※高城未来研究所【Future Report】Vol.431(2019年9月20日発行)より

今週は、アムステルダムにいます。
毎年9月にアムステルダムのメッセ会場RAIで、国際放送機器展=IBC(International Broadcasting Convention)が開催されます。
IBCはヨーロッパ最大の放送機器展で、「世界でもっとも影響力があるメディアとエンターテイメント、テクノロジーの祭典」と名打つだけのことがあり、1700社の出展と期間中の来場者も6万人を超え、世界170カ国からの参加者が訪れ、賑わいを見せています。
「放送」といっても、いわゆる地上波は年々存在感を落とし、衛星からケーブルテレビ、そしてインターネットによる「配信」に注目が集まり、古くからある放送機器メーカーは、どこも苦戦を強いられています。
一方、このIBCにあわせるように、新興メーカーは新作動画カメラを発表しまして、レンズメーカーとして名高いSIGMAによる世界最小のフルサイズカメラ「FP」や、動画撮影に焦点をあてたパナソニックのS1Hなどの実機が展示されました。
さて、このように書きますと、なかなか盛り上がっているように思える「放送」「通信」業界ですが、もう二十年以上IBCに通っている僕が会場を歩く限り、完全に頭打ちのように見受けられます。
あたらしく登場したカメラも、どれもパッとしません。
この業界の停滞は、どこに問題があるのでしょうか?
第一に、十年前には1000万円の機材を導入しなければ出来なかった制作物が、わずか数十万円程度の機材で賄えるようになったテクノロジーの進化があります。
だからといって、デジタルテクノロジーを全面に掲げて成長を続けてきた企業も、思ったほどイノベーティブな製品を出せていません。
これは、「放送」「通信」業界に限った話ではありませんが、旧来型の企業は息絶え絶え、新興企業も勢いがなくなっているのを、最近如実に感じています。
第二に、欧州は相当景気が悪いことを実感します。
街を歩いている程度ではなかなかわかりませんが、今後の展望を考えれば、大型機材投資にどの企業も慎重になるのも理解できるところ。
IPベースのアップリンク装置などは、一台数千万円とカメラとは比べものにならない桁の金額が動きますゆえ、誰もが口にしませんが、各社担当者が欧州の未来を憂いているのは間違い無く、買い控えも致し方がないように思われます。
そんな中、品薄で入手困難なのが、レンズです。
今回もお目当のレンズの商談に出向きましたが、入手まで最低でも1年から2年待ちの状況で、オーダーが殺到していることから遅れに遅れているといいます。
さすがに、世界の「レンズ沼」に足を踏み入れてしまった人が急増しているとは思えませんが、確かに、レンズにイノベーションはまったく起きていない上に、古いレンズはむしろ値上がりしますので、投資の観点からも悪くありません。
企業は、カメラをあたらしくする必要性はなくても、レンズなら、償却を考えても購入に見合うどころか、品薄ゆえ儲かる可能性も高まります。
それゆえ、良いレンズメーカーは、オーダーを受けられないほどに活況なのです。
このような今年のIBCの現場からわかることは、デジタル化に乗り遅れた企業は淘汰され、また、中途半端な立ち位置のデジタル企業も淘汰され、生き残るのは、巨大IT企業とデジタル化されることがほとんどないアナログ企業だけのように思う今週です。
さて、アムステルダムは、すっかり秋模様。
これから来る欧州の冬は、想像以上に長くなるのかもしれません。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.431 2019年9月20日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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