※高城未来研究所【Future Report】Vol.370(2018年7月20日発行)より
今週は、台湾の花蓮にいます。
いまから数年前、僕が台湾の山岳民族に興味を持ったのは、ポリネシアのライアテア島でした。
ユネスコの世界遺産認定委員会に勝手に混じって訪れたライアテア島の文化は、どこか懐かしい不思議な感じを受け、以来、その文化の源流を探しはじめ、自分なりにあたらしい発見を続けていました。
ポリネシアのライアテア島が、ハワイのオリジナルであることは、まったく知られていません。
現在はライアテアと呼ばれていますが、もともとハヴァイ(HaVai)と呼ばれていたこの島からポリネシア文化は始まったと言われており、天文学に基づいた航海法を確立していたポリネシア人は、ハヴァイの「マラエ」と呼ばれる祭壇で儀式を受けたあと、四方へと散らばっていきました。
それが、イースター島、ニュージーランド、そしてハワイからなるポリネシアン・トライアングルを形成したのです。
つまり、ハヴァイから旅立ち、北上したポリネシア人が故郷にちなんで名付けた島が、現在米国になったハワイです。
では、太平洋を縦横無尽に動き回っていたライアテアからはじまった「海のノマド」は、いったい、どこから来たのでしょうか?
これは長い間論争を呼んでおりましたが、近年、DNA調査で明らかになった結果、台湾の山岳民族だったことが判明しました。
台湾の山岳民族は、5000年ほど前に、台湾からフィリピンやインドネシアに南下していき、その後、3500年ほど前には、海洋航海技術に長けた一部の人々が、ニューギニア北東にある沿岸部や一帯の島々に進出しました。
これが「ラピタ人」です。
「ラピタ人」は、太平洋各地に広がった世界初の航海民族で、ラピタ土器という独特の装飾土器を持つことで知られています。
もともと山岳民族だったことからタロイモなどを栽培する農耕民族でもあり、海洋活動に特化した文化を持っていました。
航海術を駆使してわずか500年ほどの間に、バヌアツ、ニューカレドニア、フィジー、トンガやサモアの島々に拡散し、ラピタ文化を広く展開していきました。
しかし、その文化は、およそ2000年前にこつぜんと姿を消してしまいます。
今週、花蓮から登る山あいの村では、小さな秘祭が行われています。
それを訪ね歩くと、僕が数年前に見たライアテアの祭りにそっくりで驚きます。
ではいったい、台湾の山岳民族は、どこから来て、どこの文化を担っているのでしょうか。
僕の旅路は、まだまだ続きそうです。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.370 2018年7月20日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


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