はそれなりに高くなってくるので、優勝できる可能性も上がります、みたいな。

家入:論理的に正しいプレーをしていても、カードが悪くて、思いっきり負けてしまうこともある。ご著書には、「その場その場の運というものがあって、それはわからないもの。だから考えてもしょうがない」と書かれている。むしろ、自分は今運がいいとかのってるとか、逆に自分は不運だとかいうのを持ち込むこと自体が、判断ミスになり得ると。

木原:今運がいいからといって、本来降りるべき賭けに参加するとか、今運が悪いからといって、本来参加するべき賭けを降りるとか、それって結局損なんですよね。一般には「今流れがきている」なんて言う人が多いけど、そんなものは1回1回独立したもので、考慮してはいけないんです。

でも、これは難しいんですけど、「ツイてる相手が攻めてきたら降る」という考えの人もいますよね。もし対戦相手がそういうタイプだったら、微妙に降りた方がいい手でも、ちょっと攻めてみる。すると、今度はそれが得になるかもしれない。

家入:それは心理戦の面で?

木原:そう、心理戦で。ただ、相手がそういう運を全く考慮しない人だったら、降りるべきところは降りる、参加するべきところは参加する。

家入:相手のタイプはどう判断すればいいんですか?

木原:結構わかりますよ。具体的にどこがって聞かれると困りますけど。

家入:雰囲気ってやつですか?

木原:はい。

 

オーラは周りが作り出すもの

家入:こっちが賭けると、みんな怖くてババババって降りちゃうことを、「場を支配する」って言いますよね。

木原:そう。ポーカー用語で、「テーブルを支配する」なんていいます。支配する状態になったら、結構かき集められますね。

家入:いわゆるオーラってそういうことなのかな、と思うんです。例えばビジネスにおいても、いざ商談を成立させなきゃいけないってときに、お互いの言い分がぶつかり合って、勝つ人がいるじゃないですか。その人は場を支配してしまっているので、みんなその人の言うことを飲まざるを得ない。そういうの、ポーカーでもあるんじゃないかな。

木原:自分が思うオーラは、敬意ですね。敬意って結構目に見えると思うんです。7〜8人いて、あるプレーヤーのことをほかのプレーヤーが全員「スゲーな」と思っていたら、それって場に伝わるんですよ。

家入:言葉にしないでも。

木原:ちょっとしたプレーの仕方とか、ベット(賭け)の仕方で、みんなが「この人強い」と認めていることが伝わるんです。それが結果的にオーラがあるように見えるんだと、自分は思っています。周りがその人のことをすごいと感じていなかったら、オーラなんて見えないと思うんですよ。

来月○○○○さん(※某大物芸能人)と対談をする予定なんですが、彼は芸能界でもトップクラスのオーラがある方じゃないですか。彼が喫茶店に入るとみんなが注目する。彼の動向を伺い、敬意を示す。その周りが作り出す状況が、オーラとなる。

でも、彼が例えばアメリカに行ってカジノでブラックジャックをしていても、周りにいる人は、彼を特にすごい人だと思わないと思うんですよね。

家入:そっか。ほかの国に行って、全然知らない人の中に入れば、ただのおじちゃんになる。オーラはもともとその人が持っているのではなくて、周りの人が作っている。

木原:僕はそう思ってます。確信があるわけではないですけど。

家入:ということは、周りの人にすごいと思わせることは重要。

木原:そうですね。この人はすごいと思われることで、基本的にはいろんなことがやりやすくなる。

家入:チャンピオンなった方が試合しやすかったりするの?

木原:あんまり変わらないですね。タイトルをとるよりも、ポーカースターズのプロになった方が、影響が大きい。
※チーム ポーカースターズ (ポーカー界のエリート集団)
https://www.pokerstars.com/team-pokerstars/naoya-kihara/

家入:なんか、ステッカーを貼るんですよね。

木原:ステッカーを貼ってプレーしたり、オンラインでやるときは、自分の名前のところにスターズのプロマークがついたり。どちらかと言うとそっちの方が影響力が大きいと思います。けど、それも、言うほどでもないというか・・・。

家入:プロになって、木原さんに挑んでこようとする人は?

木原:いますいます。プロになって最初の大会がマカオだったんですけど、結構いましたね。これがアメリカだと、有名なプレーヤーがごろごろいるので、そういうことはないんですよ。マカオはプロが少ない。

家入:だから目立ってしまう?

木原:そうですね。マカオでは、そこまで大きくないタイトルをとった人のことも、みんな知っている。ラスベガスだと、それなりに知られてはいますが、ほかと一緒という感じ。ダニエル(ダニエル・ネグラーノ)クラスになると別ですが、そうじゃなければ目立ちません。感覚が違います。
※ダニエル・ネグラーノ:世界的に有名なプロポーカープレイヤー

「自分がプロと戦う必要ないじゃん」といった感じでプレーが堅くなる人と、「プロなんて大したことない。やつけてやる」と挑んでくる人と、本当に分かれますね。

家入:どっちがやりづらい?

木原:やっぱり、挑まれる方がやりづらいですね。挑まれる方が分散が大きくなるんですけど、そのかわり序盤でガツンと取れる。まぁ取られることもありますが、「そういうものだ」ぐらいに思っています。

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家入一真
1978年生まれ。起業家/投資家/クリエイター。悪ふざけをしながら、リアル・ネットを問わず、カフェやWEBサービスや会社など、遊び場を作りまくっている。JASDAQ最年少上場社長。40社程の若手ITベンチャーにも投資している。解放集団Liverty代表、JASDAQ上場企業paperboy&co.創業者、カフェ運営企業partycompany Inc.代表取締役、ベンチャー投資企業partyfactory Inc.代表取締役、クラウドファンディングCAMPFIRE運営企業ハイパーインターネッツ代表取締役。個人名義でも多数のウェブサービスの立ち上げを行うクリエイターでもある。

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