高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

中国マネーが押し寄せる観光地の今

高城未来研究所【Future Report】Vol.475(2020年7月24日発行)より

今週も、那覇にいます。

ついに、GO TOキャンペーンがはじまり、那覇の観光目抜き通りである国際通りも久しぶりの賑わいを見せていますが、実は現在、多くの県内ホテルが、売りに出されています。

今年、国際通りに出来たばかりの巨大ホテルから、北部にある誰もが知る有名なブランドチェーンホテル等の大型案件、そして民泊を中心に営んでいた小規模施設やゲストハウスまで、多くの物件が内々に売却を進めています。

この内々に話を進めている理由は、他でもありません。大半が、中国企業の買収案件だからです。 

京都やニセコなど、日本を代表する観光地も同じ状況ですが、新型コロナウイルスの感染拡大で客足が途絶えたホテルや旅館を割安な価格で手に入れるため、日本の代理人を通じて、中国企業の購入が水面下でかなり進んでいます。

鳴り物入りで開業した「アマン京都」は、もとより香港のスタンダードチャータード銀行の開発物件のため、当初から宿泊客は中国系(銀行の上客)ばかりですが、周囲にある伝統的な旅館や不動産も次々と中国系企業の手に落ちています。

ニセコも同じような状況で、十年前に多かったオーストラリア人は、5年ほど前から激減し、その後、香港やシンガポール、そして中国本土の人と金が雪崩れ込み、規制が少ないことから、中国資本による建設ラッシュが起き、昨年の不動産価格だけみても140%アップと尋常ではありません。

また箱根は、昨年の台風の傷跡がまだ残り、そこに新型コロナ感染拡大の影響で客足が完全に遠のいていたところ、いち早くコロナ渦から脱した中国が、富士山まわりの物件を次々と購入。
代理で許認可とビザを取得する日本人ブローカーが大盛況です。

沖縄でも同じような状況が起きています。

現在、ホテルによっては、稼働率2-3%のところも多く、この夏に新型コロナウィルス感染拡大が収まって観光客が戻ってくるだろうと、ただ漠然と期待しいた宿泊施設は、融資も途絶え、場合によっては金融機関が売り先を探しはじめています。
地方銀行にとっては、大型ホテルの倒産は、死活問題になりかねません。
内々に、地銀が中国系ファンドに、日本人代理人を通じて話を持ちかけていることも少なくないのが実情です。

以前もお話しいたしましたが、尖閣問題より、経済的に沖縄を実行支配されるほうが、後々大きな問題となるのは間違いなく、円高こそが最高の国防に他なりませんが、そうすると株価が割高になってしまい暴落してしまうため、為政者の集票を考えれば、その政策はとれません。

今週驚くことに、突然内閣府が2012年12月から始まった景気回復局面が18年10月に終わり、景気後退に入ったと認定する方針だ、と発表しました。
つまり、増税と政権維持、そして東京オリンピックのため、「偽の好景気」を演出していた、と認めたことになります。
おそらく、次の政権に指摘される前に保身のため、連休直前に事実を発表したと思われます。

同じように、沖縄の好景気の象徴だったホテルにも、黄信号が点っています。
この数年、沖縄で飛ぶ鳥を落とす勢いで成長し、「Mr.Kinjo」ブランドをフランチャイズして、十年も経たずに70件も展開していた金城グループの運営保証していたホテルが、続々と売りに出されています。
土地から購入したフランチャイザーは、それなりに高い価格で買っていることから利回りが相当厳しく、また、もともと地主でホテルのために上物を建てて、サブリースにまわしていた物件も売りに出されており、なかにはホテル業をやめ、レジデンスとして販売や賃貸に業態替えしようとするところもあります。

また、このコロナ渦の真っ只中に(主に中国人の)ニーズに応えるようホテル・旅館などの宿泊施設の売買に特化したマッチングプラットフォームもオープン。
なかでも開業前の新築物件が多いのは、驚きです。

国際通り沿いに並ぶ土産品店や居酒屋などは、470軒中40店舗が閉店に追い込まれ、38店舗が休業中のシャッター通りと化しています。

どちらにしろ、大きな変化が訪れているのは間違いありませんが、これを単なる一時的なものとして捉えている人たちと、大きな変化の序章とみなし、好機として捉えている人たちに、二分化しているように見えてなりません。
少なくとも、いま、日本に投資しようと考える中国マネーは、キャピタルフライトの可能性も否めません。

国際通りに出店していた店も、実は東京資本や大阪資本の場所が多く、近年の沖縄観光バブルに乗って収益を上げ、この機を見ていち早く店舗を閉じ、気がつくと次は中国系資本に変わっていく。

いつの日か、再び賑やかな国際通りになる日は訪れるのでしょうが、おそらく大家は、まったく別の国の人ばかりになる本当の「国際通り」になるんだろうな、と思う今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.475 2020年7月24日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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